早期乳がんに対する乳房温存手術後の放射線療法には、全乳房照射が標準治療として用いられている。しかし、再発リスクが低い一部の患者では、放射線療法の回数を減らし、腫瘍があった部位のみに部分的に照射する「部分乳房照射」でも、全乳房照射と同程度の再発率に抑えられることが、米オハイオ州立大学などが実施した第3相のランダム化比較試験で明らかになった。研究結果の詳細は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019、5月31日~6月4日、米シカゴ)で発表された。研究グループの一人で、同大学包括的がんセンター乳房放射線腫瘍科のJulia White氏によると、過去30年にわたって乳房温存術後の放射線療法の主流は、3~6週間にわたり、ほぼ毎日、乳房全体に放射線を照射する方法だった。そのため、仕事や子育てで忙しい女性や治療施設から離れた地域に住んでいる女性にとって、通院が困難なケースも多かった。.その一方で、乳がんの早期発見が進み、放射線療法の技術が向上したことも背景に、White氏らは、早期乳がんであれば、短期間でもより高強度な放射線療法を行うことで、従来の全乳房照射と変わらない効果が得られるのではないかと考えたという。.今回の臨床試験では、全米の複数の医療施設で早期乳がんと診断され、乳房温存手術を受けた女性4,200人以上を対象に、術後に標準的な全乳房照射を行う群と、より高強度かつ短期間の部分乳房照射を行う群にランダムに割り付けた。部分乳房照射群では、腫瘍があった場所とその周辺を標的に、乳房全体の約30%に放射線を照射する放射線療法を1日2回、6時間以上の間隔を空けて行い、これを5日間続けた。.その結果、10年間の再発率は部分乳房照射群では4.6%、全乳房照射群では3.9%と、両群ともに5%未満で、生存率は約90%と全般的に良好な結果が得られた。全対象女性の再発率には、両群間で約1%のわずかな開きが認められたが、50歳以上かつホルモン感受性があり、リンパ節転移のない低リスクの女性では、短期間の部分乳房照射でも全乳房照射に匹敵する効果が認められた。このような女性の10年間の再発率は、部分乳房照射群では2.7%、全乳房照射群では2.3%であった。.White氏は「再発リスクが特に低い女性では、10年後の再発率は平均で2~3%だった。いずれの放射線療法でも97%が再発を経験しなかったことは、素晴らしい結果だ」と話す。同氏によれば、短期間の部分乳房照射でも、標準的な全乳房照射と同程度の効果が期待できる女性は年間2万5,000~3万人と推定されるという。.これらの結果を踏まえ、White氏は「再発リスクが低い女性には、短期間の部分照射による放射線療法が術後の治療選択肢の一つとして示されるべきだ」と結論づけている。一方で、この研究には関与していない米マウントサイナイ病院の放射線腫瘍医であるRichard Bakst氏は「部分乳房照射に全乳房照射と匹敵する効果があるという確信が今は持てない」とし、「今回の報告をきっかけに現在の治療が変わる可能性は低い。現時点では、短期間の部分乳房照射を広く導入すべきではない」との見方を示している。.なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2019年6月6日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/focused-radiation-could-lighten-treatment-burden-for-early-breast-cancer-747168.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
早期乳がんに対する乳房温存手術後の放射線療法には、全乳房照射が標準治療として用いられている。しかし、再発リスクが低い一部の患者では、放射線療法の回数を減らし、腫瘍があった部位のみに部分的に照射する「部分乳房照射」でも、全乳房照射と同程度の再発率に抑えられることが、米オハイオ州立大学などが実施した第3相のランダム化比較試験で明らかになった。研究結果の詳細は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019、5月31日~6月4日、米シカゴ)で発表された。研究グループの一人で、同大学包括的がんセンター乳房放射線腫瘍科のJulia White氏によると、過去30年にわたって乳房温存術後の放射線療法の主流は、3~6週間にわたり、ほぼ毎日、乳房全体に放射線を照射する方法だった。そのため、仕事や子育てで忙しい女性や治療施設から離れた地域に住んでいる女性にとって、通院が困難なケースも多かった。.その一方で、乳がんの早期発見が進み、放射線療法の技術が向上したことも背景に、White氏らは、早期乳がんであれば、短期間でもより高強度な放射線療法を行うことで、従来の全乳房照射と変わらない効果が得られるのではないかと考えたという。.今回の臨床試験では、全米の複数の医療施設で早期乳がんと診断され、乳房温存手術を受けた女性4,200人以上を対象に、術後に標準的な全乳房照射を行う群と、より高強度かつ短期間の部分乳房照射を行う群にランダムに割り付けた。部分乳房照射群では、腫瘍があった場所とその周辺を標的に、乳房全体の約30%に放射線を照射する放射線療法を1日2回、6時間以上の間隔を空けて行い、これを5日間続けた。.その結果、10年間の再発率は部分乳房照射群では4.6%、全乳房照射群では3.9%と、両群ともに5%未満で、生存率は約90%と全般的に良好な結果が得られた。全対象女性の再発率には、両群間で約1%のわずかな開きが認められたが、50歳以上かつホルモン感受性があり、リンパ節転移のない低リスクの女性では、短期間の部分乳房照射でも全乳房照射に匹敵する効果が認められた。このような女性の10年間の再発率は、部分乳房照射群では2.7%、全乳房照射群では2.3%であった。.White氏は「再発リスクが特に低い女性では、10年後の再発率は平均で2~3%だった。いずれの放射線療法でも97%が再発を経験しなかったことは、素晴らしい結果だ」と話す。同氏によれば、短期間の部分乳房照射でも、標準的な全乳房照射と同程度の効果が期待できる女性は年間2万5,000~3万人と推定されるという。.これらの結果を踏まえ、White氏は「再発リスクが低い女性には、短期間の部分照射による放射線療法が術後の治療選択肢の一つとして示されるべきだ」と結論づけている。一方で、この研究には関与していない米マウントサイナイ病院の放射線腫瘍医であるRichard Bakst氏は「部分乳房照射に全乳房照射と匹敵する効果があるという確信が今は持てない」とし、「今回の報告をきっかけに現在の治療が変わる可能性は低い。現時点では、短期間の部分乳房照射を広く導入すべきではない」との見方を示している。.なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2019年6月6日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/focused-radiation-could-lighten-treatment-burden-for-early-breast-cancer-747168.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.