肺がん治療で胸部に放射線治療を受けると、生存期間の延長効果が得られる一方で、心筋梗塞や心不全といった心疾患の発症リスクが高まる可能性があることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の胸部放射線腫瘍医、Raymond Mak氏らの研究で示された。研究の詳細は「American College of Cardiology」6月18日号に掲載された。Mak氏らは、胸部の放射線治療を受けた局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者748人を対象に、心臓に照射された放射線量が心筋梗塞や心不全などの心血管イベントと全死亡に及ぼす影響について後ろ向きに調べた。.中央値で20.4カ月追跡した結果、対象患者の約10%(77人)が心血管イベントを発症し、533人が死亡した。また、因果関係は明らかではないものの、心臓に照射された放射線量が高いほど心疾患リスクが有意に増加することも分かった。このようなリスクの増加は、特に放射線治療を受ける前に心疾患がなかった患者で顕著であったという。.Mak氏は「胸部に放射線治療を受けた局所進行NSCLC患者の10人に1人が、後に心筋梗塞などの重大な心血管イベントを起こしたという今回の結果は、憂慮すべきものだ。また、このようなイベントは、これまで考えられていたよりも早い時期に、より高頻度に起こっているようだ」と説明する。さらに、治療によって患者の生存期間が延びるほど、心臓にリスクを抱えた患者も増えるとみられ、「腫瘍内科医はこのような点に配慮しながら、心臓専門医と協力して診療にあたる必要がある」と同氏は付け加えている。.この研究には関与していない米スタテン・アイランド大学病院呼吸器外科のAdam Lackey氏も、「肺がんの放射線治療では、悪性腫瘍に限局して放射線を照射するが、心臓に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。一方で、同氏は「肺がんの最大のリスク因子は"喫煙"であることに変わりはなく、喫煙は心疾患のリスク因子でもある。そのため、肺がん患者の多くは既に心疾患の診断を受けているか、心疾患リスクが高い場合が多い」と指摘している。.放射線治療後の心疾患リスクを低減するためには、「照射する放射線量を可能な限り最小限に抑えることが最善策だ」とMak氏らは述べている。しかし、実際には、心臓への放射線量を抑えることが難しいケースも多い。そのため、同氏らのチームは心臓専門医と協力して、胸部への放射線治療による心臓への悪影響を軽減する方法について研究を進めているという。.一方、専門家の一人で米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は、肺がんの放射線治療は「両刃の剣」となる可能性に同意し、「心臓が損傷を受けるメカニズムは明らかになっていないが、胸部の放射線治療が心臓に悪影響を及ぼす可能性があることは明白だ」と指摘。その上で、同氏は「これまで肺がんの放射線治療では、どのような種類の放射線をどの程度まで照射できるかがポイントとされてきたが、今後は放射線治療が患者に及ぼす長期的な影響について認識しておくことが重要になるだろう」とコメントしている。(HealthDay News 2019年6月13日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/radiation-news-571/double-edged-sword-lung-cancer-radiation-rx-may-raise-heart-attack-risk-747337.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
肺がん治療で胸部に放射線治療を受けると、生存期間の延長効果が得られる一方で、心筋梗塞や心不全といった心疾患の発症リスクが高まる可能性があることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の胸部放射線腫瘍医、Raymond Mak氏らの研究で示された。研究の詳細は「American College of Cardiology」6月18日号に掲載された。Mak氏らは、胸部の放射線治療を受けた局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者748人を対象に、心臓に照射された放射線量が心筋梗塞や心不全などの心血管イベントと全死亡に及ぼす影響について後ろ向きに調べた。.中央値で20.4カ月追跡した結果、対象患者の約10%(77人)が心血管イベントを発症し、533人が死亡した。また、因果関係は明らかではないものの、心臓に照射された放射線量が高いほど心疾患リスクが有意に増加することも分かった。このようなリスクの増加は、特に放射線治療を受ける前に心疾患がなかった患者で顕著であったという。.Mak氏は「胸部に放射線治療を受けた局所進行NSCLC患者の10人に1人が、後に心筋梗塞などの重大な心血管イベントを起こしたという今回の結果は、憂慮すべきものだ。また、このようなイベントは、これまで考えられていたよりも早い時期に、より高頻度に起こっているようだ」と説明する。さらに、治療によって患者の生存期間が延びるほど、心臓にリスクを抱えた患者も増えるとみられ、「腫瘍内科医はこのような点に配慮しながら、心臓専門医と協力して診療にあたる必要がある」と同氏は付け加えている。.この研究には関与していない米スタテン・アイランド大学病院呼吸器外科のAdam Lackey氏も、「肺がんの放射線治療では、悪性腫瘍に限局して放射線を照射するが、心臓に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。一方で、同氏は「肺がんの最大のリスク因子は"喫煙"であることに変わりはなく、喫煙は心疾患のリスク因子でもある。そのため、肺がん患者の多くは既に心疾患の診断を受けているか、心疾患リスクが高い場合が多い」と指摘している。.放射線治療後の心疾患リスクを低減するためには、「照射する放射線量を可能な限り最小限に抑えることが最善策だ」とMak氏らは述べている。しかし、実際には、心臓への放射線量を抑えることが難しいケースも多い。そのため、同氏らのチームは心臓専門医と協力して、胸部への放射線治療による心臓への悪影響を軽減する方法について研究を進めているという。.一方、専門家の一人で米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏は、肺がんの放射線治療は「両刃の剣」となる可能性に同意し、「心臓が損傷を受けるメカニズムは明らかになっていないが、胸部の放射線治療が心臓に悪影響を及ぼす可能性があることは明白だ」と指摘。その上で、同氏は「これまで肺がんの放射線治療では、どのような種類の放射線をどの程度まで照射できるかがポイントとされてきたが、今後は放射線治療が患者に及ぼす長期的な影響について認識しておくことが重要になるだろう」とコメントしている。(HealthDay News 2019年6月13日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/radiation-news-571/double-edged-sword-lung-cancer-radiation-rx-may-raise-heart-attack-risk-747337.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.