新しい型のA群溶血性レンサ球菌(A群レンサ球菌)が、2014年以来、英国で流行している猩紅熱の原因菌である可能性が報告された。研究を行った英インペリアル・カレッジ・ロンドンのShiranee Sriskandan氏は、「英国では、新型のA群レンサ球菌が、以前からみられたタイプのA群レンサ球菌に代わって流行するようになったとみられる」と話している。この新型A群レンサ球菌は、以前のA群レンサ球菌に比べ毒性が強くなっているという。研究の詳細は、「Lancet Infectious Diseases」9月10日オンライン版に発表された。イングランドでは、猩紅熱の感染者数が2014年の約1万5,000人から2016年には約1万9,000人に増加し、1960年代以降で最大の感染規模となった。猩紅熱は、咽頭炎や細菌が作る毒素による発疹を主症状とする感染症で、小児によく生じ、傾向として3~5月に流行のピークを迎える。ペニシリンなどの抗菌薬で治療が可能だが、治療しないと全身に感染が広がり、死に至る危険性もある。一方、猩紅熱が大流行した2016年には、同じA群レンサ球菌を原因菌とする侵襲性感染症の患者数も、過去5年と比べ1.5倍に増加したという。.Sriskandan氏らは今回の研究で、猩紅熱の原因菌となっているA群レンサ球菌の"emm遺伝子"の変化と、2014~2016年の地域(ロンドン北西部)および全国(イングランド、ウェールズ)のデータを用いて猩紅熱およびA群レンサ球菌感染症の届出を分析した。.その結果、2014年のロンドンにおける猩紅熱の感染者数の増加にはA群レンサ球菌のemm3型とemm4型が関連していることが分かった。一方、2015年および2016年の春にみられた咽頭感染例にはemm1型が関連していた。emm1型の感染例の割合は、2014年にはわずか5%だったが、2015年には19%、2016年には33%まで増加していた。また、イングランドおよびウェールズにおける侵襲性のA群レンサ球菌感染症においても、emm1型の割合は2015年に31%だったのに対し、2016年には42%に増加しており、この型が優勢になりつつあることも確認された。.さらに、emm1型の遺伝子解析からは、2015年および2016年に分離された菌株で27の遺伝子変異が同定された。これらは、猩紅熱などの感染症に罹患した患者にさまざまな症状をもたらす発赤毒素の産生量を増加させる変異とみられた。.Sriskandan氏によると、この変異が生じたemm1型のA群レンサ球菌(M1UK型と名付けられた)は、他のemm1型のA群レンサ球菌と比べて9倍もの毒素を産生していた。さらに、イングランドとウェールズで分離されたemm1型の菌株の遺伝子解析から、2016年には全体の84%をM1UK型が占めていたことも判明。世界各国で分離されたemm1型の菌株の遺伝子解析データとの比較からは、M1UK型は英国に限局してみられるが、デンマークや米国でもわずかに検出されていた。.Sriskandan氏は「喉の感染症や猩紅熱を引き起こすA群レンサ球菌は、まれではあるが侵襲性の高い感染症を引き起こす原因菌でもある。したがって、A群レンサ球菌による喉の感染症や猩紅熱が増えれば、侵襲性感染症も増える可能性がある」と指摘。ただし、「A群レンサ球菌に起因した全ての感染症を予防するためのワクチン開発には長い年月を要するだろう」との予測を示している。.なお、この新型のA群レンサ球菌には現在広く使用されている抗菌薬が効果を示すことから、薬剤への耐性獲得が感染拡大の要因ではないとみられている。(HealthDay News 2019年9月10日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/strep-infections-news-639/new-strain-of-strep-causing-cases-of-scarlet-fever-750152.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
新しい型のA群溶血性レンサ球菌(A群レンサ球菌)が、2014年以来、英国で流行している猩紅熱の原因菌である可能性が報告された。研究を行った英インペリアル・カレッジ・ロンドンのShiranee Sriskandan氏は、「英国では、新型のA群レンサ球菌が、以前からみられたタイプのA群レンサ球菌に代わって流行するようになったとみられる」と話している。この新型A群レンサ球菌は、以前のA群レンサ球菌に比べ毒性が強くなっているという。研究の詳細は、「Lancet Infectious Diseases」9月10日オンライン版に発表された。イングランドでは、猩紅熱の感染者数が2014年の約1万5,000人から2016年には約1万9,000人に増加し、1960年代以降で最大の感染規模となった。猩紅熱は、咽頭炎や細菌が作る毒素による発疹を主症状とする感染症で、小児によく生じ、傾向として3~5月に流行のピークを迎える。ペニシリンなどの抗菌薬で治療が可能だが、治療しないと全身に感染が広がり、死に至る危険性もある。一方、猩紅熱が大流行した2016年には、同じA群レンサ球菌を原因菌とする侵襲性感染症の患者数も、過去5年と比べ1.5倍に増加したという。.Sriskandan氏らは今回の研究で、猩紅熱の原因菌となっているA群レンサ球菌の"emm遺伝子"の変化と、2014~2016年の地域(ロンドン北西部)および全国(イングランド、ウェールズ)のデータを用いて猩紅熱およびA群レンサ球菌感染症の届出を分析した。.その結果、2014年のロンドンにおける猩紅熱の感染者数の増加にはA群レンサ球菌のemm3型とemm4型が関連していることが分かった。一方、2015年および2016年の春にみられた咽頭感染例にはemm1型が関連していた。emm1型の感染例の割合は、2014年にはわずか5%だったが、2015年には19%、2016年には33%まで増加していた。また、イングランドおよびウェールズにおける侵襲性のA群レンサ球菌感染症においても、emm1型の割合は2015年に31%だったのに対し、2016年には42%に増加しており、この型が優勢になりつつあることも確認された。.さらに、emm1型の遺伝子解析からは、2015年および2016年に分離された菌株で27の遺伝子変異が同定された。これらは、猩紅熱などの感染症に罹患した患者にさまざまな症状をもたらす発赤毒素の産生量を増加させる変異とみられた。.Sriskandan氏によると、この変異が生じたemm1型のA群レンサ球菌(M1UK型と名付けられた)は、他のemm1型のA群レンサ球菌と比べて9倍もの毒素を産生していた。さらに、イングランドとウェールズで分離されたemm1型の菌株の遺伝子解析から、2016年には全体の84%をM1UK型が占めていたことも判明。世界各国で分離されたemm1型の菌株の遺伝子解析データとの比較からは、M1UK型は英国に限局してみられるが、デンマークや米国でもわずかに検出されていた。.Sriskandan氏は「喉の感染症や猩紅熱を引き起こすA群レンサ球菌は、まれではあるが侵襲性の高い感染症を引き起こす原因菌でもある。したがって、A群レンサ球菌による喉の感染症や猩紅熱が増えれば、侵襲性感染症も増える可能性がある」と指摘。ただし、「A群レンサ球菌に起因した全ての感染症を予防するためのワクチン開発には長い年月を要するだろう」との予測を示している。.なお、この新型のA群レンサ球菌には現在広く使用されている抗菌薬が効果を示すことから、薬剤への耐性獲得が感染拡大の要因ではないとみられている。(HealthDay News 2019年9月10日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/strep-infections-news-639/new-strain-of-strep-causing-cases-of-scarlet-fever-750152.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.