アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)は米国で最もよく使用されている降圧薬の一種で、他の種類の降圧薬と同等の効果があるとされている。しかし、ACE阻害薬は他の降圧薬と比べて効果が弱く副作用も多いとする研究結果が、約500万人を対象に米コロンビア大学医学大学院のGeorge Hripcsak氏らが実施した研究で示された。研究の詳細は「The Lancet」10月24日号に発表された。米国でよく使用されているACE阻害薬は、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、fosinopril(フォシノプリル、日本国内未承認)、リシノプリルなど。米国心臓病学会(ACC)や米国心臓協会(AHA)の高血圧ガイドラインでは、降圧療法を始める際は、サイアザイド系利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ジヒドロピリジン系カルシウム(Ca)拮抗薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬のいずれかの降圧薬を使用することが推奨されている。.Hripcsak氏らは今回、これらの降圧薬の処方頻度を明らかにするため、ドイツ、日本、韓国、米国の4カ国における約500万人の患者の保険請求データおよび電子カルテの解析を行った。その結果、全例が高血圧に対して一種類の薬剤で治療を開始しており、そのうちの約半数(48%)にACE阻害薬が処方されていたことが分かった。一方、治療開始時にサイアザイド系利尿薬が処方された患者の割合は17%にとどまっていた。.しかし、研究ではACE阻害薬が常に最善の選択肢とはならない可能性が示唆された。解析の結果、最初にACE阻害薬を処方された患者と比べると、サイアザイド系利尿薬を処方された患者では、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のリスクが15%低く、19項目の副作用の発生率も低かった。また、最初にACE阻害薬を処方された患者にサイアザイド系利尿薬が処方されていれば、約3,100件もの主要な心血管イベントを予防できたことも推算された。さらに、第一選択薬として位置付けられている降圧薬のうち、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は他の4種類の薬剤と比べて有効性が低いことも確認された。.Hripcsak氏は、現状では降圧療法を開始するにあたり、どの降圧薬を用いるべきかを判断するのに役立つ研究データが少ないことを指摘。また、今回の研究には複数のランダム化比較試験(RCT)に参加した合計3万1,000人のデータが含まれていたが、その中で高血圧治療を開始したばかりの患者はいなかったとし、「RCTは特定の条件を満たした患者における特定の薬剤の有効性や安全性を示すためのものだ。実臨床で遭遇する多様な患者群で複数の種類の薬剤を比較したい場合、RCTは適さない」と説明している。その上で、「今回用いた研究手法により、臨床試験では明確にならない部分を補うことができることが分かった。得られた知見は、臨床上の意思決定の一助となるだろう」と話している。.今回の報告を受けて、この研究には関与していない循環器医のSatjit Bhusri氏は、今回の研究の統計学的な価値を認めた上で、降圧薬の選択は心疾患の有無や心疾患リスクの高さなど患者の状態に応じて判断すべきだと強調。ただし、心疾患リスクのない患者の第一選択薬はサイアザイド系利尿薬にするべきとの見解を示している。.一方、別の循環器医Benjamin Hirsh氏は、「ACE阻害薬と比べてサイアザイド系利尿薬で心血管イベントのリスクが15%低下したとする結果が示されているが、ACE阻害薬は心血管リスクが高い患者に処方されることが多い。そのため、ACE阻害薬を処方される患者は概して心疾患を発症するリスクが高いといえる」として、この結果がバイアスの影響を受けている可能性を指摘している。(HealthDay News 2019年10月25日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/high-blood-pressure-health-news-358/most-widely-prescribed-blood-pressure-med-might-not-be-best-option-study-751558.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)は米国で最もよく使用されている降圧薬の一種で、他の種類の降圧薬と同等の効果があるとされている。しかし、ACE阻害薬は他の降圧薬と比べて効果が弱く副作用も多いとする研究結果が、約500万人を対象に米コロンビア大学医学大学院のGeorge Hripcsak氏らが実施した研究で示された。研究の詳細は「The Lancet」10月24日号に発表された。米国でよく使用されているACE阻害薬は、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、fosinopril(フォシノプリル、日本国内未承認)、リシノプリルなど。米国心臓病学会(ACC)や米国心臓協会(AHA)の高血圧ガイドラインでは、降圧療法を始める際は、サイアザイド系利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ジヒドロピリジン系カルシウム(Ca)拮抗薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬のいずれかの降圧薬を使用することが推奨されている。.Hripcsak氏らは今回、これらの降圧薬の処方頻度を明らかにするため、ドイツ、日本、韓国、米国の4カ国における約500万人の患者の保険請求データおよび電子カルテの解析を行った。その結果、全例が高血圧に対して一種類の薬剤で治療を開始しており、そのうちの約半数(48%)にACE阻害薬が処方されていたことが分かった。一方、治療開始時にサイアザイド系利尿薬が処方された患者の割合は17%にとどまっていた。.しかし、研究ではACE阻害薬が常に最善の選択肢とはならない可能性が示唆された。解析の結果、最初にACE阻害薬を処方された患者と比べると、サイアザイド系利尿薬を処方された患者では、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のリスクが15%低く、19項目の副作用の発生率も低かった。また、最初にACE阻害薬を処方された患者にサイアザイド系利尿薬が処方されていれば、約3,100件もの主要な心血管イベントを予防できたことも推算された。さらに、第一選択薬として位置付けられている降圧薬のうち、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は他の4種類の薬剤と比べて有効性が低いことも確認された。.Hripcsak氏は、現状では降圧療法を開始するにあたり、どの降圧薬を用いるべきかを判断するのに役立つ研究データが少ないことを指摘。また、今回の研究には複数のランダム化比較試験(RCT)に参加した合計3万1,000人のデータが含まれていたが、その中で高血圧治療を開始したばかりの患者はいなかったとし、「RCTは特定の条件を満たした患者における特定の薬剤の有効性や安全性を示すためのものだ。実臨床で遭遇する多様な患者群で複数の種類の薬剤を比較したい場合、RCTは適さない」と説明している。その上で、「今回用いた研究手法により、臨床試験では明確にならない部分を補うことができることが分かった。得られた知見は、臨床上の意思決定の一助となるだろう」と話している。.今回の報告を受けて、この研究には関与していない循環器医のSatjit Bhusri氏は、今回の研究の統計学的な価値を認めた上で、降圧薬の選択は心疾患の有無や心疾患リスクの高さなど患者の状態に応じて判断すべきだと強調。ただし、心疾患リスクのない患者の第一選択薬はサイアザイド系利尿薬にするべきとの見解を示している。.一方、別の循環器医Benjamin Hirsh氏は、「ACE阻害薬と比べてサイアザイド系利尿薬で心血管イベントのリスクが15%低下したとする結果が示されているが、ACE阻害薬は心血管リスクが高い患者に処方されることが多い。そのため、ACE阻害薬を処方される患者は概して心疾患を発症するリスクが高いといえる」として、この結果がバイアスの影響を受けている可能性を指摘している。(HealthDay News 2019年10月25日).https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/high-blood-pressure-health-news-358/most-widely-prescribed-blood-pressure-med-might-not-be-best-option-study-751558.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.