うつ病患者の症状軽減にヨガが持続的な効果を示すことをあらためて支持する研究結果が報告された。ヨガが抗うつ薬や抗不安薬と同様に神経伝達物質のγ-アミノ酪酸(GABA)量を増加させることを示した過去の研究結果をもとに、米ボストン大学医学部の精神科医であるChris Streeter氏らが実施した研究により示された結果で、詳細は「Journal of Psychiatric Practice」11月号に発表された。この研究は、30人の成人うつ病患者を対象に12週間にわたって実施された。対象者は、2人を除いた全員が抗うつ薬を使用していた。Streeter氏らは、対象者の半数を90分のヨガのクラスを週に3回受ける+30分のヨガの「宿題」を週に4回自宅で行う「高用量」ヨガ群に、残る半数を90分のヨガのクラスを週に2回受ける+30分のヨガの宿題を週に3回自宅で行う「低用量」ヨガ群に割り付けた。研究期間中にヨガを行った時間の合計は、高用量ヨガ群で123時間、低用量ヨガ群で87時間だった。なお、Streeter氏らによると、今回の研究では適切なヨガの「用量」(頻度や時間)について調べることが目的であったため、ヨガを行わない対照群は設定しなかったという。.その結果、「高用量」ヨガ群と「低用量」ヨガ群の両群において、以前よりも気持ちが前向きになって落ち着き、身体的な疲労感や抑うつ、不安が軽減したなどの症状の改善が見られた。また、これらの効果はヨガや呼吸エクササイズを行った時間が長くなるほど高まることも示された。ただし、両群の間に認められた差は統計学的に有意ではなかった。.この点についてStreeter氏らは、研究の参加者が少なかったためではないかとの見方を示し、より大規模な研究を実施して今回の結果を検証する必要があると話している。また、今回の研究では因果関係が証明されたわけではないことにも留意する必要がある。.そのほか、ヨガによる効果は4日間持続したが、8日後には効果は認められなかった。このことから、「うつ病の症状を抑えるためには定期的にヨガをする必要があると考えられる」とStreeter氏は話す。また、「ヨガによってうつ病の症状が改善したら、2週間に1回のペースでヨガを取り入れるのが良いかもしれない」としている。.なお、今回の研究では、アイアンガー・ヨガによるうつ病症状への影響が検討された。アイアンガー・ヨガは、さまざまなポーズを正しい姿勢で比較的長い時間保つことや、呼吸をコントロールすることを重視したヨガの一種だ。しかし、Streeter氏は「他の種類のヨガでも似たような結果が得られるだろう」と話している。.これまでの研究でも運動がうつ病患者の症状軽減に有効であることが示されていたが、Streeter氏は「運動の中でも特にヨガはうつ病患者に良い影響を与えるのではないか」との見方を示している。また、米グリーン精神科センターの精神科医でヨガのインストラクターでもあるGregory Brown氏も、「ヨガには特有の心の要素があり、その点が他の運動とは異なる」と説明している。Brown氏の施設では、うつ病や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対し、従来の治療に加えて「サプリメント」としてヨガを取り入れているという。.Brown氏はStreeter氏らの報告を受けて「懐疑的な人たちは、研究の限界に注目しがちだ。しかし、私はそれよりも、どうすればこの種の研究を広げていけるのかに興味がある」とコメント。その上で、「治療によるうつ病症状の軽減効果をさらに高めたいと望む患者や、薬物治療を避けたいと考えている患者にとって、ヨガは魅力的な選択肢になる可能性がある」と話し、期待を寄せている。(HealthDay News 2019年11月21日).https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/depression-news-176/can-you-beat-the-blues-with-downward-dog-752369.html.Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.