自閉症スペクトラム障害(ASD)に100個以上の遺伝子が関与している可能性が、米シーバー自閉症センターのJoseph Buxbaum氏らが実施したASDに関する過去最大規模の遺伝学的研究から明らかになった。ASDに関与する遺伝子が明らかになれば、原因の解明や重度の障害を抱える小児に対する新たな治療薬の開発につながる可能性があるという。この研究の詳細は「Cell」1月23日オンライン版に掲載された。ASDは社会的スキル、コミュニケーション、行動のコントロールなどに影響を及ぼす脳の障害で、米疾病対策センター(CDC)によると、米国では59人に1人の小児がASDであると推定されている。ASDの病態は複雑な上に個人差が大きく、社会性やコミュニケーション能力に軽度の障害があるだけの小児がいる一方で、ほとんどしゃべらず、反復的・常同的な行動を止められない小児もいる。また、知的障害がある小児もいる一方で、IQは平均レベルあるいは平均以上の小児もいる。.これまで、ASDは遺伝的な要因と環境的な要因が重なって発症するものであり、特に遺伝的要因の影響力が強いと考えられてきた。実際、最近報告された約200万人を対象としたある研究でも、ASDリスクの80%を遺伝子で説明できることが示されている。ただし、専門家らによれば、ASDの発症に関与している遺伝子は患者ごとに異なるという。.ASDに関連する遺伝子については、過去の研究で65個が同定されていた。しかし、Buxbaum氏らは今回、それを大きく上回る数の遺伝子を同定することができた。それを可能にしたのは、研究の規模だ。今回の研究では、世界50施設以上の研究者から成る国際チームが、1万1,986人のASD患者を含む3万5,584人を対象に、新しい技術を用いた遺伝子解析を行った。その結果、102個のASD関連遺伝子を同定することができたのだ。.Buxbaum氏によれば、これら102個の遺伝子のうち49個は、知的障害や発達遅滞にも関連するものであった。しかし、それ以外はASDのみに関連するものであり、ASDの特徴的な症状である社会性の障害に関係しているものとみられた。.同定された遺伝子が、それぞれどのような役割を果たしているのかについては、今後さらなる研究で詳細に検討する必要がある。ただ、Buxbaum氏らは今回の研究で、ASDリスクに関連した遺伝子の多くが脳の発達早期から活性化することや、他の遺伝子の活性の制御や脳細胞間の情報伝達にも関与していることを突き止めたという。.また、これらの遺伝子は興奮性ニューロン(脳神経細胞)と抑制性ニューロンの双方に影響を与えることも判明した。このことからBuxbaum氏は、「自閉症に関わっているのは主要な1種類の脳細胞だけではなく、脳の発達やニューロンの機能における多くの異常により自閉症が生じている可能性がある」と示唆している。.Buxbaum氏らの研究報告を受けて、非営利団体「オーティズム・スピークス(Autism Speaks)」のDean Hartley氏は「これまでに明らかにされていた自閉症の生物学的経路が改めて確認されただけでなく、新たにASDに関与している可能性が高い生物学的プロセスが特定された」とした上で、「これらの経路は新たな治療標的を見つけ出し、治療の個別化を進める上でも重要なものとなってくるだろう」と話している。(HealthDay News 2020年1月23日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/autism-news-51/largest-ever-study-ties-over-100-genes-to-autism-754190.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
自閉症スペクトラム障害(ASD)に100個以上の遺伝子が関与している可能性が、米シーバー自閉症センターのJoseph Buxbaum氏らが実施したASDに関する過去最大規模の遺伝学的研究から明らかになった。ASDに関与する遺伝子が明らかになれば、原因の解明や重度の障害を抱える小児に対する新たな治療薬の開発につながる可能性があるという。この研究の詳細は「Cell」1月23日オンライン版に掲載された。ASDは社会的スキル、コミュニケーション、行動のコントロールなどに影響を及ぼす脳の障害で、米疾病対策センター(CDC)によると、米国では59人に1人の小児がASDであると推定されている。ASDの病態は複雑な上に個人差が大きく、社会性やコミュニケーション能力に軽度の障害があるだけの小児がいる一方で、ほとんどしゃべらず、反復的・常同的な行動を止められない小児もいる。また、知的障害がある小児もいる一方で、IQは平均レベルあるいは平均以上の小児もいる。.これまで、ASDは遺伝的な要因と環境的な要因が重なって発症するものであり、特に遺伝的要因の影響力が強いと考えられてきた。実際、最近報告された約200万人を対象としたある研究でも、ASDリスクの80%を遺伝子で説明できることが示されている。ただし、専門家らによれば、ASDの発症に関与している遺伝子は患者ごとに異なるという。.ASDに関連する遺伝子については、過去の研究で65個が同定されていた。しかし、Buxbaum氏らは今回、それを大きく上回る数の遺伝子を同定することができた。それを可能にしたのは、研究の規模だ。今回の研究では、世界50施設以上の研究者から成る国際チームが、1万1,986人のASD患者を含む3万5,584人を対象に、新しい技術を用いた遺伝子解析を行った。その結果、102個のASD関連遺伝子を同定することができたのだ。.Buxbaum氏によれば、これら102個の遺伝子のうち49個は、知的障害や発達遅滞にも関連するものであった。しかし、それ以外はASDのみに関連するものであり、ASDの特徴的な症状である社会性の障害に関係しているものとみられた。.同定された遺伝子が、それぞれどのような役割を果たしているのかについては、今後さらなる研究で詳細に検討する必要がある。ただ、Buxbaum氏らは今回の研究で、ASDリスクに関連した遺伝子の多くが脳の発達早期から活性化することや、他の遺伝子の活性の制御や脳細胞間の情報伝達にも関与していることを突き止めたという。.また、これらの遺伝子は興奮性ニューロン(脳神経細胞)と抑制性ニューロンの双方に影響を与えることも判明した。このことからBuxbaum氏は、「自閉症に関わっているのは主要な1種類の脳細胞だけではなく、脳の発達やニューロンの機能における多くの異常により自閉症が生じている可能性がある」と示唆している。.Buxbaum氏らの研究報告を受けて、非営利団体「オーティズム・スピークス(Autism Speaks)」のDean Hartley氏は「これまでに明らかにされていた自閉症の生物学的経路が改めて確認されただけでなく、新たにASDに関与している可能性が高い生物学的プロセスが特定された」とした上で、「これらの経路は新たな治療標的を見つけ出し、治療の個別化を進める上でも重要なものとなってくるだろう」と話している。(HealthDay News 2020年1月23日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/autism-news-51/largest-ever-study-ties-over-100-genes-to-autism-754190.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.