コレステロール低下薬のスタチン系薬と降圧薬であるACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を併用すると、心臓に良い影響を与えるだけでなく、認知症予防にも有用な可能性があることが、米南カリフォルニア大学のJulie Zissimopoulos氏らの研究から明らかになった。研究結果の詳細は「PLOS One」3月4日オンライン版に掲載された。今回の研究は、2007~2014年の米国のメディケア受給者69万4,672人を対象に後ろ向きに分析したもの。過去2年間に降圧薬とスタチン系薬の両方を使用した67歳以上の患者を対象とし、認知症の診断歴やアルツハイマー病関連の治療薬の使用歴がある人は除外した。.その結果、スタチン系薬のプラバスタチンまたはロスバスタチンと、降圧薬のACE阻害薬またはARBを併用すると、他の組み合わせと比べて認知症リスクが低くなることが分かった〔オッズ比は、ACE阻害薬+プラバスタチンが0.942(P=0.011)、ACE阻害薬+ロスバスタチンが0.841(P<0.001)、ARB+プラバスタチンが0.794(P<0.001)、ARB+ロスバスタチンが0.818(P<0.001)〕。特に、ACE阻害薬よりもARBとの組み合わせの方がベネフィットは大きく、女性よりも男性の方が有益であった。.論文の共著者の1人で米ワシントン大学薬学部のDouglas Barthold氏は「今回の研究から、スタチン系薬と降圧薬の併用は、脂質や血圧をコントロールするだけでなく、アルツハイマー病をはじめとする認知症の予防にも有益である可能性が示唆された」と説明している。.米国の認知症患者数は約700万人に上り、今後20年間で1200万人にまで増加すると予想されている。Zissimopoulos氏は「認知症の根本的治療薬はいまだ開発されていないが、発症を少しでも遅らせることができれば、患者や介護者の負担も、そして医療システムへの負荷も劇的に減らすことができる」と強調。「この研究結果が今後、さらなる研究で証明されれば、認知症予防にスタチン系薬と降圧薬の併用が推奨されるようになる可能性がある」との見方を示している。.米国の2人の専門家は、脳と心臓の2つの臓器が関連していることを考えると、今回の研究結果は納得できるとしている。米レノックス・ヒル病院のGayatri Devi氏は「心臓と脳の健康は直結するという研究もある」と述べ、心臓と脳を健康に保つには、薬物療法に加えて、地中海食などの健康的な食事を取ることと、週に3~4回、30~45分の有酸素運動を行うほか、良い睡眠習慣と社会参加を続けるよう勧めている。.一方で、米サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は「炎症は脳の血管に悪影響を与えるが、ARBやスタチンにはその炎症を抑える働きがある」と指摘。「高精度医療(プレシジョン・メディシン)が重視されていく中で、高齢患者に対して降圧薬とスタチン系薬の併用で脳血管の健康を保ち、脳機能の低下を防ぐという考え方は刺激的で有望だ」と述べている。(HealthDay News 2020年3月13日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/heart-drug-combos-might-also-lower-your-dementia-risk-study-755665.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
コレステロール低下薬のスタチン系薬と降圧薬であるACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を併用すると、心臓に良い影響を与えるだけでなく、認知症予防にも有用な可能性があることが、米南カリフォルニア大学のJulie Zissimopoulos氏らの研究から明らかになった。研究結果の詳細は「PLOS One」3月4日オンライン版に掲載された。今回の研究は、2007~2014年の米国のメディケア受給者69万4,672人を対象に後ろ向きに分析したもの。過去2年間に降圧薬とスタチン系薬の両方を使用した67歳以上の患者を対象とし、認知症の診断歴やアルツハイマー病関連の治療薬の使用歴がある人は除外した。.その結果、スタチン系薬のプラバスタチンまたはロスバスタチンと、降圧薬のACE阻害薬またはARBを併用すると、他の組み合わせと比べて認知症リスクが低くなることが分かった〔オッズ比は、ACE阻害薬+プラバスタチンが0.942(P=0.011)、ACE阻害薬+ロスバスタチンが0.841(P<0.001)、ARB+プラバスタチンが0.794(P<0.001)、ARB+ロスバスタチンが0.818(P<0.001)〕。特に、ACE阻害薬よりもARBとの組み合わせの方がベネフィットは大きく、女性よりも男性の方が有益であった。.論文の共著者の1人で米ワシントン大学薬学部のDouglas Barthold氏は「今回の研究から、スタチン系薬と降圧薬の併用は、脂質や血圧をコントロールするだけでなく、アルツハイマー病をはじめとする認知症の予防にも有益である可能性が示唆された」と説明している。.米国の認知症患者数は約700万人に上り、今後20年間で1200万人にまで増加すると予想されている。Zissimopoulos氏は「認知症の根本的治療薬はいまだ開発されていないが、発症を少しでも遅らせることができれば、患者や介護者の負担も、そして医療システムへの負荷も劇的に減らすことができる」と強調。「この研究結果が今後、さらなる研究で証明されれば、認知症予防にスタチン系薬と降圧薬の併用が推奨されるようになる可能性がある」との見方を示している。.米国の2人の専門家は、脳と心臓の2つの臓器が関連していることを考えると、今回の研究結果は納得できるとしている。米レノックス・ヒル病院のGayatri Devi氏は「心臓と脳の健康は直結するという研究もある」と述べ、心臓と脳を健康に保つには、薬物療法に加えて、地中海食などの健康的な食事を取ることと、週に3~4回、30~45分の有酸素運動を行うほか、良い睡眠習慣と社会参加を続けるよう勧めている。.一方で、米サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は「炎症は脳の血管に悪影響を与えるが、ARBやスタチンにはその炎症を抑える働きがある」と指摘。「高精度医療(プレシジョン・メディシン)が重視されていく中で、高齢患者に対して降圧薬とスタチン系薬の併用で脳血管の健康を保ち、脳機能の低下を防ぐという考え方は刺激的で有望だ」と述べている。(HealthDay News 2020年3月13日).https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/heart-drug-combos-might-also-lower-your-dementia-risk-study-755665.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.