アルドステロンというホルモンの分泌過剰による高血圧の頻度は、従来考えられていたよりも高いとする論文が、「Annals of Internal Medicine」5月26日オンライン版に掲載された。重度の高血圧患者では約22%、軽症とされるステージ1の高血圧でも約16%にこの疾患が該当するという。アルドステロンは副腎から分泌されるホルモン。アルドステロンが過剰に分泌されると体内に塩分がたまりやすくなる一方で、血圧を下げるように働くカリウムの排出が促されるため、血圧が上昇する。このような機序により高血圧となる「原発性アルドステロン症」は頻度の低い疾患とされていた。しかし本論文の上席著者である米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のAnand Vaidya氏は、「この疾患はまれであるどころか一般的なものであって、臨床医は考え方を改める必要がある」と指摘している。.Vaidya氏らは、米国内4カ所の病院で登録された1,015人を対象に、原発性アルドステロン症のスクリーニングを行った。診断には、数日間にわたってナトリウムの多い食事またはナトリウムの錠剤を摂取してもらい、その後24時間蓄尿を行うという厳密な方法を採用した。その結果、正常血圧の人でも11.3%に原発性アルドステロン症が認められ、ステージ1高血圧では15.7%、ステージ2高血圧(140/90mmHg以上)では21.6%、治療抵抗性高血圧(3種類の降圧薬を用いても降圧目標未到達)では22.0%に上った。.この論文の付随論評を執筆したハドソン医学研究所(オーストラリア)のJohn Funder氏は、この報告を「ゲーム・チェンジャーとなる研究」だとした上で、「従来の方法でスクリーニングしても、原発性アルドステロン症の実態は見えてこないことが明らかになった」と説明している。.原発性アルドステロン症の有無は多くの場合、1回の血液検査の結果に基づき判定される。しかしFunder氏によると、アルドステロン値は他の多くのホルモンと同様に採血時間によって変動するため、この方法では正確に把握することができないという。同氏は、原発性アルドステロン症による高血圧は、他の原因による高血圧に比べて心血管疾患や死亡のリスクが3倍に上るという先行研究を紹介し、スクリーニングの重要性を強調する。.加えて、そもそもスクリーニング対象が少なすぎるという問題がある。現行のガイドラインは、治療抵抗性高血圧や、高血圧に加え低カリウム血症のある患者など、特定の条件に該当する患者のみを対象にスクリーニングを推奨している。しかし、米メイヨー・クリニックの内分泌専門医であるWilliam F. Young Jr.氏によると、この基準に該当する患者でも実際にスクリーニングを受けている人の割合は、2~3%に過ぎないという。「原発性アルドステロン症が見逃されたまま、ステージ4~5の慢性腎臓病に進行してから紹介されてくる患者が多いことにいら立ちを覚える」と同氏は語る。.原発性アルドステロン症には、生活習慣の是正に加え、抗アルドステロン作用を有するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(スピロノラクトンやエプレレノンなど)が処方される。Vaidya氏は、検査が煩雑なスクリーニングの代替として、高血圧患者にこれらの薬を一定期間処方し、有効性をチェックしてみるのも良いかもしれないと提案している。この提案についてはFunder氏も、「試行すべき手段」と支持を表明している。(HealthDay News 2020年5月26日).https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/blood-pressure-news-70/could-a-hormone-help-spur-high-blood-pressure-757992.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.