学校を安全に再開するためには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者の接触追跡や迅速隔離といった対策が重要であることを示した研究結果が、「The Lancet Child & Adolescent Health」8月3日オンライン版に発表された。オーストラリアで、数千人もの教師や小児が通う教育施設でCOVID-19が発生したが、感染対策を講じていたため、二次感染者はわずかであったという。シドニー大学(オーストラリア)のKristine Macartney氏らは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にある3,103校の学校と約4,600園の未就学児向けの教育・保育施設(ECEC)に所属する小児や職員の健康データを収集し、同州で初めてのCOVID-19診断例が報告された1月25日から学期末である4月10日までの間における健康状態を調査した。なお、オーストラリアでは、他の多くの国々とは異なり、COVID-19のパンデミック下でも、休校が義務付けられることはなかった。.その結果、小児12人と成人15人の計27人が、COVID-19に感染したことを知らずに登校または登園していたとみられ、27人が通う15校の学校および10園のECECでは、新型コロナウイルス感染が広がってもおかしくない状況であったことが分かった。しかし、感染が判明すると、ただちに接触者の追跡が行われ、新型コロナウイルス感染を拡大させる可能性のある人たちの隔離が行われていた。27人の感染者の濃厚接触者(ここでは、感染者と対面で15分以上接触した人、または20〜30人を収容する閉め切った屋内で感染者と40分以上、一緒に過ごした人と定義)は1,448人に達していた。これらの人たちには、電話での追跡が行われ、症状が現れた場合には検査を受けることなどが指導された。.濃厚接触者のうちで、COVID-19を疑う症状が現れ、検査を受けたのは633人(43.7%)で、そのうち、結果が陽性だった人は、3校の学校および1園のECECに属するわずか18人(発病率1.2%)だった。全体としては、新型コロナウイルスの感染率は、小児から小児では0.3%(2/649人)であったのに対し、小児から成人では1.0%(1/103人)、成人から小児では1.5%(8/536人)、成人から成人では4.4%(7/160人)であり、成人と比べて小児では感染が広がりにくい可能性が示唆された。.Macartney氏は、「今回の研究から、学校や未就学児の教育施設における新型コロナウイルスの感染拡大に関する最も包括的なデータが得られた」と評価する。また、ニューサウスウェールズ州には180万人の小児がいるが、同州における18歳以下の小児のCOVID-19罹患例の報告は97人にとどまっており、全ての患者の中で小児患者が占める割合はわずか3.2%であるという。そのため、同氏らは「この年齢層では、COVID-19の罹患率は低い」との見方を示している。.一方、感染症の専門家で、米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、今回の報告を受けて、「この研究が示しているのは、学校もコミュニティの一部であり、市中感染は学校に影響を及ぼすということだ。私自身は、学校再開は優先すべき事柄の一つだと考えているが、再開に当たっては、新型コロナウイルスによる影響を最小限に抑えるための対策が不可欠だ。しかし、対策を講じることが難しい場合や、地域で制御不能なレベルにまで感染が拡大している場合には、このウイルスが大きな混乱をもたらすことになるだろう」と述べている。(HealthDay News 2020年8月3日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/schools-can-reopen-safely-if-precautions-in-place-australian-study-shows-760079.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
学校を安全に再開するためには、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患者の接触追跡や迅速隔離といった対策が重要であることを示した研究結果が、「The Lancet Child & Adolescent Health」8月3日オンライン版に発表された。オーストラリアで、数千人もの教師や小児が通う教育施設でCOVID-19が発生したが、感染対策を講じていたため、二次感染者はわずかであったという。シドニー大学(オーストラリア)のKristine Macartney氏らは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にある3,103校の学校と約4,600園の未就学児向けの教育・保育施設(ECEC)に所属する小児や職員の健康データを収集し、同州で初めてのCOVID-19診断例が報告された1月25日から学期末である4月10日までの間における健康状態を調査した。なお、オーストラリアでは、他の多くの国々とは異なり、COVID-19のパンデミック下でも、休校が義務付けられることはなかった。.その結果、小児12人と成人15人の計27人が、COVID-19に感染したことを知らずに登校または登園していたとみられ、27人が通う15校の学校および10園のECECでは、新型コロナウイルス感染が広がってもおかしくない状況であったことが分かった。しかし、感染が判明すると、ただちに接触者の追跡が行われ、新型コロナウイルス感染を拡大させる可能性のある人たちの隔離が行われていた。27人の感染者の濃厚接触者(ここでは、感染者と対面で15分以上接触した人、または20〜30人を収容する閉め切った屋内で感染者と40分以上、一緒に過ごした人と定義)は1,448人に達していた。これらの人たちには、電話での追跡が行われ、症状が現れた場合には検査を受けることなどが指導された。.濃厚接触者のうちで、COVID-19を疑う症状が現れ、検査を受けたのは633人(43.7%)で、そのうち、結果が陽性だった人は、3校の学校および1園のECECに属するわずか18人(発病率1.2%)だった。全体としては、新型コロナウイルスの感染率は、小児から小児では0.3%(2/649人)であったのに対し、小児から成人では1.0%(1/103人)、成人から小児では1.5%(8/536人)、成人から成人では4.4%(7/160人)であり、成人と比べて小児では感染が広がりにくい可能性が示唆された。.Macartney氏は、「今回の研究から、学校や未就学児の教育施設における新型コロナウイルスの感染拡大に関する最も包括的なデータが得られた」と評価する。また、ニューサウスウェールズ州には180万人の小児がいるが、同州における18歳以下の小児のCOVID-19罹患例の報告は97人にとどまっており、全ての患者の中で小児患者が占める割合はわずか3.2%であるという。そのため、同氏らは「この年齢層では、COVID-19の罹患率は低い」との見方を示している。.一方、感染症の専門家で、米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、今回の報告を受けて、「この研究が示しているのは、学校もコミュニティの一部であり、市中感染は学校に影響を及ぼすということだ。私自身は、学校再開は優先すべき事柄の一つだと考えているが、再開に当たっては、新型コロナウイルスによる影響を最小限に抑えるための対策が不可欠だ。しかし、対策を講じることが難しい場合や、地域で制御不能なレベルにまで感染が拡大している場合には、このウイルスが大きな混乱をもたらすことになるだろう」と述べている。(HealthDay News 2020年8月3日).https://consumer.healthday.com/infectious-disease-information-21/coronavirus-1008/schools-can-reopen-safely-if-precautions-in-place-australian-study-shows-760079.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.