新型コロナウイルス感染症(COVID-19)終息のめどが立たない中、世界各国で医療提供の新たな手段として急速に広がったのが、テレメディシン(遠隔医療)だ。ただ、電話やビデオ通話による診察だけでは、健康障害の兆候を見逃してしまう可能性も否定できないことを示唆する報告が、「JAMA Network Open」10月2日オンライン版に発表された。米ジョンズ・ホプキンス大学のCaleb Alexander氏らは、米国の医療関連調査データ(IQVIA National Disease and Therapeutic Index)を用いて、COVID-19パンデミックによる診療形態の変化を解析。2020年4~6月のプライマリケア受診件数の約35%を遠隔医療が占めており、前年までと比べて大幅に増加したことが分かった。一方、医療機関の外来受診件数(対面診療)は、前年から半減していたという。.このような診療形態の変化に伴い、「心臓の状態が悪化した人もいる可能性がある」とAlexander氏は指摘する。その理由は、遠隔医療の増加に伴い、血圧測定が施行される回数は約50%減少し、血清脂質値の検査も約37%減少していたことが、今回の研究で明らかになったためだ。.「血圧や血清脂質の測定結果は、プライマリケアにおいて重要かつ不可欠な情報であり、測定してもしなくてもどちらでも良いというものではない」とAlexander氏は強調する。そして、「われわれの研究結果は、COVID-19のパンデミックがもたらす影響の一つとして、心血管疾患の悪化、またはその危険因子の管理が不良になる患者が増加する可能性があることを示している」と話している。.一方、この論文に関する付随論評の著者の一人である米ワシントン大学のRenata Thronson氏は、血圧測定に関して「上腕式の測定器などの家庭用血圧測定器を普及させることで容易に解決できる可能性がある」としている。ただし同氏は、「新たな医療格差を生まないために、誰もがそのような家庭用ツールを入手できるようにする、組織的な取り組みが必要」とも指摘する。さらに、血圧の管理に限らず、遠隔医療全般にかかわる問題として、「オンラインでの診療に必要なパソコンどころか、電話さえ使用できない環境に暮らす患者も少なくない」という障壁を挙げている。.現在、どのような時に遠隔医療を導入し、どのような時に患者へ外来への受診を促すべきかの判断は、現場の医師に任されていて、目安となる基準はない。また、遠隔医療を始めたばかりの医師は、電話やビデオ通話を介して診療することに困惑する可能性もある。例えば、抑うつや不安の診療では、言葉によらない微妙なコミュニケーションが極めて重要だが、「遠隔医療ではその評価が十分できなくなることが考えられる」とAlexander氏は懸念を示している。また、足の痛みや息切れ、目のかすみといった症状なども「遠隔医療では診察しにくいと感じる医師がいるかもしれない」と同氏は指摘。「こうした症状は一般的に対面診療でなければ正確な評価が難しい」としている。.Thronson氏も、臨床検査データに基づく経過観察以外の診察の一部は、遠隔医療では対応が困難なことに同意する。ただ、慢性疾患に関しては、「対面診療でなくてもできることがたくさんある」としている。.遠隔医療の急拡大に伴うこのような問題については、今後も専門家の間で議論が続くとみられる。しかしそれとは別の大切なポイントとして、Alexander氏とThronson氏はともに、「医師は患者に対し、医療機関を受診しても安全であることを伝えるべき」との見解を示している。.現在、医療機関ではCOVID-19感染防止のため、最新の知見に基づいた手順で消毒などの衛生管理が行われるようになっている。Alexander氏は「COVID-19対策を講じていない医療機関はわが国には存在しない。パンデミックが始まってからこれまでに、安全に診療を行うための対策についてはほとんどの医療機関が把握できていると思われる」と述べている。(HealthDay News 2020年10月5日).https://consumer.healthday.com/bone-and-joint-information-4/computer-related-health-news-143/as-virtual-doctor-visits-spike-concerns-about-equity-missed-diagnoses-grow-761893.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)終息のめどが立たない中、世界各国で医療提供の新たな手段として急速に広がったのが、テレメディシン(遠隔医療)だ。ただ、電話やビデオ通話による診察だけでは、健康障害の兆候を見逃してしまう可能性も否定できないことを示唆する報告が、「JAMA Network Open」10月2日オンライン版に発表された。米ジョンズ・ホプキンス大学のCaleb Alexander氏らは、米国の医療関連調査データ(IQVIA National Disease and Therapeutic Index)を用いて、COVID-19パンデミックによる診療形態の変化を解析。2020年4~6月のプライマリケア受診件数の約35%を遠隔医療が占めており、前年までと比べて大幅に増加したことが分かった。一方、医療機関の外来受診件数(対面診療)は、前年から半減していたという。.このような診療形態の変化に伴い、「心臓の状態が悪化した人もいる可能性がある」とAlexander氏は指摘する。その理由は、遠隔医療の増加に伴い、血圧測定が施行される回数は約50%減少し、血清脂質値の検査も約37%減少していたことが、今回の研究で明らかになったためだ。.「血圧や血清脂質の測定結果は、プライマリケアにおいて重要かつ不可欠な情報であり、測定してもしなくてもどちらでも良いというものではない」とAlexander氏は強調する。そして、「われわれの研究結果は、COVID-19のパンデミックがもたらす影響の一つとして、心血管疾患の悪化、またはその危険因子の管理が不良になる患者が増加する可能性があることを示している」と話している。.一方、この論文に関する付随論評の著者の一人である米ワシントン大学のRenata Thronson氏は、血圧測定に関して「上腕式の測定器などの家庭用血圧測定器を普及させることで容易に解決できる可能性がある」としている。ただし同氏は、「新たな医療格差を生まないために、誰もがそのような家庭用ツールを入手できるようにする、組織的な取り組みが必要」とも指摘する。さらに、血圧の管理に限らず、遠隔医療全般にかかわる問題として、「オンラインでの診療に必要なパソコンどころか、電話さえ使用できない環境に暮らす患者も少なくない」という障壁を挙げている。.現在、どのような時に遠隔医療を導入し、どのような時に患者へ外来への受診を促すべきかの判断は、現場の医師に任されていて、目安となる基準はない。また、遠隔医療を始めたばかりの医師は、電話やビデオ通話を介して診療することに困惑する可能性もある。例えば、抑うつや不安の診療では、言葉によらない微妙なコミュニケーションが極めて重要だが、「遠隔医療ではその評価が十分できなくなることが考えられる」とAlexander氏は懸念を示している。また、足の痛みや息切れ、目のかすみといった症状なども「遠隔医療では診察しにくいと感じる医師がいるかもしれない」と同氏は指摘。「こうした症状は一般的に対面診療でなければ正確な評価が難しい」としている。.Thronson氏も、臨床検査データに基づく経過観察以外の診察の一部は、遠隔医療では対応が困難なことに同意する。ただ、慢性疾患に関しては、「対面診療でなくてもできることがたくさんある」としている。.遠隔医療の急拡大に伴うこのような問題については、今後も専門家の間で議論が続くとみられる。しかしそれとは別の大切なポイントとして、Alexander氏とThronson氏はともに、「医師は患者に対し、医療機関を受診しても安全であることを伝えるべき」との見解を示している。.現在、医療機関ではCOVID-19感染防止のため、最新の知見に基づいた手順で消毒などの衛生管理が行われるようになっている。Alexander氏は「COVID-19対策を講じていない医療機関はわが国には存在しない。パンデミックが始まってからこれまでに、安全に診療を行うための対策についてはほとんどの医療機関が把握できていると思われる」と述べている。(HealthDay News 2020年10月5日).https://consumer.healthday.com/bone-and-joint-information-4/computer-related-health-news-143/as-virtual-doctor-visits-spike-concerns-about-equity-missed-diagnoses-grow-761893.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.