日光への曝露は皮膚とDNAの損傷を招く。皮膚細胞に生じたそのような遺伝子変異を分析する新手法を用いて、メラノーマ(悪性黒色腫)を目視できるようになる前の段階で、その発症リスクを予測できる可能性が、新たな研究で示された。この研究を実施した、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)皮膚科学准教授のA. Hunter Shain氏は、「一見したところ正常に見える皮膚でも、細胞レベルでは、日光曝露により、メラノーマに関連する変異が多発している可能性のあることが分かった」と述べている。研究結果の詳細は、「Nature」10月7日オンライン版に掲載された。皮膚にはメラノサイト(メラニン細胞)と呼ばれる細胞が存在する。メラノサイトは、太陽からの有害な紫外線を吸収するメラニン色素を生成して皮膚を守っている。メラノーマは、メラノサイトがDNAの損傷によりがん細胞化し、その増殖を制御できなくなることにより発症すると考えられている。メラノーマは、初期に発見されれば外科的処置により切除できるが、病巣が広がった場合の治療は困難である。米国がん協会(ACS)によると、米国ではメラノーマの有病率が増加しており、2020年には約10万人がメラノーマと診断され、約6,850人が死亡すると推定されている。.Shain氏らは、6人の対象者(メラノーマサバイバー2人、メラノーマの既往歴がない4人の死体)の背部、頭部、脚、足、肩、臀部から、総計133個のメラノサイトを採取した。そして、メラノサイトを複数まとめて調べるのではなく、個々の細胞ごとに解析を行う単一細胞解析の手法を用いてDNAシーケンシングを行い、前がん性変異を有する細胞の特定を試みた。.解析の結果、正常なメラノサイト中に多くの変異が生じており、その中にはメラノーマと関連する変異も含まれることが明らかになった。次に、メラノーマの既往のある対象者の、がん化した細胞の近くの正常なメラノサイトと、メラノーマの既往歴がない対象者の同じ部位のメラノサイトの変異の状態を比較した。その結果、前者では、メラノーマに関連するものも含めた変異が、はるかに多く生じていることが明らかになった。.奇妙なことに、メラノーマは、顔などの常時日光に曝露している部位よりも、背中や大腿のように間欠的に日光に曝露する部位に発生しやすいとされている。今回の研究でも、頭頸部よりも、背中や四肢に多くの変異が認められることが分かった。.Shain氏は、「メラノーマは、突然発症するように見えることもあるが、今回の研究から、一見、正常に見える皮膚でも、既にがんに関連する変異を持ったメラノサイトが多数存在していることが明らかになった。本研究は、既存のほくろから発症しないタイプのメラノーマの前駆病変の発見ともいえるものだ」と述べている。.日光への曝露量が多いほど、メラノーマの発症リスクは高まるものと考えられるが、事はそう単純ではない。肌の色や生来のDNA修復能力といった先天的な因子の影響もあるからだ。Shain氏は、「メラノーマは多くの場合、数十年にわたる変異性損傷の蓄積により発症するが、一部の人では、平均よりもリスクが高い。われわれが開発した技術を使えば、変異の蓄積が特に多い人に対し、綿密な経過観察や、日光曝露からの保護対策などを取ることができる」と説明する。その上で同氏は、「われわれの手法を合理化・自動化できれば、メラノーマリスクの評価に広く利用できるようになり、がんスクリーニングを勧める根拠にもなると考えられる」との展望を示している。(HealthDay News 2020年10月8日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/skin-cancer-news-108/dna-analysis-might-reveal-melanoma-risk-761914.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
日光への曝露は皮膚とDNAの損傷を招く。皮膚細胞に生じたそのような遺伝子変異を分析する新手法を用いて、メラノーマ(悪性黒色腫)を目視できるようになる前の段階で、その発症リスクを予測できる可能性が、新たな研究で示された。この研究を実施した、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)皮膚科学准教授のA. Hunter Shain氏は、「一見したところ正常に見える皮膚でも、細胞レベルでは、日光曝露により、メラノーマに関連する変異が多発している可能性のあることが分かった」と述べている。研究結果の詳細は、「Nature」10月7日オンライン版に掲載された。皮膚にはメラノサイト(メラニン細胞)と呼ばれる細胞が存在する。メラノサイトは、太陽からの有害な紫外線を吸収するメラニン色素を生成して皮膚を守っている。メラノーマは、メラノサイトがDNAの損傷によりがん細胞化し、その増殖を制御できなくなることにより発症すると考えられている。メラノーマは、初期に発見されれば外科的処置により切除できるが、病巣が広がった場合の治療は困難である。米国がん協会(ACS)によると、米国ではメラノーマの有病率が増加しており、2020年には約10万人がメラノーマと診断され、約6,850人が死亡すると推定されている。.Shain氏らは、6人の対象者(メラノーマサバイバー2人、メラノーマの既往歴がない4人の死体)の背部、頭部、脚、足、肩、臀部から、総計133個のメラノサイトを採取した。そして、メラノサイトを複数まとめて調べるのではなく、個々の細胞ごとに解析を行う単一細胞解析の手法を用いてDNAシーケンシングを行い、前がん性変異を有する細胞の特定を試みた。.解析の結果、正常なメラノサイト中に多くの変異が生じており、その中にはメラノーマと関連する変異も含まれることが明らかになった。次に、メラノーマの既往のある対象者の、がん化した細胞の近くの正常なメラノサイトと、メラノーマの既往歴がない対象者の同じ部位のメラノサイトの変異の状態を比較した。その結果、前者では、メラノーマに関連するものも含めた変異が、はるかに多く生じていることが明らかになった。.奇妙なことに、メラノーマは、顔などの常時日光に曝露している部位よりも、背中や大腿のように間欠的に日光に曝露する部位に発生しやすいとされている。今回の研究でも、頭頸部よりも、背中や四肢に多くの変異が認められることが分かった。.Shain氏は、「メラノーマは、突然発症するように見えることもあるが、今回の研究から、一見、正常に見える皮膚でも、既にがんに関連する変異を持ったメラノサイトが多数存在していることが明らかになった。本研究は、既存のほくろから発症しないタイプのメラノーマの前駆病変の発見ともいえるものだ」と述べている。.日光への曝露量が多いほど、メラノーマの発症リスクは高まるものと考えられるが、事はそう単純ではない。肌の色や生来のDNA修復能力といった先天的な因子の影響もあるからだ。Shain氏は、「メラノーマは多くの場合、数十年にわたる変異性損傷の蓄積により発症するが、一部の人では、平均よりもリスクが高い。われわれが開発した技術を使えば、変異の蓄積が特に多い人に対し、綿密な経過観察や、日光曝露からの保護対策などを取ることができる」と説明する。その上で同氏は、「われわれの手法を合理化・自動化できれば、メラノーマリスクの評価に広く利用できるようになり、がんスクリーニングを勧める根拠にもなると考えられる」との展望を示している。(HealthDay News 2020年10月8日).https://consumer.healthday.com/cancer-information-5/skin-cancer-news-108/dna-analysis-might-reveal-melanoma-risk-761914.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.