ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの植込み型心臓デバイス(CIED)を利用している人は、装着しているデバイスがMRI対応のものでない限り、MRIスキャンを受けることができないとされてきた。しかし、米セントルークス病院ミッドアメリカ心臓研究所のSanjaya Gupta氏らが実施した研究で、一定の対策を講じれば、このような患者に対してもMRI検査を安全に実施できることが明らかにされた。この研究の詳細は、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」10月22日オンライン版で報告された。CIEDには、心拍が遅くなりすぎないよう調整するペースメーカーや、命に関わる不整脈を治療するためのICDなどがある。これらのデバイスは、いずれも装置本体とそれに接続するリード線から構成されている。MRI検査は、腫瘍から骨や関節の傷害、内出血まで、あらゆる診断に用いられる。しかし、検査を受ける患者は強力な磁場に曝されるため、CIED装着患者では、主にデバイスのリード線の過熱により問題が生じる可能性が懸念されてきた。最近では、「MRI対応」デバイスが開発されている。その一方で、旧型のデバイスでもMRI検査のリスクはないことを示すエビデンスも増えつつある。「それにもかかわらず、旧型デバイスの装着患者は、いまだにMRIを避けるよう言われ続けている」とGupta氏は話す。.今回の研究は、旧型のCIEDを装着し、2015年9月~2019年6月に1回以上のMRI検査を受けた患者532人(女性211人、平均年齢69±14歳)を対象としたもの。MRI検査数の総数は608件で、このうちの61件は心臓MRI検査であった。.MRI検査を実施するにあたり、Gupta氏らは特別な手順を踏んだ。それは、検査の実施前に、非侵襲的なデバイスのテストを行って患者のペースメーカー依存度を確認し、それに応じて再プログラミングを行う。そして、MRI検査後にデバイスの設定を元に戻し、再度テストを行ってデバイスが適切に機能することを確認するというものだった。MRI検査中には、電気生理学に通じた看護師がバイタルサインをチェックしたほか、二次救命処置の資格を持つ医療従事者も立ち合った。.その結果、MRI患者およびデバイスに害が生じた事例は確認されず、旧型のデバイス装着患者でもMRI検査を安全に実施できることが明らかになった。また、MRI検査の結果により、確定診断に至っていなかった診断が25%の確率で変化し、26%の参加者の予後予測が変化し、外科的な治療を含む計画されていた治療が42%の確率で変更された。.この報告を受けて、今回の研究には関与していない、米スクリプスクリニックのRobert Russo氏は、「2020年にもなってCIED装着患者のMRI検査を拒否するのは間違っている」と話す。同氏が2017年に「New England Journal of Medicine」に発表した研究では、米国の19カ所の医療センターでMRIスキャンを受けた旧型のCIED装着患者1,200人強を対象に検討した結果、全般的に問題は生じなかったことが報告されている。.Russo氏は、今回の研究で用いられた手順は、多くの医療施設で実施可能なはずだとの見解を示している。しかし、米国心臓病学会(ACC)のJim Cheung氏によれば、CIED装着患者がMRI検査を受けられる施設をなかなか見つけられないのが現状だという。他の画像検査法が適切であればそちらを優先した方が良い。しかし、「MRI検査が最善であるにもかかわらず拒否された場合には、患者は声を上げるべきだ」と前述の3人の専門家はいずれも口を揃える。Cheung氏は、MRI非対応のCIED装着患者にもMRI検査を実施している施設への紹介や、必要に応じて心臓専門医の関与を依頼することもできると話している。(HealthDay News 2020年10月26日).https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/mri-scan-news-455/mris-might-be-safe-for-patients-with-implanted-heart-devices-762409.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの植込み型心臓デバイス(CIED)を利用している人は、装着しているデバイスがMRI対応のものでない限り、MRIスキャンを受けることができないとされてきた。しかし、米セントルークス病院ミッドアメリカ心臓研究所のSanjaya Gupta氏らが実施した研究で、一定の対策を講じれば、このような患者に対してもMRI検査を安全に実施できることが明らかにされた。この研究の詳細は、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」10月22日オンライン版で報告された。CIEDには、心拍が遅くなりすぎないよう調整するペースメーカーや、命に関わる不整脈を治療するためのICDなどがある。これらのデバイスは、いずれも装置本体とそれに接続するリード線から構成されている。MRI検査は、腫瘍から骨や関節の傷害、内出血まで、あらゆる診断に用いられる。しかし、検査を受ける患者は強力な磁場に曝されるため、CIED装着患者では、主にデバイスのリード線の過熱により問題が生じる可能性が懸念されてきた。最近では、「MRI対応」デバイスが開発されている。その一方で、旧型のデバイスでもMRI検査のリスクはないことを示すエビデンスも増えつつある。「それにもかかわらず、旧型デバイスの装着患者は、いまだにMRIを避けるよう言われ続けている」とGupta氏は話す。.今回の研究は、旧型のCIEDを装着し、2015年9月~2019年6月に1回以上のMRI検査を受けた患者532人(女性211人、平均年齢69±14歳)を対象としたもの。MRI検査数の総数は608件で、このうちの61件は心臓MRI検査であった。.MRI検査を実施するにあたり、Gupta氏らは特別な手順を踏んだ。それは、検査の実施前に、非侵襲的なデバイスのテストを行って患者のペースメーカー依存度を確認し、それに応じて再プログラミングを行う。そして、MRI検査後にデバイスの設定を元に戻し、再度テストを行ってデバイスが適切に機能することを確認するというものだった。MRI検査中には、電気生理学に通じた看護師がバイタルサインをチェックしたほか、二次救命処置の資格を持つ医療従事者も立ち合った。.その結果、MRI患者およびデバイスに害が生じた事例は確認されず、旧型のデバイス装着患者でもMRI検査を安全に実施できることが明らかになった。また、MRI検査の結果により、確定診断に至っていなかった診断が25%の確率で変化し、26%の参加者の予後予測が変化し、外科的な治療を含む計画されていた治療が42%の確率で変更された。.この報告を受けて、今回の研究には関与していない、米スクリプスクリニックのRobert Russo氏は、「2020年にもなってCIED装着患者のMRI検査を拒否するのは間違っている」と話す。同氏が2017年に「New England Journal of Medicine」に発表した研究では、米国の19カ所の医療センターでMRIスキャンを受けた旧型のCIED装着患者1,200人強を対象に検討した結果、全般的に問題は生じなかったことが報告されている。.Russo氏は、今回の研究で用いられた手順は、多くの医療施設で実施可能なはずだとの見解を示している。しかし、米国心臓病学会(ACC)のJim Cheung氏によれば、CIED装着患者がMRI検査を受けられる施設をなかなか見つけられないのが現状だという。他の画像検査法が適切であればそちらを優先した方が良い。しかし、「MRI検査が最善であるにもかかわらず拒否された場合には、患者は声を上げるべきだ」と前述の3人の専門家はいずれも口を揃える。Cheung氏は、MRI非対応のCIED装着患者にもMRI検査を実施している施設への紹介や、必要に応じて心臓専門医の関与を依頼することもできると話している。(HealthDay News 2020年10月26日).https://consumer.healthday.com/health-technology-information-18/mri-scan-news-455/mris-might-be-safe-for-patients-with-implanted-heart-devices-762409.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.