ビタミンDや魚油サプリメントの摂取、筋力トレーニング――いずれも健康に良いとされる。しかし、既に健康な高齢者の場合は、それらを単独で、または組み合わせて実施しても、身体や認知機能をさらに向上させる効果は得られないことを示唆する研究結果が報告された。チューリッヒ大学病院(スイス)のHeike Bischoff-Ferrari氏らの論文が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に11月10日掲載された。この研究は、70歳以上の高齢者2,157人を対象に行われたランダム化二重盲検プラセボ対照試験。研究対象を、過去5年間に疾患を新規発症していない比較的健康で活動的な高齢者とし、2012年12月~2014年11月に登録した。平均年齢は74.9歳で女性が61.7%。.介入法は、オメガ3脂肪酸(魚油)1g/日の摂取、ビタミンDを2,000IU/日摂取、プラセボの摂取、および運動〔筋力トレーニングと注意制御運動(attention control exercise program)〕1回30分を週3回。これをおのおの単独で行う群と、複数組み合わせて行う群の合計8つのグループに分け、2017年11月まで追跡した。主要評価項目は、収縮期/拡張期血圧、非椎体骨折の発生、身体機能、感染症の罹患、認知機能という6項目。統計解析は多重比較検定により、有意水準はP<0.01に設定した。.追跡期間中央値2.99年で、6つの評価項目に有意な群間差は認められなかった。また、追跡期間中に25人が死亡したが、その発生率も群間差がなかった。論文の筆頭著者であるBischoff-Ferrari氏は、「重大な疾患の既往がない活動的な70歳以上の高齢者が、ビタミンDやオメガ3脂肪酸を多く摂取しても、非椎体骨折のリスクや筋力、認知機能にメリットを及ぼさないようだ」と述べている。.ただ、オメガ3脂肪酸を1g/日摂取した群の感染症のリスクは、発生率(IR)0.89(99%信頼区間0.78~1.01、P=0.02)であり、事前に設定した有意水準には至らなかったものの11%低かった。さらに追加解析からは、尿路感染症のリスクが大きく低下していることが分かった。尿路感染症は高齢者に多い感染症の一つとして知られている。また、2,000IU/日のビタミンD摂取により収縮期血圧が低下する傾向が見られ、70~74歳では感染症リスクの低下傾向も見られた。.主解析で有意差が認められなかった理由についてBischoff-Ferrari氏は、「研究参加者のベースライン時点の健康状態が極めて良好であったため、介入による大きな改善の余地がもともと少なかったと考えられる」と解説。その上で、「サプリメントは一般に安全性が高く安価であることから、この結果は意味のあるものと言える」と述べている。.この研究結果について、米テキサス大学サウスウエスタン医療センターのLona Sandon氏は、介入に用いられたサプリメントの用量設定に疑問を示している。同氏によると、「ビタミンDが2,000IU/日という用量は現行基準の摂取上限値ではあるが、それが血中濃度を変化させるのに十分なのか見解が分かれている」という。またオメガ3脂肪酸についても、炎症抑制効果などが示された過去の研究は、今回の研究よりはるかに高用量で行われ、さらに筋力トレーニングについても、一般的な推奨量より少なすぎると指摘している。.そしてSandon氏は、「食事と日光から十分なビタミンDを摂取することは不可欠で、オメガ3脂肪酸も重要な栄養素であり、運動には身体と脳の機能を向上させる効果がある。健康的な食事を取り、体を動かし続けることをやめるべきではない」と、本研究の結果を慎重に解釈するよう促している。(HealthDay 2020年11月12日).https://consumer.healthday.com/11-10-e-fish-oil-vit-d-weights-wont-help-u-over-70-2648639094.html.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.