大自然の中で1日を過ごすと充電されたように感じるが、自然の音には実際に健康増進効果があるようだ。鳥のさえずりや波の音は、いら立ちやストレスといったネガティブな感情を抑える一方で、ポジティブな感情を高め、健康を増進させる効果があることが、米国の国立公園で実施された研究で明らかになった。カールトン大学(カナダ)のRachel Buxton氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」4月6日号に発表された。.この研究ではまず、システマティックレビューにより自然の音が健康に与える影響について検討した36件の研究論文を抽出し、そのうちの18件についてメタ解析を実施した。なお、36件の研究論文のうちの22件(61%)のエビデンスは、実験室または病院で自然の音を流したときのデータに基づくものだった。メタ解析の結果、自然の音を聞くことで、ストレスやいら立ち、痛みが軽減する一方で、健康やポジティブな感情、認知機能などは増進することが明らかになった。また、自然の音による効果は音の種類により異なっており、例えば、鳥のさえずりはストレスといら立ちの軽減に最も効果的な一方で、水の流れる音はポジティブな感情や健康増進に最も効果的であった。.次にBuxton氏らは、68園の国立公園の計221カ所で音を録音し、その分析を行った。その結果、自然の音にあふれた場所がある一方で、来園者が多く、人々から発せられる雑音の方が大きな場所もあるなど、場所によって自然の音の量に違いがあることが分かった。また、自然の音に加えて人々から発せられる雑音が聞こえた場合でも、そうした雑音のみが聞こえた場合と比べれば、ある程度の健康効果は得られることも明らかになった。.Buxton氏は今回の研究結果について、「自然の音は、穏やかな気持ちのような、いわゆる"ポジティブ感情"に良い影響を与え、ストレスの軽減に有益だ。それだけでなく、痛みの緩和や気分の向上、認知機能の向上といった、さまざまな効果が得られることを確認した」と説明。その上で、「どこへ行っても雑音がつきまとう都市部では、特にこの研究結果の意義は大きいだろう。雑音から逃れることはできなくても、自然の音にあふれた公園に行くだけで、ある程度の健康効果は得られる可能性がある」と話している。.自然はなぜ人間にこのような影響を及ぼすのか。その理由をBuxton氏は、古代から人間には危険や安全を知らせるシグナルを感知する能力が備わっているからだと考えている。「自然の音にあふれた環境は、安全性を示す優れたサインとなる」と同氏は説明し、「安全な環境では精神的な回復が促される一方、全く音のない環境や自然の音に乏しい環境は、何か問題があることを示すサインとして捉えられ、警戒心が呼び起こされるのかもしれない」と推察している。.一方、今回の研究には関与していない、米オレゴン州ユージーン市の心理療法士であるPatricia Hasbach氏は「自然の音が幸福感、あるいはストレスの緩和や回復に寄与するという研究結果に驚きはなかった」と話す。同氏は、自身のクライアントに裏庭や公園など身近な場所に定期的に行くようアドバイスしているという。また、「実際に自然の中に身を置いたときほどの効果は期待できないが、自然の音や景色を楽しむDVDの視聴でも、何もしないよりは良い」と話している。(HealthDay News 2021年3月24日).https://consumer.healthday.com/3-24-waves-crashing-birds-singing-natures-sounds-bring-healing-study-finds-2651144585.html.Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.