自分がしたいことをする「自由時間」は、多過ぎても少な過ぎても、人々のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)を低下させるとする研究結果が報告された。研究論文の筆頭著者である、米ペンシルベニア大学マーケティング分野のMarissa Sharif氏は、「少な過ぎる自由時間はストレスの元となり主観的ウェルビーイングの低下を招く。しかし、自由時間は多ければ良いというものでもないようだ」と話している。この研究の詳細は、「Journal of Personality and Social Psychology」に9月9日掲載された。 多忙過ぎて自由時間がないことに不満を抱く人は多い。しかし、自由時間の少なさは本当に有害なのだろうか。また、自由時間が増えることで幸福感は増すのだろうか。Sharif氏らは、こうした疑問を明らかにするために、2件の大規模データの分析と2つの実験を行った。 まず、米国人材マネジメント協会が実施している調査である、National Study of the Changing Workforce(NSCW)への1992〜2008年の参加者1万3,639人のデータが分析された。調査の質問項目の中には、「仕事がある平日の自由時間は平均してどれくらいですか」など、参加者の自由時間に関するものが含まれていた。主観的なウェルビーイングは、人生への満足度で評価された。分析の結果、自由時間の多さはウェルビーイングの向上と有意に関連することが明らかになったが、それはある時点までで、そこを超えると、自由時間の多さとウェルビーイングの向上の関連は消失した。 次にSharif氏らは、米国労働省労働統計局が実施している調査である、American Time Use Survey(ATUS)に2012〜2013年に参加した2万1,736人のデータを分析した。ATUSでは、参加者は調査前日24時間の具体的な行動とウェルビーイングについて調べられていた。このデータ解析でも、自由時間の増加に伴いウェルビーイングは向上したものの、1日の自由時間が2時間程度になるとその向上が横ばいとなり、5時間を超えると低下し始めることが示された。 そこでSharif氏らは、この現象をより詳しく調べるために、6,000人以上を対象に、オンラインで2つの実験を行った。1つ目の実験では、参加者に毎日、わずかな(15分)、適度の(3.5時間)、または多くの(7時間)自由時間があることを想像してもらい、どの程度、喜びや幸福感、満足度が得られるかを評価してもらった。その結果、自由時間がわずか、または多い群では、適度な群と比べてウェルビーイングが低いことが明らかになった。自由時間がわずかな群では、適度な群に比べて、ストレスを多く感じていた。一方、自由時間が多い群では適度な群に比べて、自分が生産的な活動をしていないと感じる人が多かった。Sharif氏らは、こうしたことがウェルビーイングの低さにつながったものと見ている。 2つ目の実験では、生産性が与える影響について検討された。参加者には、適度な(3.5時間)、または多くの(7時間)自由時間があり、その時間を使って生産的な活動(ワークアウト、趣味など)か、非生産的な活動(テレビを見るなど)をすることを想像してもらった。その結果、多くの自由時間を非生産的な活動に費やした群では、ウェルビーイングが低いことが判明した。しかし、自由時間が多くても生産的な活動を行った場合では、ウェルビーイングは適度な自由時間を持っていた群と同程度だった。 この結果について、今回の研究には関与していない、米ジョージ・メイソン大学ウェルビーイング促進センターのJames Maddux氏は、「生産的な自由時間が目的のない自由時間と異なるということは、理にかなっている」と話す。同氏は、「とはいえ、人にはさまざまな考え方がある。自由時間のために稼ぎを減らすことを望まない人もいれば、たとえ給料が減っても仕事を減らして自分や家族のための時間を増やしたいと考える人もいる。また、"生産的"な活動についても、普遍的な定義はない。読書に意義を見出す人もいれば、それを怠惰な活動と思う人もいる」と述べ、「この調査結果から、人がどの程度の自由時間を持つべきかについての処方箋を得ることはできない」と結論付けている。(HealthDay News 2021年9月9日).https://consumer.healthday.com/9-9-would-more-free….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
自分がしたいことをする「自由時間」は、多過ぎても少な過ぎても、人々のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)を低下させるとする研究結果が報告された。研究論文の筆頭著者である、米ペンシルベニア大学マーケティング分野のMarissa Sharif氏は、「少な過ぎる自由時間はストレスの元となり主観的ウェルビーイングの低下を招く。しかし、自由時間は多ければ良いというものでもないようだ」と話している。この研究の詳細は、「Journal of Personality and Social Psychology」に9月9日掲載された。 多忙過ぎて自由時間がないことに不満を抱く人は多い。しかし、自由時間の少なさは本当に有害なのだろうか。また、自由時間が増えることで幸福感は増すのだろうか。Sharif氏らは、こうした疑問を明らかにするために、2件の大規模データの分析と2つの実験を行った。 まず、米国人材マネジメント協会が実施している調査である、National Study of the Changing Workforce(NSCW)への1992〜2008年の参加者1万3,639人のデータが分析された。調査の質問項目の中には、「仕事がある平日の自由時間は平均してどれくらいですか」など、参加者の自由時間に関するものが含まれていた。主観的なウェルビーイングは、人生への満足度で評価された。分析の結果、自由時間の多さはウェルビーイングの向上と有意に関連することが明らかになったが、それはある時点までで、そこを超えると、自由時間の多さとウェルビーイングの向上の関連は消失した。 次にSharif氏らは、米国労働省労働統計局が実施している調査である、American Time Use Survey(ATUS)に2012〜2013年に参加した2万1,736人のデータを分析した。ATUSでは、参加者は調査前日24時間の具体的な行動とウェルビーイングについて調べられていた。このデータ解析でも、自由時間の増加に伴いウェルビーイングは向上したものの、1日の自由時間が2時間程度になるとその向上が横ばいとなり、5時間を超えると低下し始めることが示された。 そこでSharif氏らは、この現象をより詳しく調べるために、6,000人以上を対象に、オンラインで2つの実験を行った。1つ目の実験では、参加者に毎日、わずかな(15分)、適度の(3.5時間)、または多くの(7時間)自由時間があることを想像してもらい、どの程度、喜びや幸福感、満足度が得られるかを評価してもらった。その結果、自由時間がわずか、または多い群では、適度な群と比べてウェルビーイングが低いことが明らかになった。自由時間がわずかな群では、適度な群に比べて、ストレスを多く感じていた。一方、自由時間が多い群では適度な群に比べて、自分が生産的な活動をしていないと感じる人が多かった。Sharif氏らは、こうしたことがウェルビーイングの低さにつながったものと見ている。 2つ目の実験では、生産性が与える影響について検討された。参加者には、適度な(3.5時間)、または多くの(7時間)自由時間があり、その時間を使って生産的な活動(ワークアウト、趣味など)か、非生産的な活動(テレビを見るなど)をすることを想像してもらった。その結果、多くの自由時間を非生産的な活動に費やした群では、ウェルビーイングが低いことが判明した。しかし、自由時間が多くても生産的な活動を行った場合では、ウェルビーイングは適度な自由時間を持っていた群と同程度だった。 この結果について、今回の研究には関与していない、米ジョージ・メイソン大学ウェルビーイング促進センターのJames Maddux氏は、「生産的な自由時間が目的のない自由時間と異なるということは、理にかなっている」と話す。同氏は、「とはいえ、人にはさまざまな考え方がある。自由時間のために稼ぎを減らすことを望まない人もいれば、たとえ給料が減っても仕事を減らして自分や家族のための時間を増やしたいと考える人もいる。また、"生産的"な活動についても、普遍的な定義はない。読書に意義を見出す人もいれば、それを怠惰な活動と思う人もいる」と述べ、「この調査結果から、人がどの程度の自由時間を持つべきかについての処方箋を得ることはできない」と結論付けている。(HealthDay News 2021年9月9日).https://consumer.healthday.com/9-9-would-more-free….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.