MIND食と呼ばれる食事スタイルが、アルツハイマー病や加齢による認知機能低下を防ぐ可能性を示唆する研究結果が報告された。死後の病理解剖(剖検)でアルツハイマー病や加齢に伴う脳の病理的な変化が認められた人でも、MIND食を順守していた人の生前の認知機能は高く維持されていたという。MIND食とは、米ラッシュ大学医療センターの故Martha Clare Morris氏らが提唱した食事療法のこと。地中海沿岸諸国の伝統的食事スタイルで、種々の健康上のメリットに関するエビデンスがある地中海食と、高血圧予防のためのDASH食のハイブリッド版のような食事スタイル。今回発表された研究は、同医療センターのKlodian Dhana氏らがMIND食と認知機能との関連を検討した結果であり、その詳細が「Journal of Alzheimer's Disease」に9月14日掲載された。MIND食では食品全体を、脳の健康に良くない5種類の食品群、健康的な10種類の食品群、計15の食品群に分ける。不健康な食品群には、赤肉、バターやマーガリン、チーズ、スイーツ、揚げ物やファストフードなどが含まれる。反対に、全粒穀物、緑黄色野菜とその他の野菜を積極的に食べることが推奨される。また、1日おきに豆類を食べ、週に2回は家禽とベリーを食べ、少なくとも週に1回は魚を食べる。このような食事スタイルにより、アルツハイマー病の発症リスクが抑制される可能性が、これまでの研究から示唆されていた。Dhana氏によると、今回の研究でもMIND食を順守していた人は、人生の終盤に至っても認知機能関連の問題が起きていないことが多かったという。さらにそれだけでなく、「死後の剖検により一部の人々にはアミロイド斑や神経原線維変化といった、アルツハイマー病と診断されてもおかしくない病理的な変化が認められた。しかしそのような人でもMIND食を順守していた場合は終生、臨床的レベルの認知症を発症していなかった」とのことだ。同氏は、「この結果はMIND食が、アルツハイマー病に関連する脳の病理的な変化の有無にかかわらず、認知機能がより良好であることに関連することを示している」と述べている。Dhana氏らは、1997年に開始された米国シカゴ圏の地域住民を長期間追跡している「ラッシュ記憶加齢プロジェクト(Rush Memory and Aging Project;MAP研究)」のデータを解析に用いた。MAP研究の参加者は大半が白人であり、参加時には認知症でなかった人。生存中は毎年、認知機能の臨床評価を受け、死亡後は脳の剖検を受けることに同意していた。また、2004年以降は毎年、食物摂取頻度調査が行われ、144種類の食品について前年の摂取状況が把握されていた。この食品摂取状況の記録に基づき、MIND食の順守状況を表すMIND食スコアが算出された。解析対象者数は569人(死亡時の年齢90.8±6.1歳、男性29.5%)。年齢や性別、教育歴、ApoE4(アルツハイマー病発症リスクの高い遺伝子型)、摂取エネルギー量などの因子を調整後、生前のMIND食スコアが高いほど、亡くなる直前に受けていた認知機能の評価が高いという関連が認められた(β=0.119、P=0.003)。この関連は、剖検によりアルツハイマー病や加齢による病理学的変化が認められた場合においても、ほぼ同様だった。この結果からDhana氏は、「MIND食には脳保護作用があり、高齢者の認知機能の維持に寄与する可能性がある」と述べている。また、「食事スタイルの変化は良くも悪くも、認知機能と認知症のリスクに影響を与える可能性がある。それほど困難でない食事とライフスタイルの変更によって、加齢に伴う認知機能の低下を遅らせ、脳の健康にメリットがもたらされるのではないか」と付け加えている。(HealthDay News 2021年9月29日).https://consumer.healthday.com/b-9-27-mind-diet-ma….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
MIND食と呼ばれる食事スタイルが、アルツハイマー病や加齢による認知機能低下を防ぐ可能性を示唆する研究結果が報告された。死後の病理解剖(剖検)でアルツハイマー病や加齢に伴う脳の病理的な変化が認められた人でも、MIND食を順守していた人の生前の認知機能は高く維持されていたという。MIND食とは、米ラッシュ大学医療センターの故Martha Clare Morris氏らが提唱した食事療法のこと。地中海沿岸諸国の伝統的食事スタイルで、種々の健康上のメリットに関するエビデンスがある地中海食と、高血圧予防のためのDASH食のハイブリッド版のような食事スタイル。今回発表された研究は、同医療センターのKlodian Dhana氏らがMIND食と認知機能との関連を検討した結果であり、その詳細が「Journal of Alzheimer's Disease」に9月14日掲載された。MIND食では食品全体を、脳の健康に良くない5種類の食品群、健康的な10種類の食品群、計15の食品群に分ける。不健康な食品群には、赤肉、バターやマーガリン、チーズ、スイーツ、揚げ物やファストフードなどが含まれる。反対に、全粒穀物、緑黄色野菜とその他の野菜を積極的に食べることが推奨される。また、1日おきに豆類を食べ、週に2回は家禽とベリーを食べ、少なくとも週に1回は魚を食べる。このような食事スタイルにより、アルツハイマー病の発症リスクが抑制される可能性が、これまでの研究から示唆されていた。Dhana氏によると、今回の研究でもMIND食を順守していた人は、人生の終盤に至っても認知機能関連の問題が起きていないことが多かったという。さらにそれだけでなく、「死後の剖検により一部の人々にはアミロイド斑や神経原線維変化といった、アルツハイマー病と診断されてもおかしくない病理的な変化が認められた。しかしそのような人でもMIND食を順守していた場合は終生、臨床的レベルの認知症を発症していなかった」とのことだ。同氏は、「この結果はMIND食が、アルツハイマー病に関連する脳の病理的な変化の有無にかかわらず、認知機能がより良好であることに関連することを示している」と述べている。Dhana氏らは、1997年に開始された米国シカゴ圏の地域住民を長期間追跡している「ラッシュ記憶加齢プロジェクト(Rush Memory and Aging Project;MAP研究)」のデータを解析に用いた。MAP研究の参加者は大半が白人であり、参加時には認知症でなかった人。生存中は毎年、認知機能の臨床評価を受け、死亡後は脳の剖検を受けることに同意していた。また、2004年以降は毎年、食物摂取頻度調査が行われ、144種類の食品について前年の摂取状況が把握されていた。この食品摂取状況の記録に基づき、MIND食の順守状況を表すMIND食スコアが算出された。解析対象者数は569人(死亡時の年齢90.8±6.1歳、男性29.5%)。年齢や性別、教育歴、ApoE4(アルツハイマー病発症リスクの高い遺伝子型)、摂取エネルギー量などの因子を調整後、生前のMIND食スコアが高いほど、亡くなる直前に受けていた認知機能の評価が高いという関連が認められた(β=0.119、P=0.003)。この関連は、剖検によりアルツハイマー病や加齢による病理学的変化が認められた場合においても、ほぼ同様だった。この結果からDhana氏は、「MIND食には脳保護作用があり、高齢者の認知機能の維持に寄与する可能性がある」と述べている。また、「食事スタイルの変化は良くも悪くも、認知機能と認知症のリスクに影響を与える可能性がある。それほど困難でない食事とライフスタイルの変更によって、加齢に伴う認知機能の低下を遅らせ、脳の健康にメリットがもたらされるのではないか」と付け加えている。(HealthDay News 2021年9月29日).https://consumer.healthday.com/b-9-27-mind-diet-ma….Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock