動脈瘤の入口部分が広い(ワイドネック)脳動脈瘤に対する血管内治療で用いられる袋状の塞栓デバイスWoven EndoBridge(WEB;以下、WEBデバイス)は、血管の壁が部分的に膨隆して生じる脳の側壁動脈瘤(以下、側壁脳動脈瘤)に対しても安全かつ有効であるとする研究結果が報告された。米ルイジアナ州立大学神経外科学分野のNimer Adeeb氏らが実施したこの研究結果は、「Radiology」に4月19日掲載された。動脈瘤とは血管が部分的に膨らんでこぶ状になった病態を指す。動脈瘤が破裂すると、命に関わる可能性がある。脳内の動脈瘤は、血管が枝分かれする分岐部で好発するが、血管の側壁に発生することもある。脳動脈瘤に対しては一般的に、カテーテルを使って脳動脈瘤の中にコイルを詰めて動脈瘤内への血流を遮断するコイル塞栓術が用いられる。しかし、Adeeb氏らによると、この治療法をワイドネックの脳動脈瘤に対して用いると、コイルが血管の中に落ちてしまう危険性があるなどの欠点があるという。同氏は、「コイルが脱落すると、動脈瘤の閉塞が不完全になり、また、意図しない場所に血栓が形成されかねない。脱落を防ぐために、多くの場合、血管にステントが留置される。しかし、この方法では、術後の合併症のリスクが高まるため、追加で抗凝固療法が必要になる」と説明する。WEBデバイスは、こうした弱点を克服するために開発されたもので、ワイドネックの脳動脈瘤に対する使用については、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。しかし専門家によっては、側壁脳動脈瘤の治療に対してもオフラベルで同デバイスを用いている。そこでAdeeb氏らは、北米、南米、ヨーロッパの22の学術機関の2011年1月から2021年6月の間のデータベースを統合したWorldWideWEBコンソーシアムのデータを後ろ向きに分析し、分岐部脳動脈瘤および側壁脳動脈瘤に対するWEBデバイスを用いた治療の転帰を比較した。このデータでは、671人の患者で見つかった総計683個の脳動脈瘤(分岐部脳動脈瘤572個、側壁脳動脈瘤111個)に対してWEBデバイスを用いた治療が実施されていた。側壁脳動脈瘤患者と分岐部脳動脈瘤患者から、傾向スコアマッチングにより、年齢や動脈瘤の部位、治療歴などをマッチさせた脳動脈瘤のペアを91個ずつ抽出し、術後の転帰を比較した。その結果、十分な閉塞が確認された脳動脈瘤の割合(側壁脳動脈瘤91%対分岐部脳動脈瘤87%、以下同順)、再治療を要した動脈瘤の割合(8.8%対2.2%)、血栓塞栓性合併症の発生率(2.2%対6.6%)、出血性合併症の発生率(ともに3.3%)のいずれにおいても有意差は認められなかった。このような結果についてAdeeb氏は、「WEBデバイスを側壁脳動脈瘤に対して使用しても、分岐部脳動脈瘤に対して使用した場合に比べて、転帰に大きな違いはないことが明らかになった。この結果は、WEBデバイスが側壁動脈瘤に対しても安全かつ有効な治療法であることを示すものだ」と述べている。さらにAdeeb氏は、「この研究結果を受けて、WEBデバイスを特定の側壁脳動脈瘤に対して適応拡大することの是非を問う議論が活発化することを期待する」と話している。なお、脳動脈瘤財団によると、米国での未破裂脳動脈瘤患者の数は約650万人に上るという。(HealthDay News 2022年4月20日)https://consumer.healthday.com/aneurysm-2657143098.html.Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock