降圧薬は、ナーシングホーム入居者の命に関わる骨折のリスクを2倍以上に高める可能性があることを、新たな研究が警告している。このリスク増加は、降圧薬がバランス感覚を阻害することに起因しており、特に、起立時に一時的に血圧が低下して脳に酸素が供給されなくなる際に危険であると研究グループは説明している。このリスクは、他の薬物との相互作用や、ナーシングホーム入居者にバランス障害がある場合にはいっそう増大するという。米Rutgers HOPE（Center for Health Outcomes, Policy and Economics）のChintan Dave氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に4月22日掲載された。 Dave氏は、「ナーシングホーム入居者の骨折は、入居者を負のスパイラルに巻き込むことが多い」と指摘する。「大腿骨近位部を骨折した人の約40％は、その後1年以内に死亡する。ナーシングホーム入居者全体の70％が使用している降圧薬が骨折リスクを2倍以上にするというのは、非常に憂慮すべきことだ」とラトガース大学のニュースリリースで話している。 研究グループによると、米国では約250万人がナーシングホームで生活している。毎年、そのような施設入居者の最大で50％が転倒を経験し、転倒した人の最大で25％が重傷を負う。今回の研究では、2006年1月1日から2019年10月31日の間に退役軍人健康保健局の長期療養型ナーシングホームに入居していた高齢患者のデータを用いて、降圧薬の使用と骨折リスクとの関連が検討された。主要評価項目は、降圧薬による治療開始（降圧薬治療の増強、または新規に治療開始）後30日以内に発生した、上腕骨、大腿骨近位部、骨盤、橈骨、尺骨のいずれかの骨の非外傷性骨折であった。 降圧薬による治療を開始した1万2,942人（平均年齢78.2歳）と、これらの入居者と傾向スコアをマッチさせた降圧薬を使用していない対照5万1,768人（平均年齢78.2歳）を対象に解析が行われた。その結果、100人年当たりの骨折の発生率は、降圧薬使用群で5.4件であったのに対し対照群では2.2件であることが明らかになった（降圧薬使用群での骨折の調整ハザード比2.42、95％信頼区間1.43〜4.08）。このリスクは、降圧薬使用者が、認知症（ハザード比3.28）、収縮期血圧が140mmHg以上（同3.12）、拡張期血圧が80mmHg以上（同4.41）、直近で降圧薬を使用していなかった（同4.77）場合には、大幅に上昇していた。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「投薬量を減らし、より良いサポートを提供することが、高齢者の健康を守るのに役立つ可能性がある」と述べている。また、Dave氏は、「介護者は、リスクに関する正確なデータを知っていなければ、リスクと恩恵の適切なバランスを取ることができない。この研究が、患者により良いサービスを提供するのに役立つ情報となることを願っている」と話している。（HealthDay News 2024年5月20日） https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/blood-pressure-meds-raise-fracture-risks-for-those-in-nursing-homes Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
降圧薬は、ナーシングホーム入居者の命に関わる骨折のリスクを2倍以上に高める可能性があることを、新たな研究が警告している。このリスク増加は、降圧薬がバランス感覚を阻害することに起因しており、特に、起立時に一時的に血圧が低下して脳に酸素が供給されなくなる際に危険であると研究グループは説明している。このリスクは、他の薬物との相互作用や、ナーシングホーム入居者にバランス障害がある場合にはいっそう増大するという。米Rutgers HOPE（Center for Health Outcomes, Policy and Economics）のChintan Dave氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に4月22日掲載された。 Dave氏は、「ナーシングホーム入居者の骨折は、入居者を負のスパイラルに巻き込むことが多い」と指摘する。「大腿骨近位部を骨折した人の約40％は、その後1年以内に死亡する。ナーシングホーム入居者全体の70％が使用している降圧薬が骨折リスクを2倍以上にするというのは、非常に憂慮すべきことだ」とラトガース大学のニュースリリースで話している。 研究グループによると、米国では約250万人がナーシングホームで生活している。毎年、そのような施設入居者の最大で50％が転倒を経験し、転倒した人の最大で25％が重傷を負う。今回の研究では、2006年1月1日から2019年10月31日の間に退役軍人健康保健局の長期療養型ナーシングホームに入居していた高齢患者のデータを用いて、降圧薬の使用と骨折リスクとの関連が検討された。主要評価項目は、降圧薬による治療開始（降圧薬治療の増強、または新規に治療開始）後30日以内に発生した、上腕骨、大腿骨近位部、骨盤、橈骨、尺骨のいずれかの骨の非外傷性骨折であった。 降圧薬による治療を開始した1万2,942人（平均年齢78.2歳）と、これらの入居者と傾向スコアをマッチさせた降圧薬を使用していない対照5万1,768人（平均年齢78.2歳）を対象に解析が行われた。その結果、100人年当たりの骨折の発生率は、降圧薬使用群で5.4件であったのに対し対照群では2.2件であることが明らかになった（降圧薬使用群での骨折の調整ハザード比2.42、95％信頼区間1.43〜4.08）。このリスクは、降圧薬使用者が、認知症（ハザード比3.28）、収縮期血圧が140mmHg以上（同3.12）、拡張期血圧が80mmHg以上（同4.41）、直近で降圧薬を使用していなかった（同4.77）場合には、大幅に上昇していた。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「投薬量を減らし、より良いサポートを提供することが、高齢者の健康を守るのに役立つ可能性がある」と述べている。また、Dave氏は、「介護者は、リスクに関する正確なデータを知っていなければ、リスクと恩恵の適切なバランスを取ることができない。この研究が、患者により良いサービスを提供するのに役立つ情報となることを願っている」と話している。（HealthDay News 2024年5月20日） https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/blood-pressure-meds-raise-fracture-risks-for-those-in-nursing-homes Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
