局所進行食道がん患者に対しては、がん摘出術の前後に化学療法を実施すべきことが、新たな研究で示唆された。ビーレフェルト大学(ドイツ)のJens Hoeppner氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024、5月31日~6月4日、米シカゴ)で発表された。 米国がん協会(ACS)によると、2024年には2万2,000人以上が食道がんの診断を受け、1万6,000人以上が食道がんにより死亡すると予測されている。食道がんでの治療では、いつ化学療法を行うべきかがこれまで議論の的であった。本研究には関与していない、米ボストン医療センターのJennifer Tseng氏は、「手術によるがんの切除が可能な患者に対して、術前補助化学療法と、手術の前後に補助化学療法を行うサンドイッチ療法のどちらがより良い標準治療であるかについては、かなりの意見の相違がある」と説明している。 今回の臨床試験でHoeppner氏らは、手術によるがんの切除が可能な局所進行食道がん患者438人(平均年齢63歳、男性89%)を対象に、手術の前後に化学療法(FLOT療法)を行うことで、術前にのみ化学療法(CROSS療法)を行う場合と比べて患者の全生存期間(OS)が延長するのかどうかを検討した。対象患者のうち、221人はFLOT療法群、217人はCROSS療法群にランダムに割り付けられた。対象患者のうち、403人が治療を開始し、371人(FLOT療法群191人、CROSS療法群180人)が手術を受けた。 手術後90日以内に4.3%が死亡し(FLOT療法群3.2%、CROSS療法群5.6%)、中央値55カ月間の追跡期間中に218人が死亡した(FLOT療法群97人、CROSS療法群121人)。OSの中央値は、FLOT療法群で66カ月、CROSS療法群で37カ月であった。手術から3年時点での死亡リスクはFLOT療法群の方がCROSS療法群よりも30%低く、3年OS率は前者で57%、後者で51%であった。 Hoeppner氏は、「長期的にがんが治癒する可能性を最適化するために」手術の前後での化学療法の実施を推奨すべきであることを示す結果だとの見方を示している。またTseng氏も、「ヨーロッパで行われたこのランダム化比較試験は、試験に登録された患者と同様の病状を抱える患者に対して、手術の前後での化学療法の実施により、より良い転帰が期待できるという答えを示した」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(Healthday News 2024年6月4日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/chemo-before-after-surgery-could-help-those-battling-esophageal-cancer Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
局所進行食道がん患者に対しては、がん摘出術の前後に化学療法を実施すべきことが、新たな研究で示唆された。ビーレフェルト大学(ドイツ)のJens Hoeppner氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024、5月31日~6月4日、米シカゴ)で発表された。 米国がん協会(ACS)によると、2024年には2万2,000人以上が食道がんの診断を受け、1万6,000人以上が食道がんにより死亡すると予測されている。食道がんでの治療では、いつ化学療法を行うべきかがこれまで議論の的であった。本研究には関与していない、米ボストン医療センターのJennifer Tseng氏は、「手術によるがんの切除が可能な患者に対して、術前補助化学療法と、手術の前後に補助化学療法を行うサンドイッチ療法のどちらがより良い標準治療であるかについては、かなりの意見の相違がある」と説明している。 今回の臨床試験でHoeppner氏らは、手術によるがんの切除が可能な局所進行食道がん患者438人(平均年齢63歳、男性89%)を対象に、手術の前後に化学療法(FLOT療法)を行うことで、術前にのみ化学療法(CROSS療法)を行う場合と比べて患者の全生存期間(OS)が延長するのかどうかを検討した。対象患者のうち、221人はFLOT療法群、217人はCROSS療法群にランダムに割り付けられた。対象患者のうち、403人が治療を開始し、371人(FLOT療法群191人、CROSS療法群180人)が手術を受けた。 手術後90日以内に4.3%が死亡し(FLOT療法群3.2%、CROSS療法群5.6%)、中央値55カ月間の追跡期間中に218人が死亡した(FLOT療法群97人、CROSS療法群121人)。OSの中央値は、FLOT療法群で66カ月、CROSS療法群で37カ月であった。手術から3年時点での死亡リスクはFLOT療法群の方がCROSS療法群よりも30%低く、3年OS率は前者で57%、後者で51%であった。 Hoeppner氏は、「長期的にがんが治癒する可能性を最適化するために」手術の前後での化学療法の実施を推奨すべきであることを示す結果だとの見方を示している。またTseng氏も、「ヨーロッパで行われたこのランダム化比較試験は、試験に登録された患者と同様の病状を抱える患者に対して、手術の前後での化学療法の実施により、より良い転帰が期待できるという答えを示した」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(Healthday News 2024年6月4日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/chemo-before-after-surgery-could-help-those-battling-esophageal-cancer Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock