OTC医薬品の点鼻薬が、公衆衛生の大きな脅威である薬剤耐性に対する強力な武器になるかもしれない。1万4,000人弱の成人を対象にしたランダム化比較試験から、広く用いられている点鼻薬が上気道感染症の罹病期間を短縮し、抗菌薬の必要性を減らすのに役立つ可能性のあることが示された。英サウサンプトン大学心理学および行動医学分野のAdam Geraghty氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Respiratory Medicine」に7月11日掲載された。 抗菌薬の使い過ぎや誤用によって引き起こされる薬剤耐性は、細菌感染症の治療を困難にしている。研究グループは今回の研究について、点鼻薬を使って鼻や喉からウイルスを洗い流したり、運動やストレスマネジメントによって免疫機能を高めたりすることで、呼吸器感染症の頻度や重症度を減らすことができるという最近のエビデンスに興味を持ち、実施したものだと説明している。 このことを確かめるために、Geraghty氏らは英国の332の診療所から集めた18歳以上の患者1万3,799人を対象にランダム化比較試験を実施した。これらの患者は全員が、呼吸器感染症に罹患すると転帰が不良となり得る併存疾患かリスク因子を1つ以上持っていた。対象者は、通常のケア(疾患の管理に関する簡単なアドバイス)を受ける群、ジェルベースの点鼻薬を使用する群(感染症の兆候が現れた際、または感染者に曝露した可能性がある際に、それぞれの鼻腔内に2回ずつスプレーする、1日最大6回まで)、生理食塩水のスプレーを使用する群(ジェルベースの点鼻薬と同じ条件)、簡単な行動介入(運動とストレスマネジメントを促すウェブサイトへのアクセスを提供)を受ける群に、1対1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 データのそろった1万1,612人を対象に解析した結果、呼吸器感染症の平均罹病期間は、通常ケア群では8.2日であったのに対し、点鼻薬群では6.5日(発生率比0.82、95%信頼区間0.76〜0.90、P<0.0001)、生理食塩水群では6.4日(同0.81、0.74〜0.88、P<0.0001)であり、点鼻薬群と生理食塩水群で有意に短縮することが明らかになった。一方、行動介入群での平均罹病期間は7.4日(同0.97、0.89〜1.06、P=0.46)であり、通常ケア群の罹病期間との間に有意な差は認められなかった。また、仕事と通常の活動の損失日数についても、点鼻薬群と生理食塩水群では通常ケア群よりも20〜30%程度少なかった。 こうした結果を受けて、論文の筆頭著者であるサウサンプトン大学プライマリケア研究分野教授のPaul Little氏は、「この研究により、点鼻薬は呼吸器感染症の罹病期間と重症度、および日常的な活動への影響の軽減に効果的であることが明らかになった」と述べている。 またGeraghty氏は、「点鼻薬は、もし広く使われるようになるなら、抗菌薬の使用とそれに伴う薬剤耐性菌の出現を減らし、呼吸器系ウイルスが患者に及ぼす影響を軽減するという、重要な役割を果たす可能性がある」との見方を示している。(HealthDay News 2024年7月15日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/could-otc-nasal-sprays-ease-colds-flu-and-cut-antibiotic-use Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
OTC医薬品の点鼻薬が、公衆衛生の大きな脅威である薬剤耐性に対する強力な武器になるかもしれない。1万4,000人弱の成人を対象にしたランダム化比較試験から、広く用いられている点鼻薬が上気道感染症の罹病期間を短縮し、抗菌薬の必要性を減らすのに役立つ可能性のあることが示された。英サウサンプトン大学心理学および行動医学分野のAdam Geraghty氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Respiratory Medicine」に7月11日掲載された。 抗菌薬の使い過ぎや誤用によって引き起こされる薬剤耐性は、細菌感染症の治療を困難にしている。研究グループは今回の研究について、点鼻薬を使って鼻や喉からウイルスを洗い流したり、運動やストレスマネジメントによって免疫機能を高めたりすることで、呼吸器感染症の頻度や重症度を減らすことができるという最近のエビデンスに興味を持ち、実施したものだと説明している。 このことを確かめるために、Geraghty氏らは英国の332の診療所から集めた18歳以上の患者1万3,799人を対象にランダム化比較試験を実施した。これらの患者は全員が、呼吸器感染症に罹患すると転帰が不良となり得る併存疾患かリスク因子を1つ以上持っていた。対象者は、通常のケア(疾患の管理に関する簡単なアドバイス)を受ける群、ジェルベースの点鼻薬を使用する群(感染症の兆候が現れた際、または感染者に曝露した可能性がある際に、それぞれの鼻腔内に2回ずつスプレーする、1日最大6回まで)、生理食塩水のスプレーを使用する群(ジェルベースの点鼻薬と同じ条件)、簡単な行動介入(運動とストレスマネジメントを促すウェブサイトへのアクセスを提供)を受ける群に、1対1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 データのそろった1万1,612人を対象に解析した結果、呼吸器感染症の平均罹病期間は、通常ケア群では8.2日であったのに対し、点鼻薬群では6.5日(発生率比0.82、95%信頼区間0.76〜0.90、P<0.0001)、生理食塩水群では6.4日(同0.81、0.74〜0.88、P<0.0001)であり、点鼻薬群と生理食塩水群で有意に短縮することが明らかになった。一方、行動介入群での平均罹病期間は7.4日(同0.97、0.89〜1.06、P=0.46)であり、通常ケア群の罹病期間との間に有意な差は認められなかった。また、仕事と通常の活動の損失日数についても、点鼻薬群と生理食塩水群では通常ケア群よりも20〜30%程度少なかった。 こうした結果を受けて、論文の筆頭著者であるサウサンプトン大学プライマリケア研究分野教授のPaul Little氏は、「この研究により、点鼻薬は呼吸器感染症の罹病期間と重症度、および日常的な活動への影響の軽減に効果的であることが明らかになった」と述べている。 またGeraghty氏は、「点鼻薬は、もし広く使われるようになるなら、抗菌薬の使用とそれに伴う薬剤耐性菌の出現を減らし、呼吸器系ウイルスが患者に及ぼす影響を軽減するという、重要な役割を果たす可能性がある」との見方を示している。(HealthDay News 2024年7月15日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/could-otc-nasal-sprays-ease-colds-flu-and-cut-antibiotic-use Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock