オリンピックはしばしば、国際的なスポーツの栄光を手にする一生に一度の貴重な機会だと言われるが、このことは、とりわけ陸上競技選手に当てはまるようだ。走る・跳ぶ・投げる能力を競う陸上選手のパフォーマンスのピーク年齢は27歳であることが、新たな研究により明らかになった。27歳を超えると、それ以降にピークを迎える可能性は44%になり、この数字は1年ごとに低下していくことも示されたという。ウォータールー大学(カナダ)データサイエンス分野のDavid Awosoga氏と同大学経済学分野のMatthew Chow氏によるこの研究の詳細は、「Significance」7月号に掲載された。 Awosoga氏は、「オリンピックは4年に1度しか開催されないため、陸上選手は、自分のパフォーマンスがピークを迎える時期に合わせて、オリンピック出場権を獲得する確率を最大化するためのトレーニング方法を慎重に検討するべきだ」と述べている。 Awosoga氏らは、World Athleticsより、1996年のアトランタオリンピックから2020年の東京オリンピックまでの7大会分の陸上競技データを入手し、各選手のキャリアアップに関するデータと組み合わせて分析した。キャリアアップとは、アスリートの競技人生における年ごとのトップパフォーマンスと定義した。分析の際には、性別、国籍、イベントの種類、オリンピックイヤーであるか否か、およびトレーニング年齢(アスリートがWorld Athletics公認の大会に参加し、記録を残した年数)を考慮した。 なお、今回の研究で陸上選手に焦点を当てた理由についてAwosoga氏は、「サッカーやテニスのような他のオリンピック競技は、オリンピック期間以外のときにも注目される大会があるが、陸上選手にとってはオリンピックが最大の舞台だからだ」と説明している。 解析の結果、過去30年間を通してオリンピックの陸上選手の平均年齢は、男女ともに一貫して26.9歳であることが明らかになった(年齢中央値は、女性27歳、男性26歳)。興味深いことに、陸上選手のパフォーマンスがピークを迎える年齢の中央値も27歳であった。また、27歳を超えると、それ以降にピークを迎える可能性は44%に過ぎず、その可能性は年を追うごとに低下していくことが示された。 その一方で、この研究では、アスリートのパフォーマンスのピークに影響を与える因子は年齢だけではないことも示されたとChow氏は説明する。同氏によると、アスリートは年齢に関係なく、次のオリンピックの出場権を争っている年により良いパフォーマンスを発揮する傾向があることが示されたという。 例えば、オリンピックに5回出場した、西インド諸島のセントクリストファー・ネイビスの選手であるキム・コリンズ(Kim Collins)は、40歳のときに、2016年リオデジャネイロオリンピックの出場権をかけた100m走で自己ベストの9秒93を記録した。Chow氏は、「本当に興味深かったことは、オリンピックイヤーであることが、アスリートのパフォーマンスの予測にも役立つことが分かったことだ」と話す。 Awosoga氏らは、彼らの分析が、アスリートが試合でベストパフォーマンスを発揮するのに役立つことを期待している。同氏は、「オリンピックイヤーや、自分の遺伝子、国籍を変えることはできないが、これらの生物学的・外的要因にうまく沿うようにトレーニング方法を修正することはできるだろう」と述べている。 一方Chow氏は、「この結果は、オリンピックを目指すことがいかに大変なことであるかを示すものでもある」と話す。同氏は、「陸上選手の競技を見ているとき、われわれは、身体能力のピークに達しているだけでなく、非常に幸運なタイミングの恩恵を受けているという、統計学的な異常さを目の当たりにしているのだ」と述べている。(HealthDay News 2024年7月25日) https://www.healthday.com/health-news/exercise-and-fitness/is-there-a-peak-performance-age-for-olympians Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
オリンピックはしばしば、国際的なスポーツの栄光を手にする一生に一度の貴重な機会だと言われるが、このことは、とりわけ陸上競技選手に当てはまるようだ。走る・跳ぶ・投げる能力を競う陸上選手のパフォーマンスのピーク年齢は27歳であることが、新たな研究により明らかになった。27歳を超えると、それ以降にピークを迎える可能性は44%になり、この数字は1年ごとに低下していくことも示されたという。ウォータールー大学(カナダ)データサイエンス分野のDavid Awosoga氏と同大学経済学分野のMatthew Chow氏によるこの研究の詳細は、「Significance」7月号に掲載された。 Awosoga氏は、「オリンピックは4年に1度しか開催されないため、陸上選手は、自分のパフォーマンスがピークを迎える時期に合わせて、オリンピック出場権を獲得する確率を最大化するためのトレーニング方法を慎重に検討するべきだ」と述べている。 Awosoga氏らは、World Athleticsより、1996年のアトランタオリンピックから2020年の東京オリンピックまでの7大会分の陸上競技データを入手し、各選手のキャリアアップに関するデータと組み合わせて分析した。キャリアアップとは、アスリートの競技人生における年ごとのトップパフォーマンスと定義した。分析の際には、性別、国籍、イベントの種類、オリンピックイヤーであるか否か、およびトレーニング年齢(アスリートがWorld Athletics公認の大会に参加し、記録を残した年数)を考慮した。 なお、今回の研究で陸上選手に焦点を当てた理由についてAwosoga氏は、「サッカーやテニスのような他のオリンピック競技は、オリンピック期間以外のときにも注目される大会があるが、陸上選手にとってはオリンピックが最大の舞台だからだ」と説明している。 解析の結果、過去30年間を通してオリンピックの陸上選手の平均年齢は、男女ともに一貫して26.9歳であることが明らかになった(年齢中央値は、女性27歳、男性26歳)。興味深いことに、陸上選手のパフォーマンスがピークを迎える年齢の中央値も27歳であった。また、27歳を超えると、それ以降にピークを迎える可能性は44%に過ぎず、その可能性は年を追うごとに低下していくことが示された。 その一方で、この研究では、アスリートのパフォーマンスのピークに影響を与える因子は年齢だけではないことも示されたとChow氏は説明する。同氏によると、アスリートは年齢に関係なく、次のオリンピックの出場権を争っている年により良いパフォーマンスを発揮する傾向があることが示されたという。 例えば、オリンピックに5回出場した、西インド諸島のセントクリストファー・ネイビスの選手であるキム・コリンズ(Kim Collins)は、40歳のときに、2016年リオデジャネイロオリンピックの出場権をかけた100m走で自己ベストの9秒93を記録した。Chow氏は、「本当に興味深かったことは、オリンピックイヤーであることが、アスリートのパフォーマンスの予測にも役立つことが分かったことだ」と話す。 Awosoga氏らは、彼らの分析が、アスリートが試合でベストパフォーマンスを発揮するのに役立つことを期待している。同氏は、「オリンピックイヤーや、自分の遺伝子、国籍を変えることはできないが、これらの生物学的・外的要因にうまく沿うようにトレーニング方法を修正することはできるだろう」と述べている。 一方Chow氏は、「この結果は、オリンピックを目指すことがいかに大変なことであるかを示すものでもある」と話す。同氏は、「陸上選手の競技を見ているとき、われわれは、身体能力のピークに達しているだけでなく、非常に幸運なタイミングの恩恵を受けているという、統計学的な異常さを目の当たりにしているのだ」と述べている。(HealthDay News 2024年7月25日) https://www.healthday.com/health-news/exercise-and-fitness/is-there-a-peak-performance-age-for-olympians Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock