医師は、高血圧患者に対する治療の一部として、野菜と果物の多い食生活を推奨すると良いようだ。毎日の食事に2〜4カップの野菜と果物を加えた人は、血圧が下がり、心血管疾患リスクが軽減し、腎臓の健康も改善したことが、新たな臨床試験で示された。米テキサス大学オースティン校医学部人口衛生学准教授のManinder Kahlon氏らによるこの研究の詳細は、「The American Journal of Medicine」に8月5日掲載された。 論文の上席著者である、同大学内科学教授のDonald Wesson氏の説明によると、今回の臨床試験は、動物性タンパク質の多い食事は血液中の酸の濃度を高くする傾向があり、血液から酸を排出するために腎臓が過剰に働くため、腎臓の健康が損なわれることを発見した過去の研究結果に基づいているという。同氏は、「われわれは、野菜や果物が腎臓と心臓の両方に良い効果をもたらすのは、食事中の酸の量を減らし、腎臓が体外に排出する酸の量を減らすためだとの仮説を立てた」と話す。 臨床試験は、尿中のアルブミン排泄量が非常に多い(マクロアルブミン尿)高血圧患者153人を対象に実施された。マクロアルブミン尿が認められる患者は慢性腎臓病に罹患しており、時間の経過とともに腎臓病が悪化するリスクが高く、心血管疾患の発症リスクも高い。対象者は、通常の食事に2〜4カップのアルカリ性の果物と野菜を加えて摂取する群(果物・野菜群)、1日に1錠650mgの経口NaHCO3(重炭酸ナトリウム)4~5錠を2回に分けて摂取する群(NaHCO3群)、通常の食生活を送る群(通常食群)にランダムに割り付けられ、5年間追跡された。 その結果、果物・野菜群とNaHCO3群では通常食群に比べて、5年間での慢性腎臓病の進行速度が遅いことが明らかになった(5年間での推算糸球体濾過量の年間平均減少量は、同順で、−1.08mL/分/1.73m2、−1.17mL/分/1.73m2、−1.94mL/分/1.73m2)。また、果物・野菜群では、血圧(収縮期血圧)が低下し、心血管疾患リスクが軽減したことも示された。さらに、果物・野菜群では他の2群に比べて、5年間での降圧薬やスタチンの用量も有意に低く抑えられていた。 Kahlon氏は、「この結果は、果物と野菜の摂取を高血圧患者における基本的な治療にすべきだというわれわれの推奨を裏付けるものだ。本試験では、果物と野菜の摂取により、目標とした腎臓の健康、血圧の低下、心血管疾患リスクの軽減の3つ全てを達成し、その上、薬の投与量を減らすこともできたからだ」と話している。研究グループは、「このことは、医師は高血圧患者に対し、降圧薬による治療を開始する前に患者の野菜と果物の摂取量を増加させることから着手すべきだということを意味する」としている。 Wesson氏は、「慢性疾患管理のための食事介入は、患者が実行することが難しいため推奨されない場合が多く、実行されることはさらにまれだ。それでも、食事介入には効果が期待できる。今回の例では、腎臓と心臓に対する保護作用を確認できた」と話す。 その上でWesson氏は、「われわれは、慢性疾患管理のための食事介入を患者管理の一環として組み込まれるよう、もっと努力する必要があり、腎臓病や心血管疾患のリスクが高い人にとって健康的な食事がより身近なものとなるようにしなければならない」と述べている。(HealthDay News 2024年8月6日) https://www.healthday.com/health-news/nutrition/study-shows-how-fruits-veggies-lower-blood-pressure-heart-risks Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
医師は、高血圧患者に対する治療の一部として、野菜と果物の多い食生活を推奨すると良いようだ。毎日の食事に2〜4カップの野菜と果物を加えた人は、血圧が下がり、心血管疾患リスクが軽減し、腎臓の健康も改善したことが、新たな臨床試験で示された。米テキサス大学オースティン校医学部人口衛生学准教授のManinder Kahlon氏らによるこの研究の詳細は、「The American Journal of Medicine」に8月5日掲載された。 論文の上席著者である、同大学内科学教授のDonald Wesson氏の説明によると、今回の臨床試験は、動物性タンパク質の多い食事は血液中の酸の濃度を高くする傾向があり、血液から酸を排出するために腎臓が過剰に働くため、腎臓の健康が損なわれることを発見した過去の研究結果に基づいているという。同氏は、「われわれは、野菜や果物が腎臓と心臓の両方に良い効果をもたらすのは、食事中の酸の量を減らし、腎臓が体外に排出する酸の量を減らすためだとの仮説を立てた」と話す。 臨床試験は、尿中のアルブミン排泄量が非常に多い(マクロアルブミン尿)高血圧患者153人を対象に実施された。マクロアルブミン尿が認められる患者は慢性腎臓病に罹患しており、時間の経過とともに腎臓病が悪化するリスクが高く、心血管疾患の発症リスクも高い。対象者は、通常の食事に2〜4カップのアルカリ性の果物と野菜を加えて摂取する群(果物・野菜群)、1日に1錠650mgの経口NaHCO3(重炭酸ナトリウム)4~5錠を2回に分けて摂取する群(NaHCO3群)、通常の食生活を送る群(通常食群)にランダムに割り付けられ、5年間追跡された。 その結果、果物・野菜群とNaHCO3群では通常食群に比べて、5年間での慢性腎臓病の進行速度が遅いことが明らかになった(5年間での推算糸球体濾過量の年間平均減少量は、同順で、−1.08mL/分/1.73m2、−1.17mL/分/1.73m2、−1.94mL/分/1.73m2)。また、果物・野菜群では、血圧(収縮期血圧)が低下し、心血管疾患リスクが軽減したことも示された。さらに、果物・野菜群では他の2群に比べて、5年間での降圧薬やスタチンの用量も有意に低く抑えられていた。 Kahlon氏は、「この結果は、果物と野菜の摂取を高血圧患者における基本的な治療にすべきだというわれわれの推奨を裏付けるものだ。本試験では、果物と野菜の摂取により、目標とした腎臓の健康、血圧の低下、心血管疾患リスクの軽減の3つ全てを達成し、その上、薬の投与量を減らすこともできたからだ」と話している。研究グループは、「このことは、医師は高血圧患者に対し、降圧薬による治療を開始する前に患者の野菜と果物の摂取量を増加させることから着手すべきだということを意味する」としている。 Wesson氏は、「慢性疾患管理のための食事介入は、患者が実行することが難しいため推奨されない場合が多く、実行されることはさらにまれだ。それでも、食事介入には効果が期待できる。今回の例では、腎臓と心臓に対する保護作用を確認できた」と話す。 その上でWesson氏は、「われわれは、慢性疾患管理のための食事介入を患者管理の一環として組み込まれるよう、もっと努力する必要があり、腎臓病や心血管疾患のリスクが高い人にとって健康的な食事がより身近なものとなるようにしなければならない」と述べている。(HealthDay News 2024年8月6日) https://www.healthday.com/health-news/nutrition/study-shows-how-fruits-veggies-lower-blood-pressure-heart-risks Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock