点鼻薬として、生理食塩水よりも塩化ナトリウム濃度が高い高張食塩水を使うことで、子どもの風邪(上気道感染症)の罹患期間を2日短縮できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。上気道感染症の平均罹患期間は、通常のケアを受けた子どもで8日間だったのに対し、高張食塩水の鼻腔内滴下を受けた子どもでは6日間だったという。英エディンバラ大学小児呼吸器科教授のSteve Cunningham氏らによるこの研究の詳細は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024、9月7〜11日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 Cunningham氏は、「子どもは年間、最大10~12回、一般に風邪と呼ばれている上気道感染症に罹患する。子どもの上気道感染症は、本人と家族に大きな影響を与える」と話す。同氏によると、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどを有効成分とする市販薬は、上気道感染症の症状緩和には役立つが、現時点では、罹患期間そのものを短縮する治療法は存在しないという。 今回の研究では、6歳以下の子どもを対象に、高張食塩水(濃度2.6%)の鼻腔内滴下により上気道感染症の罹患期間が短縮するのかどうかを、通常のケアとの比較で検討した。対象者は、点鼻薬として高張食塩水を使う群と通常のケアを受ける群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。高張食塩水の効果についてCunningham氏は、「塩は、ナトリウムと塩化物からできている。鼻と気管の内側を覆う細胞は、塩化物を利用して次亜塩素酸を生成し、それをウイルス感染から身を守るために使う」と説明している。食塩水群に割り付けられた子どもの親は、子どもが回復するまで、左右の鼻腔に高張食塩水を3滴ずつ、1日に4回以上滴下するように指示された。治療の遵守度や副作用、症状については、親による日々の記録で確認された。 最終的に、407人がいずれかの介入に割り付けられ、うち301人(高張食塩水群150人、通常ケア群151人)が上気道感染症を発症した。高張食塩水群は中央値で5日間、1日に中央値で3回、高張食塩水の鼻腔内滴下を受けていた。 介入の結果、上気道感染症の罹患期間の中央値は、高張食塩水群で6日、通常ケア群で8日であり、前者で後者よりも2日短縮することが明らかになった。また、高張食塩水群では家族に上気道感染症をうつした者の割合が通常ケア群よりも低かった(高張食塩水群41%、通常ケア群58%)。高張食塩水の鼻腔内への滴下の副作用としては、くしゃみ、鼻水、痛みがまれに報告されたが、いずれも軽度であった。重篤な有害事象は報告されなかった。 研究グループによると、高張食塩水群の親の82%は、「高張食塩水の鼻腔内への滴下は子どもの回復を早めるのに役立った」と答え、81%は「今後もこの治療法を使うつもりだ」と答えたという。 Cunningham氏は、「子どもの上気道感染症の罹患期間が短縮されることで、家庭内での上気道感染症罹患者も減る。このことが、家族の迅速な回復と、学校や仕事などの通常の活動への復帰にどれほどの影響を与えるかは明らかだ」と指摘する。さらに同氏は、「われわれの研究は、親が安全に高張食塩水を作って子どもに投与でき、それにより子どもの風邪をある程度コントロールできることも示した」と付け加えている。 研究グループは次の研究で、高張食塩水の鼻腔内滴下が風邪により引き起こされる喘鳴に及ぼす影響を調べる予定だという。この点に関連する初期の研究では、高張食塩水の滴下を受けた子どもでは受けていない子どもに比べて喘鳴の発生が大幅に減少したことが示されているという(5%対19%)。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2024年9月6日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/saltwater-drops-in-nose-could-shorten-kids-colds Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
点鼻薬として、生理食塩水よりも塩化ナトリウム濃度が高い高張食塩水を使うことで、子どもの風邪(上気道感染症)の罹患期間を2日短縮できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。上気道感染症の平均罹患期間は、通常のケアを受けた子どもで8日間だったのに対し、高張食塩水の鼻腔内滴下を受けた子どもでは6日間だったという。英エディンバラ大学小児呼吸器科教授のSteve Cunningham氏らによるこの研究の詳細は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024、9月7〜11日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 Cunningham氏は、「子どもは年間、最大10~12回、一般に風邪と呼ばれている上気道感染症に罹患する。子どもの上気道感染症は、本人と家族に大きな影響を与える」と話す。同氏によると、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどを有効成分とする市販薬は、上気道感染症の症状緩和には役立つが、現時点では、罹患期間そのものを短縮する治療法は存在しないという。 今回の研究では、6歳以下の子どもを対象に、高張食塩水(濃度2.6%)の鼻腔内滴下により上気道感染症の罹患期間が短縮するのかどうかを、通常のケアとの比較で検討した。対象者は、点鼻薬として高張食塩水を使う群と通常のケアを受ける群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。高張食塩水の効果についてCunningham氏は、「塩は、ナトリウムと塩化物からできている。鼻と気管の内側を覆う細胞は、塩化物を利用して次亜塩素酸を生成し、それをウイルス感染から身を守るために使う」と説明している。食塩水群に割り付けられた子どもの親は、子どもが回復するまで、左右の鼻腔に高張食塩水を3滴ずつ、1日に4回以上滴下するように指示された。治療の遵守度や副作用、症状については、親による日々の記録で確認された。 最終的に、407人がいずれかの介入に割り付けられ、うち301人(高張食塩水群150人、通常ケア群151人)が上気道感染症を発症した。高張食塩水群は中央値で5日間、1日に中央値で3回、高張食塩水の鼻腔内滴下を受けていた。 介入の結果、上気道感染症の罹患期間の中央値は、高張食塩水群で6日、通常ケア群で8日であり、前者で後者よりも2日短縮することが明らかになった。また、高張食塩水群では家族に上気道感染症をうつした者の割合が通常ケア群よりも低かった(高張食塩水群41%、通常ケア群58%)。高張食塩水の鼻腔内への滴下の副作用としては、くしゃみ、鼻水、痛みがまれに報告されたが、いずれも軽度であった。重篤な有害事象は報告されなかった。 研究グループによると、高張食塩水群の親の82%は、「高張食塩水の鼻腔内への滴下は子どもの回復を早めるのに役立った」と答え、81%は「今後もこの治療法を使うつもりだ」と答えたという。 Cunningham氏は、「子どもの上気道感染症の罹患期間が短縮されることで、家庭内での上気道感染症罹患者も減る。このことが、家族の迅速な回復と、学校や仕事などの通常の活動への復帰にどれほどの影響を与えるかは明らかだ」と指摘する。さらに同氏は、「われわれの研究は、親が安全に高張食塩水を作って子どもに投与でき、それにより子どもの風邪をある程度コントロールできることも示した」と付け加えている。 研究グループは次の研究で、高張食塩水の鼻腔内滴下が風邪により引き起こされる喘鳴に及ぼす影響を調べる予定だという。この点に関連する初期の研究では、高張食塩水の滴下を受けた子どもでは受けていない子どもに比べて喘鳴の発生が大幅に減少したことが示されているという(5%対19%)。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2024年9月6日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/saltwater-drops-in-nose-could-shorten-kids-colds Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock