進行性腎がんに対する治療において、パゾパニブ(商品名ヴォトリエント)にベバシズマブ(商品名アバスチン)を組み合わせることで患者の生存期間を延長できる可能性が、第2相臨床試験で示された。米ロズウェルパーク総合がんセンターのSaby George氏らが実施したこの試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024、9月13〜17日、スペイン・バルセロナ)で発表された。 パゾパニブは、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)として知られる抗がん薬の一種である。血管内皮細胞表面に存在する血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)とがん細胞が分泌する血管内皮増殖因子(VEGF)が結合すると、シグナルが血管内皮細胞内に伝達され、血管新生が促される。TKIは、VEGFRの働きを阻害してVEGFRとVEGFの結合を抑制することにより血管新生を阻止し、がん細胞の増殖を抑制する。米食品医薬品局(FDA)がパゾパニブ承認の根拠とした以前の臨床試験では、腎がんと診断された患者の無増悪生存期間(PFS)は平均11カ月強であることが示されていた。 今回の研究では、治療歴のない淡明細胞型の転移性腎細胞がん患者51人(年齢中央値65.6歳、男性70.6%)に、新規レジメンであるパゾパニブとベバシズマブによる治療を行い、12カ月後の臨床的有効率(clinical benefit rate;CBR、完全奏効、部分奏効、安定の割合を合計したもの)を調べた。治療方法は、1〜28日目にパゾパニブ800mgを1日1回投与し、10週間サイクルの36日目と50日目にベバシズマブ10mg/kgを投与するというものだった。研究グループによると、パゾパニブによる治療ではVEGFが増加し、それによりがん細胞が薬剤に耐性を持つ可能性があるという。そこで、治療サイクルの中程でVEGFを中和する作用のあるベバシズマブを投与する治療法を考え出したと説明する。 治療の結果、12カ月時点で51人中40人(78%)にCBRが認められた。中央値33.1カ月の追跡期間における客観的奏効率(完全奏効+部分奏効)は54.9%、CBRは98%、PFS中央値は22.1カ月、全生存期間(OS)中央値は62.9カ月であった。副作用としては、下痢(70%)、高血圧(54%)、疲労(69%)、吐き気(51%)が認められた。 進行性腎細胞がん患者の中には強力な免疫療法を提案される人もいるが、研究グループは、一部の患者にとっては免疫療法よりもパゾパニブとベバシズマブによる併用療法の方が安全性の高い選択肢となり得ると指摘する。 George氏は、「他のリスクグループの患者には免疫療法の選択肢もあったため、今回の第2相臨床試験には、より低リスクのカテゴリーに属する患者が多く含まれていた。この有望な結果は、パゾパニブとベバシズマブの交互投与が、低リスクの腎細胞がん患者に対して有望な治療レジメンとなり得ることを示唆している」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2024年9月17日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/combo-treatment-doubles-survival-for-patients-with-advanced-kidney-cancer Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
進行性腎がんに対する治療において、パゾパニブ(商品名ヴォトリエント)にベバシズマブ(商品名アバスチン)を組み合わせることで患者の生存期間を延長できる可能性が、第2相臨床試験で示された。米ロズウェルパーク総合がんセンターのSaby George氏らが実施したこの試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024、9月13〜17日、スペイン・バルセロナ)で発表された。 パゾパニブは、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)として知られる抗がん薬の一種である。血管内皮細胞表面に存在する血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)とがん細胞が分泌する血管内皮増殖因子(VEGF)が結合すると、シグナルが血管内皮細胞内に伝達され、血管新生が促される。TKIは、VEGFRの働きを阻害してVEGFRとVEGFの結合を抑制することにより血管新生を阻止し、がん細胞の増殖を抑制する。米食品医薬品局(FDA)がパゾパニブ承認の根拠とした以前の臨床試験では、腎がんと診断された患者の無増悪生存期間(PFS)は平均11カ月強であることが示されていた。 今回の研究では、治療歴のない淡明細胞型の転移性腎細胞がん患者51人(年齢中央値65.6歳、男性70.6%)に、新規レジメンであるパゾパニブとベバシズマブによる治療を行い、12カ月後の臨床的有効率(clinical benefit rate;CBR、完全奏効、部分奏効、安定の割合を合計したもの)を調べた。治療方法は、1〜28日目にパゾパニブ800mgを1日1回投与し、10週間サイクルの36日目と50日目にベバシズマブ10mg/kgを投与するというものだった。研究グループによると、パゾパニブによる治療ではVEGFが増加し、それによりがん細胞が薬剤に耐性を持つ可能性があるという。そこで、治療サイクルの中程でVEGFを中和する作用のあるベバシズマブを投与する治療法を考え出したと説明する。 治療の結果、12カ月時点で51人中40人(78%)にCBRが認められた。中央値33.1カ月の追跡期間における客観的奏効率(完全奏効+部分奏効)は54.9%、CBRは98%、PFS中央値は22.1カ月、全生存期間(OS)中央値は62.9カ月であった。副作用としては、下痢(70%)、高血圧(54%)、疲労(69%)、吐き気(51%)が認められた。 進行性腎細胞がん患者の中には強力な免疫療法を提案される人もいるが、研究グループは、一部の患者にとっては免疫療法よりもパゾパニブとベバシズマブによる併用療法の方が安全性の高い選択肢となり得ると指摘する。 George氏は、「他のリスクグループの患者には免疫療法の選択肢もあったため、今回の第2相臨床試験には、より低リスクのカテゴリーに属する患者が多く含まれていた。この有望な結果は、パゾパニブとベバシズマブの交互投与が、低リスクの腎細胞がん患者に対して有望な治療レジメンとなり得ることを示唆している」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2024年9月17日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/combo-treatment-doubles-survival-for-patients-with-advanced-kidney-cancer Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock