ナッツやピーナッツにアレルギーを持っている人は、「飛行機の中で誰かがナッツを食べているかもしれない」と心配する必要はないようだ。一般的に言われている、「ナッツなどのアレルゲンが機内の換気システムを通じて広がる」という説を裏付けるエビデンスは見つからなかったとする研究結果が報告された。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)国立心肺研究所アレルギー・免疫学臨床教授のPaul Turner氏と同研究所のNigel Dowdall氏によるこの研究結果は、「Archives of Disease in Childhood」に10月16日掲載された。Turner氏は、「実際、飛行中の食物アレルギー反応の発生件数は、地上に比べて10~100倍も少ない。これは、おそらく食物アレルギーのある乗客が飛行中にさまざまな予防措置を講じているためと思われる」と述べている。 この研究でTurner氏らは、1980年1月1日から2022年12月31日までの間に発表された、民間航空機の乗客がさらされる食物アレルギーリスクや、リスクの低減方法に関する文献のシステマティックレビューを実施し、その結果をまとめた。 レビューからは、全体的に、エアロゾル化した食物粒子により呼吸器系の症状が引き起こされることはまれなことが明らかになった。ただし、魚介類と小麦粉に関しては例外であり、調理中の蒸気への曝露や職業的な曝露(パン屋での小麦粉曝露による喘息、魚市場での魚介類への曝露など)がアレルギー反応を引き起こす可能性があるという。 一般的に、特に機内では、アレルゲンを含んだエアロゾルによりアレルギー反応が引き起こされやすいと考えられているが、レビューからは、それを示すエビデンスはほぼないことが示された。例えば、ピーナッツの殻をむくと、そのすぐ上の空気中に微量のピーナッツアレルゲンが検出されるが、それらはすぐに沈降するため、殻をむいている間しか検出されないのだという。 また、飛行中は客室の換気システムにより、3分程度で空気が完全に入れ替わる。研究グループによると、機内の空気取り入れ口の半分はエアフィルターを通過した再循環空気で、残りの半分は機外から取り入れられるのだという。それゆえTurner氏らは、「ピーナッツやナッツのアレルゲンが、飛行機の換気システムを通じて拡散するというエビデンスはない」と主張。「むしろ、主なリスクは、食事からのアレルゲン摂取回避の失敗、または環境表面に残留したアレルゲンとの接触によるものだ。残留アレルゲンの問題は、便間の折り返し時間(ターンアラウンドタイム)が非常に短い多くの格安航空会社ではより顕著だ」と指摘している。 またこの研究では、飛行中にナッツを食べないように乗客に要請するアナウンスによりアレルギー反応のリスクが軽減する可能性は低いことも示された。研究グループは、「それよりも、食物アレルギーのある乗客の搭乗を早めに許可し、座席テーブルやその他の表面の徹底的な清掃を促す方が賢明かもしれない」と述べている。研究グループによると、米国運輸省はすでに、ナッツアレルギーのある乗客に対するこのような対応を航空会社に義務付けているという。 研究グループは、「航空会社は、ウェブサイトやリクエストを通じて簡単に入手できる、食物アレルギーに関する明確なポリシーを持つべきだ。食物アレルギーのある乗客とその介護者に安心感を与えるために、グランドスタッフ(地上職員)と客室乗務員の両方がこれらのポリシーを一貫して適用する必要がある」と述べている。(HeahlthDay News 2024年10月16日) https://www.healthday.com/health-news/allergies/planes-air-ventilation-cant-spread-nut-allergens-to-passengers-study Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
ナッツやピーナッツにアレルギーを持っている人は、「飛行機の中で誰かがナッツを食べているかもしれない」と心配する必要はないようだ。一般的に言われている、「ナッツなどのアレルゲンが機内の換気システムを通じて広がる」という説を裏付けるエビデンスは見つからなかったとする研究結果が報告された。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)国立心肺研究所アレルギー・免疫学臨床教授のPaul Turner氏と同研究所のNigel Dowdall氏によるこの研究結果は、「Archives of Disease in Childhood」に10月16日掲載された。Turner氏は、「実際、飛行中の食物アレルギー反応の発生件数は、地上に比べて10~100倍も少ない。これは、おそらく食物アレルギーのある乗客が飛行中にさまざまな予防措置を講じているためと思われる」と述べている。 この研究でTurner氏らは、1980年1月1日から2022年12月31日までの間に発表された、民間航空機の乗客がさらされる食物アレルギーリスクや、リスクの低減方法に関する文献のシステマティックレビューを実施し、その結果をまとめた。 レビューからは、全体的に、エアロゾル化した食物粒子により呼吸器系の症状が引き起こされることはまれなことが明らかになった。ただし、魚介類と小麦粉に関しては例外であり、調理中の蒸気への曝露や職業的な曝露(パン屋での小麦粉曝露による喘息、魚市場での魚介類への曝露など)がアレルギー反応を引き起こす可能性があるという。 一般的に、特に機内では、アレルゲンを含んだエアロゾルによりアレルギー反応が引き起こされやすいと考えられているが、レビューからは、それを示すエビデンスはほぼないことが示された。例えば、ピーナッツの殻をむくと、そのすぐ上の空気中に微量のピーナッツアレルゲンが検出されるが、それらはすぐに沈降するため、殻をむいている間しか検出されないのだという。 また、飛行中は客室の換気システムにより、3分程度で空気が完全に入れ替わる。研究グループによると、機内の空気取り入れ口の半分はエアフィルターを通過した再循環空気で、残りの半分は機外から取り入れられるのだという。それゆえTurner氏らは、「ピーナッツやナッツのアレルゲンが、飛行機の換気システムを通じて拡散するというエビデンスはない」と主張。「むしろ、主なリスクは、食事からのアレルゲン摂取回避の失敗、または環境表面に残留したアレルゲンとの接触によるものだ。残留アレルゲンの問題は、便間の折り返し時間(ターンアラウンドタイム)が非常に短い多くの格安航空会社ではより顕著だ」と指摘している。 またこの研究では、飛行中にナッツを食べないように乗客に要請するアナウンスによりアレルギー反応のリスクが軽減する可能性は低いことも示された。研究グループは、「それよりも、食物アレルギーのある乗客の搭乗を早めに許可し、座席テーブルやその他の表面の徹底的な清掃を促す方が賢明かもしれない」と述べている。研究グループによると、米国運輸省はすでに、ナッツアレルギーのある乗客に対するこのような対応を航空会社に義務付けているという。 研究グループは、「航空会社は、ウェブサイトやリクエストを通じて簡単に入手できる、食物アレルギーに関する明確なポリシーを持つべきだ。食物アレルギーのある乗客とその介護者に安心感を与えるために、グランドスタッフ(地上職員)と客室乗務員の両方がこれらのポリシーを一貫して適用する必要がある」と述べている。(HeahlthDay News 2024年10月16日) https://www.healthday.com/health-news/allergies/planes-air-ventilation-cant-spread-nut-allergens-to-passengers-study Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock