健康のことを考えて、スタンディングデスクを導入して座位時間を減らすことを考えている人もいるかもしれない。しかし、手首に特殊な動作モニターを装着した8万3,000人以上の英国成人を対象とした新たな研究において、座位時間を立位時間に変えても、実際の動きや運動を伴わない限り、心血管の健康へのメリットはないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのMatthew Ahmadi氏らによるこの研究結果は、「International Journal of Epidemiology」に10月16日掲載された。 研究グループは、長時間の立位は、実際には心臓に悪影響を及ぼし、静脈瘤や深部静脈血栓症(DVT)などの発症リスクを上昇させる可能性があるとしている。Ahmadi氏は、「重要な点は、長時間立ち続けても座位時間の長い生活習慣は相殺されず、むしろ、循環器系の健康という点では、一部の人には危険をもたらす可能性があるということだ」と述べている。 今回の研究では、UKバイオバンク参加者8万3,013人(平均年齢61.3±7.8歳、女性55.6%)の加速度計のデータを用いて、毎日の座位時間、立位時間、静止時間(座位時間と立位時間を合わせたもの)と、心血管疾患(冠動脈性心疾患、心不全、脳卒中)および起立性循環器疾患(起立性低血圧、静脈瘤、慢性静脈不全、静脈潰瘍)の発症との関連が調査された。活動量計のデータを基に、参加者の立位時間、座位時間、および静止時間を推定した。 平均6.9年の追跡期間中に、6,829件の心血管疾患と、2,042件の起立性循環器疾患が発生していた。起立性循環器疾患のリスクは、1日の静止時間が12時間を超えると1時間当たり平均22%(ハザード比0.22、95%信頼区間0.16〜0.29)、1日の座位時間が10時間を超えると1時間当たり平均26%(同0.26、0.18〜0.36)、1日の立位時間が2時間を超えると30分当たり11%(同0.11、0.05〜0.18)上昇していた。心血管疾患のハザード比は、1日の静止時間が12時間を超えると1時間当たり平均13%(同0.13、0.10〜0.16)、1日の座位時間が12時間を超えると1時間当たり平均15%(同0.15、同0.11〜0.19)上昇していた。一方、立位時間と心血管疾患リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 Ahmadi氏は、「本研究により、立位時間が増えても、長期的には心血管の健康の改善にはつながらず、むしろ循環器系の問題のリスクが上昇することが分かった」と話す。また、研究グループは、「この結果は、スタンディングデスクの使用をやめて座位に戻すべきことを意味するものではない。そうではなく、1日の中で体を動かす時間を増やす必要があることを示すものだ」と述べている。 論文の上席著者である、シドニー大学チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのEmmanuel Stamatakis氏は、「日常的に長時間座っている人にとって、1日を通して、ちょっとした動きをたくさん取り入れたり、計画的に運動を行ったりすることは、心血管疾患のリスクを低減するための良い方法かもしれない」と話す。そして、「定期的に休憩を取る、歩き回る、ウォーキングミーティングを行う、階段を使う、長距離を運転する際には定期的に休憩を取る、昼休みを利用してデスクから離れて体を動かす、などを心がけると良い」とアドバイスしている。 なお、研究グループが2024年初めに発表した研究によると、1日の座位時間が11時間を超える人でも、1日わずか6分の高強度の運動、または30分の中強度から高強度の運動を行うだけで心血管疾患リスクを軽減できることが明らかにされている。(HealthDay News 2024年10月17日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/just-standing-more-probably-wont-help-your-heart Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
健康のことを考えて、スタンディングデスクを導入して座位時間を減らすことを考えている人もいるかもしれない。しかし、手首に特殊な動作モニターを装着した8万3,000人以上の英国成人を対象とした新たな研究において、座位時間を立位時間に変えても、実際の動きや運動を伴わない限り、心血管の健康へのメリットはないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのMatthew Ahmadi氏らによるこの研究結果は、「International Journal of Epidemiology」に10月16日掲載された。 研究グループは、長時間の立位は、実際には心臓に悪影響を及ぼし、静脈瘤や深部静脈血栓症(DVT)などの発症リスクを上昇させる可能性があるとしている。Ahmadi氏は、「重要な点は、長時間立ち続けても座位時間の長い生活習慣は相殺されず、むしろ、循環器系の健康という点では、一部の人には危険をもたらす可能性があるということだ」と述べている。 今回の研究では、UKバイオバンク参加者8万3,013人(平均年齢61.3±7.8歳、女性55.6%)の加速度計のデータを用いて、毎日の座位時間、立位時間、静止時間(座位時間と立位時間を合わせたもの)と、心血管疾患(冠動脈性心疾患、心不全、脳卒中)および起立性循環器疾患(起立性低血圧、静脈瘤、慢性静脈不全、静脈潰瘍)の発症との関連が調査された。活動量計のデータを基に、参加者の立位時間、座位時間、および静止時間を推定した。 平均6.9年の追跡期間中に、6,829件の心血管疾患と、2,042件の起立性循環器疾患が発生していた。起立性循環器疾患のリスクは、1日の静止時間が12時間を超えると1時間当たり平均22%(ハザード比0.22、95%信頼区間0.16〜0.29)、1日の座位時間が10時間を超えると1時間当たり平均26%(同0.26、0.18〜0.36)、1日の立位時間が2時間を超えると30分当たり11%(同0.11、0.05〜0.18)上昇していた。心血管疾患のハザード比は、1日の静止時間が12時間を超えると1時間当たり平均13%(同0.13、0.10〜0.16)、1日の座位時間が12時間を超えると1時間当たり平均15%(同0.15、同0.11〜0.19)上昇していた。一方、立位時間と心血管疾患リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 Ahmadi氏は、「本研究により、立位時間が増えても、長期的には心血管の健康の改善にはつながらず、むしろ循環器系の問題のリスクが上昇することが分かった」と話す。また、研究グループは、「この結果は、スタンディングデスクの使用をやめて座位に戻すべきことを意味するものではない。そうではなく、1日の中で体を動かす時間を増やす必要があることを示すものだ」と述べている。 論文の上席著者である、シドニー大学チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのEmmanuel Stamatakis氏は、「日常的に長時間座っている人にとって、1日を通して、ちょっとした動きをたくさん取り入れたり、計画的に運動を行ったりすることは、心血管疾患のリスクを低減するための良い方法かもしれない」と話す。そして、「定期的に休憩を取る、歩き回る、ウォーキングミーティングを行う、階段を使う、長距離を運転する際には定期的に休憩を取る、昼休みを利用してデスクから離れて体を動かす、などを心がけると良い」とアドバイスしている。 なお、研究グループが2024年初めに発表した研究によると、1日の座位時間が11時間を超える人でも、1日わずか6分の高強度の運動、または30分の中強度から高強度の運動を行うだけで心血管疾患リスクを軽減できることが明らかにされている。(HealthDay News 2024年10月17日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/just-standing-more-probably-wont-help-your-heart Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock