RS(呼吸器合胞体)ウイルスワクチンに関する米国のリアルワールドデータを用いた研究において、60歳以上の人でのRSウイルス関連の入院に対するワクチンの有効性は80%であることが明らかになった。この研究結果は、「The Lancet」10月19日号に掲載された。論文の共著者である、米インディアナ大学レゲンストリーフ研究所のShaun Grannis氏は、「今年も呼吸器疾患シーズンが迫っているが、高齢者には、米疾病対策センター(CDC)のガイダンスに従い、RSウイルスワクチンの毎年の接種を推奨する」と述べている。 RSウイルス感染症は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とともに、罹患すると重症化して命を脅かすこともある危険で一般的な呼吸器感染症の一つとされている。しかし、いずれの疾患に対しても、原因となるウイルスに対する非常に効果的なワクチンが存在する。同研究所のニュースリリースで紹介されているCDCのデータによると、「RSウイルスワクチンが利用可能になる前の数年間には、米国の65歳以上の成人において、毎年推定6万〜16万件のRSウイルス関連の入院と6,000〜1万件のRSウイルス関連の死亡が発生していた」という。 今回の研究は、米国8州の大規模医療ネットワークの電子健康記録を用いて、2023年10月1日から2024年3月31日までの間にRSウイルスの検査を受けた60歳以上の成人を対象に、RSウイルス感染症様疾患による入院および救急外来(ED)受診に対するRSウイルスワクチンの有効性を評価した。 その結果、免疫抑制状態にない60歳以上の成人に生じた2万8,271件のRSウイルス感染症様疾患による入院において、RSウイルス関連の入院に対するワクチンの有効性は80%、RSウイルス関連の重症疾患(集中治療室入室と死亡のいずれか、またはその両方)に対する有効性は81%と推定された。また、免疫不全状態にない60歳以上の成人に生じたRSウイルス感染症様疾患による3万6,521件のED受診において、ED受診に対するワクチンの有効性は77%と推定された。研究グループによると、このようなワクチン接種の恩恵は、最も脆弱な年齢層である75歳以上の人の間で顕著であったという。 Grannis氏は、「われわれは、ビッグデータの力を活用してRSウイルスワクチンの有効性を評価することができた。これはワクチン政策を策定する上で必要な情報だ」と述べている。また、論文の共著者である、レゲンストリーフ研究所のBrian Dixon氏は、「もちろん100%有効なワクチンなど存在しない。しかし、80%の有効性というのはインフルエンザワクチンの有効性よりも高く、非常に優れている」と話している。 さらにDixon氏は、RSウイルスワクチン接種は命を救うだけでなく、医療費の削減にもつながると指摘する。同氏は、「米国での成人のRSウイルス感染症による入院にかかる年間費用は12億ドルから50億ドル(1ドル150円換算で1800億円から7500億円)と推定されている。入院の最大80%を防ぐことができるのであれば、消費者と医療制度に大きな節約をもたらす可能性がある」と話している。(HealthDay News 2024年10月18日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/real-world-study-confirms-rsv-vaccines-protective-power-for-seniors Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock