MRIによる直腸がん患者のがんステージの再評価により、手術を回避できる患者を特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。手術を回避できた患者は、生涯にわたってストーマ装具を装着せずに済む可能性も期待できる。米バージニア大学(UVA)医療システム身体画像部門のArun Krishnaraj氏らによるこの研究の詳細は、「Radiology」に9月3日掲載された。 米国がん協会(ACS)によると、米国で直腸がんは比較的一般的な疾患で、毎年約4万6,220人(男性2万7,330人、女性1万8,890人)が新たに直腸がんの診断を受けているという。直腸がんによる死亡者数は、毎年5万4,000人以上に上る大腸がん死亡者数の統計に含まれている。 直腸がんの治療にあたる医師が理想とするのは、放射線療法と化学療法のみでがんを治療して患者の腸の機能を温存することだ。しかし、患者によっては経肛門的全直腸間膜切除術と呼ばれる処置が必要になる場合がある。この手術を受けた患者では、残念なことに、生涯にわたるストーマ装具の装着が必要となり、性機能障害などの他の問題を抱えることも多い。そのため、手術なしでも良好な状態を保つ可能性のある患者を特定することは非常に重要である。 今回の研究では、ステージⅡまたはⅢの直腸がん患者277人(年齢中央値58歳、男性179人)を対象にしたランダム化比較試験(Organ Preservation in Rectal Adenocarcinoma〔OPRA〕試験)のデータの二次解析を行い、MRIでの再評価により手術を行わずに経過観察が可能な患者を特定できるかが検討された。対象者は、放射線療法後に化学療法を行う群と、化学療法後に放射線療法を行う群にランダムに割り付けられ、いずれの患者も再評価のためのMRI検査を受けた。これらのMRI画像は、放射線科医により、臨床的完全奏効(clinical complete response;cCR)、完全奏効に近い奏効(near-complete clinical response;nCR)、または不完全奏効(incomplete clinical response;iCR)に分類された。追跡期間の中央値は4.1年だった。 その結果、cCR達成患者では、nCR達成患者に比べて手術を回避できた患者の割合が高いことが明らかになった(65.3%対41.6%、ログランク検定によるP<0.001)。5年無病生存率は、cCR達成患者で81.8%、nCR達成患者で67.6%、iCR達成患者で49.6%だった。また、これらの再評価による分類は、全生存、遠隔再発なしの生存、および局所再発の予測因子としても機能することが示された。2年以上の追跡調査を受けた266人の対象者のうち、129人(48.5%)に再発が認められた。解析の結果、MRI画像所見での拡散制限(restricted diffusion;組織内で水分子が動きにくくなる状態)の存在と、リンパ節の形態的異常が再発に独立して関連していることが判明した。 研究グループは、腸の内視鏡検査の結果を加えると、MRIに基づく予測の精度がさらに高まる可能性があるとの見方を示している。Krishnaraj氏は、「MRIや内視鏡検査などの他のツールの継続的な進歩により、患者の将来の転帰に関してより詳細な情報が得られるようになることを私は楽観視している」とUVAのニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「最終的には、治療後に患者に説明するがんの再発や転移のリスクについての予測精度を99%にまで上げたいと考えている。まだ道のりは遠いが、それがわれわれの目標だ」と語っている。(HealthDay News 2024年10月23日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/mri-might-spare-rectal-cancer-patients-surgery-and-colostomy Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
MRIによる直腸がん患者のがんステージの再評価により、手術を回避できる患者を特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。手術を回避できた患者は、生涯にわたってストーマ装具を装着せずに済む可能性も期待できる。米バージニア大学(UVA)医療システム身体画像部門のArun Krishnaraj氏らによるこの研究の詳細は、「Radiology」に9月3日掲載された。 米国がん協会(ACS)によると、米国で直腸がんは比較的一般的な疾患で、毎年約4万6,220人(男性2万7,330人、女性1万8,890人)が新たに直腸がんの診断を受けているという。直腸がんによる死亡者数は、毎年5万4,000人以上に上る大腸がん死亡者数の統計に含まれている。 直腸がんの治療にあたる医師が理想とするのは、放射線療法と化学療法のみでがんを治療して患者の腸の機能を温存することだ。しかし、患者によっては経肛門的全直腸間膜切除術と呼ばれる処置が必要になる場合がある。この手術を受けた患者では、残念なことに、生涯にわたるストーマ装具の装着が必要となり、性機能障害などの他の問題を抱えることも多い。そのため、手術なしでも良好な状態を保つ可能性のある患者を特定することは非常に重要である。 今回の研究では、ステージⅡまたはⅢの直腸がん患者277人(年齢中央値58歳、男性179人)を対象にしたランダム化比較試験(Organ Preservation in Rectal Adenocarcinoma〔OPRA〕試験)のデータの二次解析を行い、MRIでの再評価により手術を行わずに経過観察が可能な患者を特定できるかが検討された。対象者は、放射線療法後に化学療法を行う群と、化学療法後に放射線療法を行う群にランダムに割り付けられ、いずれの患者も再評価のためのMRI検査を受けた。これらのMRI画像は、放射線科医により、臨床的完全奏効(clinical complete response;cCR)、完全奏効に近い奏効(near-complete clinical response;nCR)、または不完全奏効(incomplete clinical response;iCR)に分類された。追跡期間の中央値は4.1年だった。 その結果、cCR達成患者では、nCR達成患者に比べて手術を回避できた患者の割合が高いことが明らかになった(65.3%対41.6%、ログランク検定によるP<0.001)。5年無病生存率は、cCR達成患者で81.8%、nCR達成患者で67.6%、iCR達成患者で49.6%だった。また、これらの再評価による分類は、全生存、遠隔再発なしの生存、および局所再発の予測因子としても機能することが示された。2年以上の追跡調査を受けた266人の対象者のうち、129人(48.5%)に再発が認められた。解析の結果、MRI画像所見での拡散制限(restricted diffusion;組織内で水分子が動きにくくなる状態)の存在と、リンパ節の形態的異常が再発に独立して関連していることが判明した。 研究グループは、腸の内視鏡検査の結果を加えると、MRIに基づく予測の精度がさらに高まる可能性があるとの見方を示している。Krishnaraj氏は、「MRIや内視鏡検査などの他のツールの継続的な進歩により、患者の将来の転帰に関してより詳細な情報が得られるようになることを私は楽観視している」とUVAのニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「最終的には、治療後に患者に説明するがんの再発や転移のリスクについての予測精度を99%にまで上げたいと考えている。まだ道のりは遠いが、それがわれわれの目標だ」と語っている。(HealthDay News 2024年10月23日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/mri-might-spare-rectal-cancer-patients-surgery-and-colostomy Copyright © 2024 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock