最近の健康ブームに乗って、全身MRI検査やCT検査にお金をかけようとしている人はいないだろうか? もしそうであるなら、その行動が気候変動を加速させる一因になり得ると認識すべきことが、新たな研究で示された。メディケア受給者が受けた分だけでも、不必要な画像検査によって排出された温室効果ガスの二酸化炭素換算量(CO2e)は人口7万2,000人の町の電力消費により排出される年間の温室効果ガス排出量に相当する129.2キロトン(kT)に達することが明らかになった。米レーヘイ・ホスピタル&メディカル・センターのGregory Cavanagh氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Radiology」に3月28日掲載された。 論文の共著者の1人である米ハーヴィー・L・ニーマン医療政策研究所のElizabeth Rula氏は、「われわれの解析から、不必要な画像検査のオーダーを減らすことで、カーボンフットプリントを大幅に削減できる可能性のあることが明らかになった」と同研究所のニュースリリースの中で述べている。カーボンフットプリントとは、製品やサービスが製造・使用・廃棄・リサイクルされる過程で排出される温室効果ガスの量をCO2eで表したものをいう。 この研究では、2017年から2021年の間に約3000万人のメディケア受給者に対して実施された画像検査(MRI検査、CT検査、X線検査、超音波検査)のデータが解析された。先行研究では、メディケア受給者の患者にオーダーされた画像検査のうち、不必要な検査が占める割合は26%にも達すると推定されていた。研究グループはこのデータを用いて、不必要な画像検査と、それに関連する温室効果ガス排出量を調べた。温室効果ガス排出量はCO2eとして数値化した。 その結果、対象とされた5年間に患者が受けた全種類の画像検査から排出された1年当たりのCO2eの平均は、MRI検査で8.1~136kT、CT検査で25~178kT、X線検査で7.1~46kT、超音波検査で2.7~23kTと推定された。 また、全種類の画像検査に占める不必要な検査の割合は4〜26%と推定された。これらの不必要な検査による年間のCO2eは平均3.55〜129.2kTであり、特にMRI検査とCT検査によるCO2eが多いことも示された(MRI検査:0.621〜33.8kT、CT検査:1.24〜64.8kT)。なお、3.55~129.2kTのCO2eは、それぞれ人口2,000人と7万2,000人の町での1年間の電力使用により排出される温室効果ガスの量に近いという。 Cavanagh氏は、「最大推定値は、画像検査間の待機モードの状態、あるいは次の検査までの稼働段階にある状態のときに必要とされるエネルギーも考慮したものだった」と同ニュースリリースの中で述べている。 一方、共著者の1人で米ミシガン大学アナーバー校臨床分野のJulia Schoen氏は、「画像検査の実施件数は、全体的には過去10年間で持続的に増加していることに加え、気候変動に関連する曝露やイベントによりさらに増加する見込みがある。これらを考慮すると、今後も温室効果ガスの排出量は増え続ける可能性が高い」と同ニュースリリースの中で述べている。 研究グループは、不必要な画像検査を減らすことは地球を守ることにつながると結論付けている。Rula氏は、「今回の研究結果から、不必要な画像検査の利用を減らすべき重要な理由が新たに加わった。不必要な画像検査の削減は、患者のリスクやコスト、医療システムのコストの抑制に加え、放射線科における人手不足の一因となっている大量の画像検査の実施件数を減らすことにもつながる」と述べている。(HealthDay News 2025年4月3日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/unnecessary-imaging-scans-contributing-to-climate-change Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
最近の健康ブームに乗って、全身MRI検査やCT検査にお金をかけようとしている人はいないだろうか? もしそうであるなら、その行動が気候変動を加速させる一因になり得ると認識すべきことが、新たな研究で示された。メディケア受給者が受けた分だけでも、不必要な画像検査によって排出された温室効果ガスの二酸化炭素換算量(CO2e)は人口7万2,000人の町の電力消費により排出される年間の温室効果ガス排出量に相当する129.2キロトン(kT)に達することが明らかになった。米レーヘイ・ホスピタル&メディカル・センターのGregory Cavanagh氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Radiology」に3月28日掲載された。 論文の共著者の1人である米ハーヴィー・L・ニーマン医療政策研究所のElizabeth Rula氏は、「われわれの解析から、不必要な画像検査のオーダーを減らすことで、カーボンフットプリントを大幅に削減できる可能性のあることが明らかになった」と同研究所のニュースリリースの中で述べている。カーボンフットプリントとは、製品やサービスが製造・使用・廃棄・リサイクルされる過程で排出される温室効果ガスの量をCO2eで表したものをいう。 この研究では、2017年から2021年の間に約3000万人のメディケア受給者に対して実施された画像検査(MRI検査、CT検査、X線検査、超音波検査)のデータが解析された。先行研究では、メディケア受給者の患者にオーダーされた画像検査のうち、不必要な検査が占める割合は26%にも達すると推定されていた。研究グループはこのデータを用いて、不必要な画像検査と、それに関連する温室効果ガス排出量を調べた。温室効果ガス排出量はCO2eとして数値化した。 その結果、対象とされた5年間に患者が受けた全種類の画像検査から排出された1年当たりのCO2eの平均は、MRI検査で8.1~136kT、CT検査で25~178kT、X線検査で7.1~46kT、超音波検査で2.7~23kTと推定された。 また、全種類の画像検査に占める不必要な検査の割合は4〜26%と推定された。これらの不必要な検査による年間のCO2eは平均3.55〜129.2kTであり、特にMRI検査とCT検査によるCO2eが多いことも示された(MRI検査:0.621〜33.8kT、CT検査:1.24〜64.8kT)。なお、3.55~129.2kTのCO2eは、それぞれ人口2,000人と7万2,000人の町での1年間の電力使用により排出される温室効果ガスの量に近いという。 Cavanagh氏は、「最大推定値は、画像検査間の待機モードの状態、あるいは次の検査までの稼働段階にある状態のときに必要とされるエネルギーも考慮したものだった」と同ニュースリリースの中で述べている。 一方、共著者の1人で米ミシガン大学アナーバー校臨床分野のJulia Schoen氏は、「画像検査の実施件数は、全体的には過去10年間で持続的に増加していることに加え、気候変動に関連する曝露やイベントによりさらに増加する見込みがある。これらを考慮すると、今後も温室効果ガスの排出量は増え続ける可能性が高い」と同ニュースリリースの中で述べている。 研究グループは、不必要な画像検査を減らすことは地球を守ることにつながると結論付けている。Rula氏は、「今回の研究結果から、不必要な画像検査の利用を減らすべき重要な理由が新たに加わった。不必要な画像検査の削減は、患者のリスクやコスト、医療システムのコストの抑制に加え、放射線科における人手不足の一因となっている大量の画像検査の実施件数を減らすことにもつながる」と述べている。(HealthDay News 2025年4月3日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/unnecessary-imaging-scans-contributing-to-climate-change Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock