12歳以上の女性の尿路感染症(UTI)の治療薬として2025年3月25日に米食品医薬品局(FDA)により承認された抗菌薬のgepotidacin(ゲポチダシン)が、薬剤耐性の淋菌感染症(淋病)の治療にも役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。600人以上を対象にした国際的な臨床試験で、同薬の治療効果は現在の標準治療と同等であることが示されたという。研究グループは、「gepotidacinは、許容可能な安全性と認容性のプロファイルに裏付けられた新たな経口抗菌薬であり、淋病治療の代替選択肢となる可能性がある」と述べている。英バーミンガム大学病院NHS財団トラストのJonathan Ross氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に4月14日掲載された。 Gepotidacinは、細菌のDNA複製を阻害する、画期的な殺菌作用を持つトリアザアセナフチレン骨格の抗菌薬であり、単純性UTIの治療において有効性と認容性が確認されている。Ross氏らは今回、米国、オーストラリア、ドイツ、メキシコ、スペイン、および英国で第3相多施設共同・非劣性ランダム化比較試験を実施し、尿路や生殖器の合併症のない淋病の治療におけるgepotidacinの有効性と安全性を評価した。対象とされた、検査で淋菌が確認され、合併症のない淋病が疑われる12歳以上で体重が45kg以上の男女628人は、1対1の割合で、gepotidacin3,000mgを10~12時間間隔で2回経口投与する群(gepotidacin群)と、セフェム系抗菌薬のセフトリアキソン500mgの筋注投与およびマクロライド系抗菌薬のアジスロマイシン1gの経口投与を併用する群(併用療法群)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は微生物学的治癒率であり、治療開始から4~8日目に尿路・生殖器から採取した検体を用いた培養検査で淋菌の有無を確認した。非劣性マージンは−10%と設定された。 最終的に406人(gepotidacin群202人、併用療法群204人)を対象に解析した結果、微生物学的治癒率はgepotidacin群で92.6%であったのに対し、併用療法群では91.2%であった。調整後の治療効果の差は−0.1%(95%信頼区間−5.6〜5.5)であり、gepotidacinの治療効果はセフトリアキソンとアジスロマイシンによる併用療法と同等であることが確認された。安全性については、gepotidacin群では、有害事象および薬剤関連有害事象の発生率が併用療法群よりも高かったが、ほとんどは軽度または中等度であった。重度または重篤な有害事象は、いずれの群でも認められなかった。 今回の研究には関与していない感染症・性感染症の専門家であるJason Zucker氏は、「淋病の治療の選択肢が増えるのは素晴らしいことだというのが、本研究結果の大きなポイントだ」とCNNに対して語った。同じく本研究には関与していない、米南カリフォルニア大学公衆衛生学教授のJeffrey Klausner氏は、「淋病治療の選択肢が増えるということは、医師が同じ薬を何度も処方する必要がなくなることを意味する。同じ薬の繰り返しの処方は、不良な転帰と薬剤耐性菌の増加を招く原因となる。Gepotidacinが淋病治療薬として承認され、推奨されれば、それは真の進歩であり、淋病治療における薬剤耐性の抑制に向けたわれわれの取り組みに大きく貢献するだろう」とCNNに宛てた電子メールで述べた。 研究グループは、gepotidacinの効果について理解を深めるためには、特に、女性や有色人種など、本試験では十分に代表されなかった集団を対象にした追加の研究が必要だとしている。 本論文の付随論評の中で、オレブロ大学(スウェーデン)のMagnus Unemo氏と世界保健機関(WHO)のTeodora Wi氏は、「淋菌は耐性を獲得しやすい性質であることから、将来的にはgepotidacinに対しても耐性を獲得する可能性がある。また、gepotidacinは副作用があるので投与量を増やすことは難しい上に、その他の治療選択肢がないことなどから、淋病の新たな治療法の前臨床および臨床段階での研究・開発は依然として重要だ」と述べている。その上で、「結論として、gepotidacinは淋病の新たな治療選択肢として有望だが、淋病を治療可能な感染症として維持するための課題は今後も続くだろう」と結論付けている。(HealthDay News 2025年4月15日) https://www.healthday.com/health-news/sexual-health/new-antibiotic-may-be-effective-in-treating-gonorrhea Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
12歳以上の女性の尿路感染症(UTI)の治療薬として2025年3月25日に米食品医薬品局(FDA)により承認された抗菌薬のgepotidacin(ゲポチダシン)が、薬剤耐性の淋菌感染症(淋病)の治療にも役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。600人以上を対象にした国際的な臨床試験で、同薬の治療効果は現在の標準治療と同等であることが示されたという。研究グループは、「gepotidacinは、許容可能な安全性と認容性のプロファイルに裏付けられた新たな経口抗菌薬であり、淋病治療の代替選択肢となる可能性がある」と述べている。英バーミンガム大学病院NHS財団トラストのJonathan Ross氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に4月14日掲載された。 Gepotidacinは、細菌のDNA複製を阻害する、画期的な殺菌作用を持つトリアザアセナフチレン骨格の抗菌薬であり、単純性UTIの治療において有効性と認容性が確認されている。Ross氏らは今回、米国、オーストラリア、ドイツ、メキシコ、スペイン、および英国で第3相多施設共同・非劣性ランダム化比較試験を実施し、尿路や生殖器の合併症のない淋病の治療におけるgepotidacinの有効性と安全性を評価した。対象とされた、検査で淋菌が確認され、合併症のない淋病が疑われる12歳以上で体重が45kg以上の男女628人は、1対1の割合で、gepotidacin3,000mgを10~12時間間隔で2回経口投与する群(gepotidacin群)と、セフェム系抗菌薬のセフトリアキソン500mgの筋注投与およびマクロライド系抗菌薬のアジスロマイシン1gの経口投与を併用する群(併用療法群)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は微生物学的治癒率であり、治療開始から4~8日目に尿路・生殖器から採取した検体を用いた培養検査で淋菌の有無を確認した。非劣性マージンは−10%と設定された。 最終的に406人(gepotidacin群202人、併用療法群204人)を対象に解析した結果、微生物学的治癒率はgepotidacin群で92.6%であったのに対し、併用療法群では91.2%であった。調整後の治療効果の差は−0.1%(95%信頼区間−5.6〜5.5)であり、gepotidacinの治療効果はセフトリアキソンとアジスロマイシンによる併用療法と同等であることが確認された。安全性については、gepotidacin群では、有害事象および薬剤関連有害事象の発生率が併用療法群よりも高かったが、ほとんどは軽度または中等度であった。重度または重篤な有害事象は、いずれの群でも認められなかった。 今回の研究には関与していない感染症・性感染症の専門家であるJason Zucker氏は、「淋病の治療の選択肢が増えるのは素晴らしいことだというのが、本研究結果の大きなポイントだ」とCNNに対して語った。同じく本研究には関与していない、米南カリフォルニア大学公衆衛生学教授のJeffrey Klausner氏は、「淋病治療の選択肢が増えるということは、医師が同じ薬を何度も処方する必要がなくなることを意味する。同じ薬の繰り返しの処方は、不良な転帰と薬剤耐性菌の増加を招く原因となる。Gepotidacinが淋病治療薬として承認され、推奨されれば、それは真の進歩であり、淋病治療における薬剤耐性の抑制に向けたわれわれの取り組みに大きく貢献するだろう」とCNNに宛てた電子メールで述べた。 研究グループは、gepotidacinの効果について理解を深めるためには、特に、女性や有色人種など、本試験では十分に代表されなかった集団を対象にした追加の研究が必要だとしている。 本論文の付随論評の中で、オレブロ大学(スウェーデン)のMagnus Unemo氏と世界保健機関(WHO)のTeodora Wi氏は、「淋菌は耐性を獲得しやすい性質であることから、将来的にはgepotidacinに対しても耐性を獲得する可能性がある。また、gepotidacinは副作用があるので投与量を増やすことは難しい上に、その他の治療選択肢がないことなどから、淋病の新たな治療法の前臨床および臨床段階での研究・開発は依然として重要だ」と述べている。その上で、「結論として、gepotidacinは淋病の新たな治療選択肢として有望だが、淋病を治療可能な感染症として維持するための課題は今後も続くだろう」と結論付けている。(HealthDay News 2025年4月15日) https://www.healthday.com/health-news/sexual-health/new-antibiotic-may-be-effective-in-treating-gonorrhea Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock