表面置換型人工股関節置換術の一種であるバーミンガム股関節表面置換術(BHR)を受けた患者では、人工股関節全置換術(THA)を受けた患者と同程度に、長期間にわたり高レベルの身体活動を維持できることが長期研究で明らかになった。米ワシントン大学医学部整形外科教授のRobert Barrack氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Bone and Joint Surgery」に3月19日掲載された。 長年、熱心にスポーツを続けていると体に負担がかかり、股関節に痛みを伴う変形性関節症を発症することがある。THAはこうした症状に対する治療選択肢の一つだが、術後に高強度の運動や負荷の高い動きが制限されてしまうことが少なくない。そのため、若くて活動的な患者の間では、THAよりも、患者を競技レベルの運動に復帰させた実績のあるBHRが好まれることが多い。 THAでは、大腿骨頭を切除して人工の関節頭(ボール)を取り付けるとともに、骨盤側の関節窩を人工物(ソケット)に置き換える。これに対し、BHRでは、大腿骨頭の表面のみを削って人工物(キャップ)を被せ、関節窩に受け皿(ソケット)を設置する。この術式では、大腿骨の大部分を残せるため、股関節での自然な荷重伝達が保たれやすく、術後も高い活動レベルを維持できる可能性が高まる。 Barrack氏らは、2006年6月から2013年12月にかけてバーンズ・ジューイッシュ病院でBHRを受けた35歳から59歳の患者224人の長期転帰を分析した。その結果、手術から15年後の時点で、何らかの原因で股関節の再手術を必要としなかった患者の割合は96.0%、感染以外の理由による再手術を必要としなかった患者の割合は97.4%に上ると推定されることが明らかになった。また、THAを受けた患者を対照として患者報告アウトカムを比較したところ、BHR群とTHA群の間で全体的な活動性について有意な差は認められなかった。さらに、術後も活動的な状態を維持していた患者の割合は、両群で同等だったが、BHR群の方が「高度に活動的」である患者の割合が高い傾向が認められた。 Barrack氏は、「BHRを受けた患者は、術後5~10年後の時点でランニングやバスケットボールなどの高強度の運動に復帰していた患者の割合がTHA群の3倍に上っていた。驚くべきことに、ほぼ全員が術後平均14年を経てもアクティブな活動に従事している」とワシントン大学医学部のニュースリリースで述べている。 50歳のJason Cutterさんも、BHRを受けた1人だ。Cutterさんは、何年も前から生じていた股関節の痛みがアマチュアホッケー選手やアウトドアマンとしての活動に支障を来たし始めていると感じていたが、その原因は加齢やストレッチ不足、住宅リフォームの副業で着用していた重い工具ベルトによる負担だと考えていた。しかし、所属しているレクリエーションリーグの元プロアイスホッケー選手らに勧められて整形外科医の診察を受けた。その結果としてBHRを受けたCutterさんは、術後3カ月で氷上に戻り、ホッケーのプレーを再開できるようになったという。(HealthDay News 2025年4月17日) https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/alternative-to-hip-replacement-helps-patients-remain-physically-active Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
表面置換型人工股関節置換術の一種であるバーミンガム股関節表面置換術(BHR)を受けた患者では、人工股関節全置換術(THA)を受けた患者と同程度に、長期間にわたり高レベルの身体活動を維持できることが長期研究で明らかになった。米ワシントン大学医学部整形外科教授のRobert Barrack氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Bone and Joint Surgery」に3月19日掲載された。 長年、熱心にスポーツを続けていると体に負担がかかり、股関節に痛みを伴う変形性関節症を発症することがある。THAはこうした症状に対する治療選択肢の一つだが、術後に高強度の運動や負荷の高い動きが制限されてしまうことが少なくない。そのため、若くて活動的な患者の間では、THAよりも、患者を競技レベルの運動に復帰させた実績のあるBHRが好まれることが多い。 THAでは、大腿骨頭を切除して人工の関節頭(ボール)を取り付けるとともに、骨盤側の関節窩を人工物(ソケット)に置き換える。これに対し、BHRでは、大腿骨頭の表面のみを削って人工物(キャップ)を被せ、関節窩に受け皿(ソケット)を設置する。この術式では、大腿骨の大部分を残せるため、股関節での自然な荷重伝達が保たれやすく、術後も高い活動レベルを維持できる可能性が高まる。 Barrack氏らは、2006年6月から2013年12月にかけてバーンズ・ジューイッシュ病院でBHRを受けた35歳から59歳の患者224人の長期転帰を分析した。その結果、手術から15年後の時点で、何らかの原因で股関節の再手術を必要としなかった患者の割合は96.0%、感染以外の理由による再手術を必要としなかった患者の割合は97.4%に上ると推定されることが明らかになった。また、THAを受けた患者を対照として患者報告アウトカムを比較したところ、BHR群とTHA群の間で全体的な活動性について有意な差は認められなかった。さらに、術後も活動的な状態を維持していた患者の割合は、両群で同等だったが、BHR群の方が「高度に活動的」である患者の割合が高い傾向が認められた。 Barrack氏は、「BHRを受けた患者は、術後5~10年後の時点でランニングやバスケットボールなどの高強度の運動に復帰していた患者の割合がTHA群の3倍に上っていた。驚くべきことに、ほぼ全員が術後平均14年を経てもアクティブな活動に従事している」とワシントン大学医学部のニュースリリースで述べている。 50歳のJason Cutterさんも、BHRを受けた1人だ。Cutterさんは、何年も前から生じていた股関節の痛みがアマチュアホッケー選手やアウトドアマンとしての活動に支障を来たし始めていると感じていたが、その原因は加齢やストレッチ不足、住宅リフォームの副業で着用していた重い工具ベルトによる負担だと考えていた。しかし、所属しているレクリエーションリーグの元プロアイスホッケー選手らに勧められて整形外科医の診察を受けた。その結果としてBHRを受けたCutterさんは、術後3カ月で氷上に戻り、ホッケーのプレーを再開できるようになったという。(HealthDay News 2025年4月17日) https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/alternative-to-hip-replacement-helps-patients-remain-physically-active Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock