高血圧患者の最大30%が罹患しているとされる原発性アルドステロン症の有無を確認するために広く実施されている特定の検査はしばしば不正確であることが、新たな研究で示された。カルガリー大学(カナダ)医学部准教授のAlexander Leung氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に5月6日掲載された。Leung氏は、「この不正確な検査をなくすことで診断精度が向上し、治療開始までの時間が短縮される可能性がある。これは高血圧治療の領域における大きなパラダイムシフトとなる」と述べている。 米クリーブランド・クリニックの情報によると、原発性アルドステロン症とは、血中のナトリウムとカリウムの濃度を調節するホルモンであるアルドステロンが過剰に分泌される病態を指す。原発性アルドステロン症の人では塩分が体内に蓄積されやすくなり、高血圧が生じる。 原発性アルドステロン症には有効な治療法が存在するものの、診断に至るまでのプロセスが複雑なため、原発性アルドステロン症患者のうち、実際に診断され治療を受けている患者は全体の1%に満たないとされている。研究グループによると、血液検査でアルドステロンとレニンの濃度比が基準値を超え、原発性アルドステロン症が疑われた場合には、診断を確認するために、生理食塩水負荷試験などの試験が実施される。生理食塩水負荷試験では、患者に生理食塩水を点滴で投与し、医師が血液サンプルのアルドステロン濃度を測定する。 今回の研究では座位で行う生理食塩水負荷試験(seated saline suppression test;SSST)に着目し、156人を対象にSSSTが本当に原発性アルドステロン症の診断に役立つのかを検討した。対象者は、全例が原発性アルドステロン症のスクリーニング検査で陽性となり、その結果を確認するための二次検査としてSSSTを受けた。また全ての患者が、アルドステロンを過剰に産生している副腎の外科的摘出か、アルドステロンの働きを阻害する薬剤の投与のいずれかを受けた。この治療に対する患者の反応を、患者が実際に原発性アルドステロン症であるかどうか、つまりSSSTの正確性を評価する基準とした。 その結果、SSST後のアルドステロン濃度の中央値は、治療に反応した群で329pmol/L(四分位範囲227〜525)、反応しなかった群で255pmol/L(同162〜346)と重複しており、両群を区別することはできていなかった(ROC曲線下面積62.1%)。実際には、治療に反応した患者の多くが、SSSTでは誤って「正常」に分類されていたという。 研究グループは、「SSSTによる確認検査は、スクリーニング検査で陽性を示した患者の診断にはほとんど寄与しない。むしろ、SSSTを頼りにすると、誤った情報に基づきその後の治療が決定されてしまう可能性があり、治療に反応し得る患者であっても介入の機会を逸することになるかもしれない」と指摘している。 その上で研究グループは、「原発性アルドステロン症の診断手順からルーチンの確認検査を削除することは、診断精度の向上や、ほとんどの患者の診断や治療開始までに要する時間の短縮につながる可能性のあることが、われわれの研究で示された」と結論付けている。(HealthDay News 2025年5月6日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/follow-up-test-for-high-blood-pressure-condition-not-worthwhile-researchers-say Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
高血圧患者の最大30%が罹患しているとされる原発性アルドステロン症の有無を確認するために広く実施されている特定の検査はしばしば不正確であることが、新たな研究で示された。カルガリー大学(カナダ)医学部准教授のAlexander Leung氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に5月6日掲載された。Leung氏は、「この不正確な検査をなくすことで診断精度が向上し、治療開始までの時間が短縮される可能性がある。これは高血圧治療の領域における大きなパラダイムシフトとなる」と述べている。 米クリーブランド・クリニックの情報によると、原発性アルドステロン症とは、血中のナトリウムとカリウムの濃度を調節するホルモンであるアルドステロンが過剰に分泌される病態を指す。原発性アルドステロン症の人では塩分が体内に蓄積されやすくなり、高血圧が生じる。 原発性アルドステロン症には有効な治療法が存在するものの、診断に至るまでのプロセスが複雑なため、原発性アルドステロン症患者のうち、実際に診断され治療を受けている患者は全体の1%に満たないとされている。研究グループによると、血液検査でアルドステロンとレニンの濃度比が基準値を超え、原発性アルドステロン症が疑われた場合には、診断を確認するために、生理食塩水負荷試験などの試験が実施される。生理食塩水負荷試験では、患者に生理食塩水を点滴で投与し、医師が血液サンプルのアルドステロン濃度を測定する。 今回の研究では座位で行う生理食塩水負荷試験(seated saline suppression test;SSST)に着目し、156人を対象にSSSTが本当に原発性アルドステロン症の診断に役立つのかを検討した。対象者は、全例が原発性アルドステロン症のスクリーニング検査で陽性となり、その結果を確認するための二次検査としてSSSTを受けた。また全ての患者が、アルドステロンを過剰に産生している副腎の外科的摘出か、アルドステロンの働きを阻害する薬剤の投与のいずれかを受けた。この治療に対する患者の反応を、患者が実際に原発性アルドステロン症であるかどうか、つまりSSSTの正確性を評価する基準とした。 その結果、SSST後のアルドステロン濃度の中央値は、治療に反応した群で329pmol/L(四分位範囲227〜525)、反応しなかった群で255pmol/L(同162〜346)と重複しており、両群を区別することはできていなかった(ROC曲線下面積62.1%)。実際には、治療に反応した患者の多くが、SSSTでは誤って「正常」に分類されていたという。 研究グループは、「SSSTによる確認検査は、スクリーニング検査で陽性を示した患者の診断にはほとんど寄与しない。むしろ、SSSTを頼りにすると、誤った情報に基づきその後の治療が決定されてしまう可能性があり、治療に反応し得る患者であっても介入の機会を逸することになるかもしれない」と指摘している。 その上で研究グループは、「原発性アルドステロン症の診断手順からルーチンの確認検査を削除することは、診断精度の向上や、ほとんどの患者の診断や治療開始までに要する時間の短縮につながる可能性のあることが、われわれの研究で示された」と結論付けている。(HealthDay News 2025年5月6日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/follow-up-test-for-high-blood-pressure-condition-not-worthwhile-researchers-say Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock