スタチン系薬剤を使用しても低下しないLDLコレステロール(LDL-C)値が、obicetrapibと呼ばれる新規薬剤と既存薬のエゼチミブを組み合わせた配合剤を使用することで低下する可能性のあることが明らかになった。この配合剤によって、約3カ月間でLDL-C値が49%近く低下することが第3相臨床試験で示されたという。米クリーブランド・クリニックのAshish Sarraju氏らによるこの研究結果は、欧州アテローム性動脈硬化症学会(EAS Congress 2025、5月4~7日、英グラスゴー)で発表され、「The Lancet」に5月7日掲載された。 米コロンビア大学の心臓病専門医であるCorey Bradley氏は、「LDL-C高値は心臓病の主要なリスク因子の一つだが、われわれはそのリスクをうまくコントロールできていないのが現状だ。LDL-C高値の人は多く、それをコントロールするために複数の薬剤が必要になる」とNBCニュースに語った。 この臨床試験には、407人(年齢中央値68.0歳、女性43%)が参加した。どの参加者も、すでにコレステロールを下げる薬を使用していたが、LDL-C値は70mg/dLを超えていた。研究グループは参加者を、1)obicetrapib 10mgとエゼチミブ10mgを併用する群(併用療法群)、2)obicetrapib 10mgのみを使用する群(obicetrapib単剤群)、3)エゼチミブ10mgのみを使用する群(エゼチミブ単剤群)、4)プラセボを使用する群(プラセボ群)、の4群にランダムに割り付けた。また、全ての参加者が1)~4)に加えて通常の脂質異常症治療薬の使用を継続した。 その結果、治療から84日目の併用療法群でのLDL-C値の低下率は、プラセボ群と比較して−48.6%、エゼチミブ単剤群と比較して−27.9%、obicetrapib単剤群と比較して−16.8%であった。また、obicetrapib単剤群ではプラセボ群と比較して−31.9%のLDL-C値の低下が認められた。有害事象の発生率は、いずれの群でも同様であった。 Sarraju氏は「心血管疾患リスクがある、あるいはすでに心血管疾患がある場合には、LDL-Cをコントロールするために患者と医師に可能な限り多くの選択肢を提供する必要がある」と説明。また、「高リスク患者では、できるだけ早くLDL-C値を低下させ、できるだけ長く低下した状態を維持することが重要」としている。なお、高リスク患者とは、脳卒中や心筋梗塞の発症経験がある人や、脳卒中や心筋梗塞を発症する可能性が高い人のことを指す。たとえ高強度のスタチン系薬剤を使用しても、LDL-C値を安全なレベルまで下げるには不十分な場合がある。米国心臓協会(AHA)は、LDL-C値の管理目標値を100mg/dL未満とすることを推奨しているが、高リスク患者の場合は70mg/dL未満の維持を推奨している。 今回の臨床試験は、obicetrapibを製造しているオランダの製薬企業であるNewAmsterdam Pharma社の資金提供により実施された。同社の広報担当者がNBCニュースに語ったところによると、同社はこの配合剤の承認の可能性について、「年内に米食品医薬品局(FDA)と協議する予定」であるという。 一方、米マウントサイナイ・ヘルスシステムのRobert Rosenson氏は、obicetrapibと同じクラスの薬の中には脳卒中や心筋梗塞の予防効果を示すには至らなかったものがあることを指摘した上で、「慎重さは必要だが、希望を持っている」と述べている。 NewAmsterdam Pharma社は現在、この配合剤がコレステロール値の低下だけでなく主要な心血管イベントの予防効果を示すかどうかについても確認するため、別の臨床試験を実施中である。(HealthDay News 2025年5月8日) https://www.healthday.com/health-news/drug-center/when-statins-arent-enough-this-drug-may-help-lower-bad-cholesterol Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock