慢性疾患との闘いは人を疲弊させ、うつ病になりやすくするようだ。新たな研究で、長期にわたり複数の慢性疾患を抱えている状態(多疾患併存)は、うつ病リスクの上昇と関連することが明らかにされた。リスクの大きさは慢性疾患の組み合わせにより異なり、一部の組み合わせでは特にリスクが高くなることも示されたという。英エディンバラ大学一般診療学分野教授のBruce Guthrie氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に5月13日掲載された。 Guthrie氏らは、UKバイオバンク研究参加者のうち、ベースライン時に1つ以上の慢性疾患を有していた37〜73歳の成人14万2,005人のデータを、69種類の慢性疾患の有無に基づき分類した。次いで、4種類のクラスタリング手法を比較検討し、最適と判断されたモデルを選定した。その後、ベースライン時にうつ病の既往のなかった14万1,011人(うち3万551人はベースライン時に身体疾患のなかった対照)を対象に、多疾患併存の特徴による分類(クラスター)ごとに、その後のうつ病発症との関連を比較検討した。 平均6.8年に及ぶ追跡期間中に、5,904人(4.2%)がうつ病を発症していた。心疾患や糖尿病などの心代謝疾患を多く含むクラスターは全対象者に占める割合が特に高く、全体の15.5%、女性では19.7%、男性では24.2%に上った。うつ病発症のハザード比は、加齢黄斑変性・糖尿病での1.29から、極めて多岐にわたる慢性疾患での2.42(女性2.67、男性2.65)までの範囲であり、ほとんどのクラスターで身体疾患のない人と比べて高かった。対象者全体で顕著なリスク上昇が見られたのは、片頭痛(同1.96)、呼吸器疾患(同1.95)、心血管疾患・糖尿病(同1.78)などであった。男女別で分けて見ると、セリアック病などの消化器疾患は男女の双方で(男性:同2.06、女性:同1.83)、心血管疾患・慢性腎臓病・痛風は男性において(同1.87)うつ病リスクを大幅に上昇させていた。一方、女性では、関節や骨の健康問題がうつ病リスクを大幅に上昇させていた(同1.81)。 Guthrie氏は、「医療では身体的健康と精神的健康を全く別のものとして扱うことが多いが、この研究は、身体疾患を持つ人におけるうつ病の発症をより適切に予測し、管理する必要があることを示している」と述べている。 一方、論文の筆頭著者であるエディンバラ大学のLauren DeLong氏は、「身体的健康状態とうつ病の発症の間には明確な関連が見られたが、この研究はまだ始まりに過ぎない。本研究結果が他の研究者にも刺激を与え、身体的健康状態と精神的健康状態の関連性を調査・解明するきっかけになることを期待する」と述べている。(HealthDay News 2025年5月21日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/battling-multiple-chronic-illnesses-can-double-risk-of-depression Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock