体系的な運動プログラムが大腸がんサバイバーの生存期間を延ばし、再発の可能性を低下させたことが、大規模な国際研究で明らかになった。この運動プログラムは3年間に及ぶもので、その間のプログラム参加者のがんの再発や死亡のリスクは、運動教育の教材のみを配布された対照群よりも28%低いことが示された。アルバータ大学(カナダ)の運動とがんの専門家であるKerry Courneya氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO25、5月30日〜6月3日、米シカゴ)で発表されるとともに、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に6月1日掲載された。 ASCOの最高医学責任者であるJulie Gralow氏は、「この研究結果は、エビデンスの質としては最高レベルと言えるものだ。私は長い間、この分野を推進してきたものの、これほど強力なエビデンスが得られたのは今回が初めてであり、大いに満足している」とAP通信に語った。 この研究には、カナダ、オーストラリア、イスラエル、フランス、米国、英国の大腸(結腸)腺がん患者889人が参加した。患者のがんはステージⅢまたは高リスクのステージⅡで、全員が腫瘍の根治的切除と過去2〜6カ月以内に術後補助化学療法を完了していた。889人のうち444人は、運動や栄養改善を促す健康教育の教材の提供と標準的なサーベイランスを受ける対照群に、残る445人は対照群と同じ教材に加え、大腸がん患者のために開発された運動のガイドブックの提供と、認定運動コンサルタントのサポートを3年間受ける群(運動群)にランダムに割り付けられた。運動プログラムでは、最初の6カ月間は隔週で対面での行動支援と監督付き運動セッション(各12回、必須)に加え、隔週の推奨運動セッションが行われた。次の6カ月間は、隔週で行動支援(対面またはリモート)を行い、対面時のみ運動も実施した。残りの2年間は、月1回の行動支援(対面またはリモート)を行い、対面時のみ運動を行った。 中央値7.9年の追跡期間における無病生存期間(DFS)は、運動群の方が対照群よりも有意に長く、再発・新たながんの発生・死亡のいずれかが生じるリスクは対照群よりも28%低いことが明らかになった(ハザード比0.72、95%信頼区間〔CI〕0.55〜0.94)。5年間の無病生存率は、運動群で80.3%、対照群で73.9%であり、両群間の差は統計学的に有意だった(差6.4パーセントポイント、95%CI 0.6〜12.2)。また、運動群では対照群に比べて全生存期間が有意に長く(死亡のハザード比0.63、95%CI 0.43〜0.94)、8年間の全生存率は運動群で90.3%、対照群で83.2%であった(差7.1パーセントポイント、95%CI 1.8〜12.3)。 本試験に参加してウォーキングを定期的に行ったカナダのオンタリオ州キングストン在住のTerri Swain-Collinsさん(62歳)は、「ウォーキングは、気分を良くするために自分でできるものだ。コンサルタントとの面談時に『何も運動をしなかった』とは言いたくないので、常に何らかの活動をして、それを必ずやり遂げるようにした」と振り返る。Swain-Collinsさんは、コンサルタントのおかげでモチベーションを保つことができたと語った。 論文の上席著者である、キングストン健康科学センター(カナダ)のChristopher Booth氏は、このプログラムの費用は患者1人当たりわずか数千ドルで済む可能性があるとし、「非常に手頃な介入」で多くの人がより長く生きられるようになる可能性があると期待を示している。また、この研究をレビューした米ダナ・ファーバーがん研究所のJeffrey Meyerhardt氏は、「運動とがん再発の減少および生存率の向上との関連を示した初めてのランダム化比較試験だ」と評価している。 研究グループは現在、参加者の血液サンプルを調査し、運動がなぜがんサバイバーの生存に有益であるのかの解明を進めている。(HealthDay News 2025年6月2日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/exercise-cuts-colon-cancer-recurrence-and-boosts-survival-study-finds Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
体系的な運動プログラムが大腸がんサバイバーの生存期間を延ばし、再発の可能性を低下させたことが、大規模な国際研究で明らかになった。この運動プログラムは3年間に及ぶもので、その間のプログラム参加者のがんの再発や死亡のリスクは、運動教育の教材のみを配布された対照群よりも28%低いことが示された。アルバータ大学(カナダ)の運動とがんの専門家であるKerry Courneya氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO25、5月30日〜6月3日、米シカゴ)で発表されるとともに、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に6月1日掲載された。 ASCOの最高医学責任者であるJulie Gralow氏は、「この研究結果は、エビデンスの質としては最高レベルと言えるものだ。私は長い間、この分野を推進してきたものの、これほど強力なエビデンスが得られたのは今回が初めてであり、大いに満足している」とAP通信に語った。 この研究には、カナダ、オーストラリア、イスラエル、フランス、米国、英国の大腸(結腸)腺がん患者889人が参加した。患者のがんはステージⅢまたは高リスクのステージⅡで、全員が腫瘍の根治的切除と過去2〜6カ月以内に術後補助化学療法を完了していた。889人のうち444人は、運動や栄養改善を促す健康教育の教材の提供と標準的なサーベイランスを受ける対照群に、残る445人は対照群と同じ教材に加え、大腸がん患者のために開発された運動のガイドブックの提供と、認定運動コンサルタントのサポートを3年間受ける群(運動群)にランダムに割り付けられた。運動プログラムでは、最初の6カ月間は隔週で対面での行動支援と監督付き運動セッション(各12回、必須)に加え、隔週の推奨運動セッションが行われた。次の6カ月間は、隔週で行動支援(対面またはリモート)を行い、対面時のみ運動も実施した。残りの2年間は、月1回の行動支援(対面またはリモート)を行い、対面時のみ運動を行った。 中央値7.9年の追跡期間における無病生存期間(DFS)は、運動群の方が対照群よりも有意に長く、再発・新たながんの発生・死亡のいずれかが生じるリスクは対照群よりも28%低いことが明らかになった(ハザード比0.72、95%信頼区間〔CI〕0.55〜0.94)。5年間の無病生存率は、運動群で80.3%、対照群で73.9%であり、両群間の差は統計学的に有意だった(差6.4パーセントポイント、95%CI 0.6〜12.2)。また、運動群では対照群に比べて全生存期間が有意に長く(死亡のハザード比0.63、95%CI 0.43〜0.94)、8年間の全生存率は運動群で90.3%、対照群で83.2%であった(差7.1パーセントポイント、95%CI 1.8〜12.3)。 本試験に参加してウォーキングを定期的に行ったカナダのオンタリオ州キングストン在住のTerri Swain-Collinsさん(62歳)は、「ウォーキングは、気分を良くするために自分でできるものだ。コンサルタントとの面談時に『何も運動をしなかった』とは言いたくないので、常に何らかの活動をして、それを必ずやり遂げるようにした」と振り返る。Swain-Collinsさんは、コンサルタントのおかげでモチベーションを保つことができたと語った。 論文の上席著者である、キングストン健康科学センター(カナダ)のChristopher Booth氏は、このプログラムの費用は患者1人当たりわずか数千ドルで済む可能性があるとし、「非常に手頃な介入」で多くの人がより長く生きられるようになる可能性があると期待を示している。また、この研究をレビューした米ダナ・ファーバーがん研究所のJeffrey Meyerhardt氏は、「運動とがん再発の減少および生存率の向上との関連を示した初めてのランダム化比較試験だ」と評価している。 研究グループは現在、参加者の血液サンプルを調査し、運動がなぜがんサバイバーの生存に有益であるのかの解明を進めている。(HealthDay News 2025年6月2日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/exercise-cuts-colon-cancer-recurrence-and-boosts-survival-study-finds Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock