子どもの健康状態に関する親やその他の保護者(以下、保護者)の直感的な懸念は、適切であることが少なくないようだ。救急外来(ED)を受診した小児患者を対象にした研究で、子どもの容体悪化に対する保護者の懸念はその後の重症化の予測因子となり得ることが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)小児科のErin Mills氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Child & Adolescent Health」に5月29日掲載された。 この研究は、2020年11月1日から2022年12月31日の間にモナシュ小児病院のEDを受診した19歳未満の患者のうち、医療記録が完全で、「子どもの容体悪化に対する懸念がありますか」という質問に対する保護者の回答が記録されていた7万3,845人を対象にしたもの。このうち2万4,239人(男子47.2%)では、子どもの容体に関する保護者の回答が1回以上記録されていた。回答の総数は18万9,708件に上り、そのうちの8,937件(4.7%)には容体悪化に対する懸念が示されていた。 懸念を報告した保護者の子どもでは、懸念を報告しなかった保護者の子どもと比べて、集中治療室(ICU)入室(6.9%対1.8%)、人工呼吸器の装着(1.1%対0.2%)、入院中の死亡(0.1%対0.02%)の割合がいずれも高かった。多変量解析からは、子どもの容体悪化に対する保護者の懸念は、ICU入室(調整オッズ比1.72、95%信頼区間1.40〜2.11)、および人工呼吸器装着(同1.85、1.36〜3.15)と有意に関連していたが、入院中の死亡との関連は統計学的に有意ではなかった。また、保護者の懸念とICU入室との関連(同1.72、1.40〜2.11)は、心拍数や呼吸数の異常などの異常バイタルサインとICU入室との関連(調整オッズ比は1.12〜1.26の間)よりも強いことも示された。 研究グループは、「これらの結果は、医師は保護者を重要な情報源と見なし、子どもの容体を評価する際には積極的に保護者に意見を求めるべきであることを示している」と述べている。 研究グループはまた、「小児科の研修では一般的に、『保護者の話に耳を傾けなさい』が合言葉とされている。これは、幼い子どもの評価は難しいため、子どもの様子が『どうもおかしい』という保護者の直感的な懸念は、常に真剣に受け止めるべきであることを意味する」と述べる。さらに、「保護者は、典型的なバイタルサイン以外にも、悪化の兆候かもしれない子どもの微妙な行動変化の兆候に気付くことが多いため、臨床医よりも先に容体悪化に気付く可能性がある」と付け加えている。(HealthDay News 2025年5月30日) https://www.healthday.com/health-news/child-health/parents-can-sense-potential-critical-illness-in-their-kids-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
子どもの健康状態に関する親やその他の保護者(以下、保護者)の直感的な懸念は、適切であることが少なくないようだ。救急外来(ED)を受診した小児患者を対象にした研究で、子どもの容体悪化に対する保護者の懸念はその後の重症化の予測因子となり得ることが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)小児科のErin Mills氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Child & Adolescent Health」に5月29日掲載された。 この研究は、2020年11月1日から2022年12月31日の間にモナシュ小児病院のEDを受診した19歳未満の患者のうち、医療記録が完全で、「子どもの容体悪化に対する懸念がありますか」という質問に対する保護者の回答が記録されていた7万3,845人を対象にしたもの。このうち2万4,239人(男子47.2%)では、子どもの容体に関する保護者の回答が1回以上記録されていた。回答の総数は18万9,708件に上り、そのうちの8,937件(4.7%)には容体悪化に対する懸念が示されていた。 懸念を報告した保護者の子どもでは、懸念を報告しなかった保護者の子どもと比べて、集中治療室(ICU)入室(6.9%対1.8%)、人工呼吸器の装着(1.1%対0.2%)、入院中の死亡(0.1%対0.02%)の割合がいずれも高かった。多変量解析からは、子どもの容体悪化に対する保護者の懸念は、ICU入室(調整オッズ比1.72、95%信頼区間1.40〜2.11)、および人工呼吸器装着(同1.85、1.36〜3.15)と有意に関連していたが、入院中の死亡との関連は統計学的に有意ではなかった。また、保護者の懸念とICU入室との関連(同1.72、1.40〜2.11)は、心拍数や呼吸数の異常などの異常バイタルサインとICU入室との関連(調整オッズ比は1.12〜1.26の間)よりも強いことも示された。 研究グループは、「これらの結果は、医師は保護者を重要な情報源と見なし、子どもの容体を評価する際には積極的に保護者に意見を求めるべきであることを示している」と述べている。 研究グループはまた、「小児科の研修では一般的に、『保護者の話に耳を傾けなさい』が合言葉とされている。これは、幼い子どもの評価は難しいため、子どもの様子が『どうもおかしい』という保護者の直感的な懸念は、常に真剣に受け止めるべきであることを意味する」と述べる。さらに、「保護者は、典型的なバイタルサイン以外にも、悪化の兆候かもしれない子どもの微妙な行動変化の兆候に気付くことが多いため、臨床医よりも先に容体悪化に気付く可能性がある」と付け加えている。(HealthDay News 2025年5月30日) https://www.healthday.com/health-news/child-health/parents-can-sense-potential-critical-illness-in-their-kids-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock