化学療法と免疫療法の併用は、胃がんや胃食道接合部がん患者の転帰改善につながる可能性があるとする第3相臨床試験の結果が報告された。ヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)と化学療法による併用療法を受けた患者は、化学療法のみを受けた患者に比べて、治療後に再発の兆候がなく生存している割合(無イベント生存率)が有意に高かった。デュルバルマブの製造元であるアストラゼネカ社の資金提供を受けて米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのYelena Janjigian氏らが実施したこの試験の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に6月1日掲載された。 切除可能な局所進行の胃がんや胃食道接合部がんに対する化学療法は、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセルを組み合わせたFLOT療法が標準治療となっている。これらのがんは、世界的に見ても最も致死率の高いがんの一つであり、治癒率は40%程度と低く、再発する患者の多くは手術後3年以内に再発する。5年生存率も不良で、生存している患者は半数に満たない。 点滴薬のデュルバルマブは、がん細胞などの表面にあるPD-L1に結合し、PD-L1がT細胞表面のPD-1と結合するのを阻止することで免疫機能を活性化させ、がん細胞を攻撃・死滅させると考えられている。同薬剤はすでに、肺がん、胆管がん、胆嚢がん、子宮内膜がん、膀胱がんなど、幅広いがんの治療に使用されている。 この臨床試験では、切除可能な胃がんまたは胃食道接合部がん患者を1対1の割合で、FLOT療法に加え、4週間ごとにデュルバルマブ(1,500mg)またはプラセボを投与する群に474人ずつ割り付けた。FLOT療法は、1サイクルを2週間間隔(day 1およびday 15)で実施し、術前・術後にそれぞれ2サイクルずつ、合計4サイクル行われた。デュルバルマブまたはプラセボは、FLOT療法後に追加で10サイクル投与された。主要評価項目は無イベント生存率、副次評価項目は全生存期間および病理学的完全奏効率などであった。 2年無イベント生存率は、デュルバルマブ群で67.4%、プラセボ群で58.5%と推定され、デュルバルマブ群ではイベント発生または死亡のリスクが29%低かった(ハザード比0.71、95%信頼区間0.58~0.86、P<0.001)。また、2年生存率は、デュルバルマブ群で75.7%、プラセボ群で70.4%であり、治療開始から12カ月間は両群間に有意な差は見られなかったが(同0.99、0.70〜1.39)、12カ月以降では、デュルバルマブ群で33%のリスク低下が見られた(同0.67、0.50〜0.90)。さらに、病理学的完全奏効を達成した割合は、デュルバルマブ群19.2%、プラセボ群7.2%であり、がんが完全に消えた患者の割合は、デュルバルマブ群の方がプラセボ群よりも約2.7倍高かった(相対リスク2.69、95%信頼区間1.86〜3.90)。グレード3または4の有害事象が発生したのは、デュルバルマブ群で340人(71.6%)、プラセボ群で334人(71.2%)であった。 Janjigian氏は、「この結果は、胃がんや胃食道接合部がんなどの厳しい病気の診断を受けた患者にとって大きな前進だ。治療が奏効してがんの兆候が認められなくなり、『治りました』と患者に伝えられることは、腫瘍学に携わる中で最もやりがいを感じる瞬間の一つだ。今回の結果は、世界中のより多くの患者がそうした治療成果を得られる未来にわれわれを近付けるものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年6月6日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/immunotherapy-effective-against-stomach-cancer Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
化学療法と免疫療法の併用は、胃がんや胃食道接合部がん患者の転帰改善につながる可能性があるとする第3相臨床試験の結果が報告された。ヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)と化学療法による併用療法を受けた患者は、化学療法のみを受けた患者に比べて、治療後に再発の兆候がなく生存している割合(無イベント生存率)が有意に高かった。デュルバルマブの製造元であるアストラゼネカ社の資金提供を受けて米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのYelena Janjigian氏らが実施したこの試験の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に6月1日掲載された。 切除可能な局所進行の胃がんや胃食道接合部がんに対する化学療法は、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセルを組み合わせたFLOT療法が標準治療となっている。これらのがんは、世界的に見ても最も致死率の高いがんの一つであり、治癒率は40%程度と低く、再発する患者の多くは手術後3年以内に再発する。5年生存率も不良で、生存している患者は半数に満たない。 点滴薬のデュルバルマブは、がん細胞などの表面にあるPD-L1に結合し、PD-L1がT細胞表面のPD-1と結合するのを阻止することで免疫機能を活性化させ、がん細胞を攻撃・死滅させると考えられている。同薬剤はすでに、肺がん、胆管がん、胆嚢がん、子宮内膜がん、膀胱がんなど、幅広いがんの治療に使用されている。 この臨床試験では、切除可能な胃がんまたは胃食道接合部がん患者を1対1の割合で、FLOT療法に加え、4週間ごとにデュルバルマブ(1,500mg)またはプラセボを投与する群に474人ずつ割り付けた。FLOT療法は、1サイクルを2週間間隔(day 1およびday 15)で実施し、術前・術後にそれぞれ2サイクルずつ、合計4サイクル行われた。デュルバルマブまたはプラセボは、FLOT療法後に追加で10サイクル投与された。主要評価項目は無イベント生存率、副次評価項目は全生存期間および病理学的完全奏効率などであった。 2年無イベント生存率は、デュルバルマブ群で67.4%、プラセボ群で58.5%と推定され、デュルバルマブ群ではイベント発生または死亡のリスクが29%低かった(ハザード比0.71、95%信頼区間0.58~0.86、P<0.001)。また、2年生存率は、デュルバルマブ群で75.7%、プラセボ群で70.4%であり、治療開始から12カ月間は両群間に有意な差は見られなかったが(同0.99、0.70〜1.39)、12カ月以降では、デュルバルマブ群で33%のリスク低下が見られた(同0.67、0.50〜0.90)。さらに、病理学的完全奏効を達成した割合は、デュルバルマブ群19.2%、プラセボ群7.2%であり、がんが完全に消えた患者の割合は、デュルバルマブ群の方がプラセボ群よりも約2.7倍高かった(相対リスク2.69、95%信頼区間1.86〜3.90)。グレード3または4の有害事象が発生したのは、デュルバルマブ群で340人(71.6%)、プラセボ群で334人(71.2%)であった。 Janjigian氏は、「この結果は、胃がんや胃食道接合部がんなどの厳しい病気の診断を受けた患者にとって大きな前進だ。治療が奏効してがんの兆候が認められなくなり、『治りました』と患者に伝えられることは、腫瘍学に携わる中で最もやりがいを感じる瞬間の一つだ。今回の結果は、世界中のより多くの患者がそうした治療成果を得られる未来にわれわれを近付けるものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年6月6日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/immunotherapy-effective-against-stomach-cancer Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock