大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。 大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。 メディケアは現在、mt-sDNA検査とCTCの両方をカバーしている。このことからPickhardt氏らは、これらの侵襲性の低い2種類の検査方法の臨床的有効性と費用対効果を直接比較することにした。そのために同氏らは、米疾病対策センター(CDC)の2017年のデータを基にマルコフモデル(ある状態の別の状態への変化を確率的に予測するモデル)を構築し、45歳の米国人口を代表する1万人の仮想的なコホートを対象に、3つの大腸がんスクリーニング戦略を評価した。3つの戦略とは、1)3年ごとのmt-sDNA検査、2)従来型CTC戦略(6mm以上のポリープは全て内視鏡的切除を行い、検査を5年間隔で実施)、3)CTCサーベイランス戦略(6〜9mmのポリープに対しては3年ごとにCTCで経過観察を行い、10mm位以上のポリープは内視鏡的切除を行う)であった。 その結果、大腸がんの累積発症率は、スクリーニングを受けない場合での7.5%(752人)から、mt-sDNA検査を受けることで59%(310人)、従来型CTC戦略を受けることで75%(190人)、CTCサーベイランス戦略を受けることで70%(223人)減少することが示された。 また、全ての戦略において増分費用効果比(ICER)が支払い許容額の基準である10万ドル/1QALY(質調整生存年)を大きく下回り、これらの戦略はスクリーニングを受けない場合と比べて費用対効果が高いと考えられた。1QALY獲得するのにかかる費用は、mt-sDNA検査で8,878ドル(1ドル145円換算で約128万7,000円)であった。一方、CTCの両戦略は、スクリーニングを行わない場合よりも1人当たりの総医療費が少なく(スクリーニングなし:4,955ドル〔約71万8,500円〕、CTCサーベイランス戦略:3,913ドル〔約56万7,000円〕、従来型CTC戦略:4.422ドル〔約64万1,000円〕)、費用対効果が優れているとともに医療費の節約にもつながることが示された。 研究グループは、「これらの結果は、CTCが従来の大腸内視鏡検査やmt-sDNA検査の中に「正当な最前線のスクリーニングオプション」として加わることができることを示している」と結論付けている。 ただし、CTCを受けるには、検査の前に強力な下剤を使用して結腸を空にする必要がある。それでもPickhardt氏は、「CTCは骨粗鬆症や動脈硬化などの他の問題を調べるのにも有用だ」とメリットを強調している。 研究グループはまた、今回のシミュレーションはこれまでの研究結果と一致しているものの、シミュレーションでは検査方法と大腸がん発症率の低下との間の直接的な因果関係を証明することはできないことにも言及している。(HealthDay News 2025年6月13日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/ct-scans-outperform-dna-stool-tests-in-colon-cancer-screening-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock/Ovidiu Iordachi
大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。 大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。 メディケアは現在、mt-sDNA検査とCTCの両方をカバーしている。このことからPickhardt氏らは、これらの侵襲性の低い2種類の検査方法の臨床的有効性と費用対効果を直接比較することにした。そのために同氏らは、米疾病対策センター(CDC)の2017年のデータを基にマルコフモデル(ある状態の別の状態への変化を確率的に予測するモデル)を構築し、45歳の米国人口を代表する1万人の仮想的なコホートを対象に、3つの大腸がんスクリーニング戦略を評価した。3つの戦略とは、1)3年ごとのmt-sDNA検査、2)従来型CTC戦略(6mm以上のポリープは全て内視鏡的切除を行い、検査を5年間隔で実施)、3)CTCサーベイランス戦略(6〜9mmのポリープに対しては3年ごとにCTCで経過観察を行い、10mm位以上のポリープは内視鏡的切除を行う)であった。 その結果、大腸がんの累積発症率は、スクリーニングを受けない場合での7.5%(752人)から、mt-sDNA検査を受けることで59%(310人)、従来型CTC戦略を受けることで75%(190人)、CTCサーベイランス戦略を受けることで70%(223人)減少することが示された。 また、全ての戦略において増分費用効果比(ICER)が支払い許容額の基準である10万ドル/1QALY(質調整生存年)を大きく下回り、これらの戦略はスクリーニングを受けない場合と比べて費用対効果が高いと考えられた。1QALY獲得するのにかかる費用は、mt-sDNA検査で8,878ドル(1ドル145円換算で約128万7,000円)であった。一方、CTCの両戦略は、スクリーニングを行わない場合よりも1人当たりの総医療費が少なく(スクリーニングなし:4,955ドル〔約71万8,500円〕、CTCサーベイランス戦略:3,913ドル〔約56万7,000円〕、従来型CTC戦略:4.422ドル〔約64万1,000円〕)、費用対効果が優れているとともに医療費の節約にもつながることが示された。 研究グループは、「これらの結果は、CTCが従来の大腸内視鏡検査やmt-sDNA検査の中に「正当な最前線のスクリーニングオプション」として加わることができることを示している」と結論付けている。 ただし、CTCを受けるには、検査の前に強力な下剤を使用して結腸を空にする必要がある。それでもPickhardt氏は、「CTCは骨粗鬆症や動脈硬化などの他の問題を調べるのにも有用だ」とメリットを強調している。 研究グループはまた、今回のシミュレーションはこれまでの研究結果と一致しているものの、シミュレーションでは検査方法と大腸がん発症率の低下との間の直接的な因果関係を証明することはできないことにも言及している。(HealthDay News 2025年6月13日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/ct-scans-outperform-dna-stool-tests-in-colon-cancer-screening-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock/Ovidiu Iordachi