認知症患者の介護者(以下、認知症介護者)は、健康的ではない脳の老化に関連するライフスタイル因子を持っている傾向が強く、そのため自身の認知症リスクも高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。米アルツハイマー病協会のPublic Health Center of Excellence on Dementia Risk Reduction(認知症リスク低減のための公衆衛生卓越センター)および米ミネソタ大学を拠点とするPublic Health Center of Excellence on Dementia Caregiving(認知症の介護に関する公衆衛生卓越センター)によるこの研究は、「Risk Factors For Cognitive Decline Among Dementia Caregivers(認知症介護者における認知機能低下のリスク因子)」のタイトルで6月12日に公表された。 この研究では、連邦公衆衛生機関が2021年から2022年にかけて米国の47州から収集した介護者の健康に関するデータを分析し、認知症介護者が一般人口と比べて、修正可能な認知症のリスク因子をより多く持っているのかが検討された。修正可能な認知症のリスク因子とは、糖尿病、肥満、運動不足、喫煙、睡眠不足、高血圧の6つである。 その結果、認知症介護者は、一般人口と比べて修正可能な認知症の6つのリスク因子のうち5つについて該当すると報告する傾向の強いことが明らかになった。具体的には、介護者で個々の因子が該当する割合は一般人口と比べて、喫煙で30%、高血圧で27%、睡眠不足で21%、糖尿病で12%、肥満で8%高かった。運動不足についてのみ、介護者での該当者の割合は一般人口よりも9%少なかったが、これは、介護の身体的負担が大きいためと考えられた。 該当するリスク因子の数が1つ以上の人の割合は、認知症介護者で59.1%、一般人口で56.1%、複数の人の割合は24.3%と21.3%であり、いずれも認知症介護者の方が一般人口よりもわずかに高かった。この傾向は45歳未満の認知症介護者で特に顕著であり、同年代の一般人口と比べて、該当するリスク因子の数が1つ以上の人の割合は13%、複数の人の割合は40%高かった。また、これらの人では同年代の人と比べて、喫煙率が86%、高血圧の割合が46%、睡眠時間が6時間未満である割合が29%高かった。 これらの結果について、米アルツハイマー病協会の健康政策のシニアバイスプレジデントを務めるMatthew Baumgart氏は、「これは、認知症介護者の脆弱性を明示する結果だ。認知症介護者は、家族や友人の介護に忙しく、自身の健康を顧みないことが多い。この分析結果は、公衆衛生分野にとって認知症介護者の健康問題に対処する戦略の策定を促す警鐘となるはずだ」とニュースリリースの中で述べている。 ミネソタ大学公衆衛生学部健康的な老化とイノベーションセンター所長のJoseph Gaugler氏は、「人口全体と比較して認知症介護者において保有率が高い認知症のリスク因子を特定することで、公衆衛生政策立案者は資源の配分と介入の適切な優先順位付けと調整を行うことができる」と述べている。(HealthDay News 2025年6月17日) https://www.healthday.com/health-news/caregiving/dementia-caregivers-themselves-at-higher-risk-for-brain-aging Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock/ChayTee
認知症患者の介護者(以下、認知症介護者)は、健康的ではない脳の老化に関連するライフスタイル因子を持っている傾向が強く、そのため自身の認知症リスクも高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。米アルツハイマー病協会のPublic Health Center of Excellence on Dementia Risk Reduction(認知症リスク低減のための公衆衛生卓越センター)および米ミネソタ大学を拠点とするPublic Health Center of Excellence on Dementia Caregiving(認知症の介護に関する公衆衛生卓越センター)によるこの研究は、「Risk Factors For Cognitive Decline Among Dementia Caregivers(認知症介護者における認知機能低下のリスク因子)」のタイトルで6月12日に公表された。 この研究では、連邦公衆衛生機関が2021年から2022年にかけて米国の47州から収集した介護者の健康に関するデータを分析し、認知症介護者が一般人口と比べて、修正可能な認知症のリスク因子をより多く持っているのかが検討された。修正可能な認知症のリスク因子とは、糖尿病、肥満、運動不足、喫煙、睡眠不足、高血圧の6つである。 その結果、認知症介護者は、一般人口と比べて修正可能な認知症の6つのリスク因子のうち5つについて該当すると報告する傾向の強いことが明らかになった。具体的には、介護者で個々の因子が該当する割合は一般人口と比べて、喫煙で30%、高血圧で27%、睡眠不足で21%、糖尿病で12%、肥満で8%高かった。運動不足についてのみ、介護者での該当者の割合は一般人口よりも9%少なかったが、これは、介護の身体的負担が大きいためと考えられた。 該当するリスク因子の数が1つ以上の人の割合は、認知症介護者で59.1%、一般人口で56.1%、複数の人の割合は24.3%と21.3%であり、いずれも認知症介護者の方が一般人口よりもわずかに高かった。この傾向は45歳未満の認知症介護者で特に顕著であり、同年代の一般人口と比べて、該当するリスク因子の数が1つ以上の人の割合は13%、複数の人の割合は40%高かった。また、これらの人では同年代の人と比べて、喫煙率が86%、高血圧の割合が46%、睡眠時間が6時間未満である割合が29%高かった。 これらの結果について、米アルツハイマー病協会の健康政策のシニアバイスプレジデントを務めるMatthew Baumgart氏は、「これは、認知症介護者の脆弱性を明示する結果だ。認知症介護者は、家族や友人の介護に忙しく、自身の健康を顧みないことが多い。この分析結果は、公衆衛生分野にとって認知症介護者の健康問題に対処する戦略の策定を促す警鐘となるはずだ」とニュースリリースの中で述べている。 ミネソタ大学公衆衛生学部健康的な老化とイノベーションセンター所長のJoseph Gaugler氏は、「人口全体と比較して認知症介護者において保有率が高い認知症のリスク因子を特定することで、公衆衛生政策立案者は資源の配分と介入の適切な優先順位付けと調整を行うことができる」と述べている。(HealthDay News 2025年6月17日) https://www.healthday.com/health-news/caregiving/dementia-caregivers-themselves-at-higher-risk-for-brain-aging Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock/ChayTee