ウォーキングは慢性腰痛の予防に効果があるようだ。1日当たりの歩行時間が78分以上の人は78分未満の人に比べて慢性腰痛の発症リスクが低いことが新たな研究で示された。この研究によると、リスク低下に関連するのは歩行の量(時間)と強度であり、通常のウォーキングよりも強度を上げるパワーウォーキングも慢性腰痛の予防に効果があるものの、効果の大きさは長時間のウォーキングの方が大きかったという。ノルウェー科学技術大学公衆衛生・看護学部のRayane Haddadj氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月13日掲載された。 この研究でHaddadj氏らは、ノルウェーのトロンデラーグ健康調査(Trøndelag Health Study;HUNT)のデータを用いて、加速度計で測定した毎日の歩行の量および強度と慢性腰痛リスクとの関連を調査した。2017〜2019年をベースラインとし、ベースライン時に慢性腰痛のなかった20歳以上の成人1万1,194人(平均年齢55.3歳、女性58.6%)を2021〜2023年まで追跡した。これらの参加者の歩行量と歩行強度を、1週間にわたり太ももと背中に装着した2つの加速度計の測定データを基に、歩行量は歩行時間、歩行強度は1分当たりの代謝当量(METs)で表した。慢性腰痛は、過去12カ月以内に3カ月以上続く腰の痛みと定義し、追跡調査時に参加者にその有無を報告してもらった。 追跡調査時点(追跡平均期間4.2年)に、1,659人(14.8%)が慢性腰痛を報告していた。解析の結果、歩行量が多いほど、また、歩行強度が高いほど、慢性腰痛リスクは低下するという逆相関の関係が認められた。具体的には、1日の歩行時間が78未満の群と比べて、78〜100分以内の群では慢性腰痛リスクが13%(相対リスク0.87、95%信頼区間0.77〜0.98)、101~124分の群では23%(同0.77、0.68〜0.87)、125分以上の群では24%(同0.76、0.67〜0.87)低かった。同様に、歩行強度が1分当たり3METs未満の群と比べて、3.00〜3.11METsの群では慢性腰痛リスクが15%(同0.85、0.75〜0.96)、3.12~3.26METsの群では18%(同0.82、0.72〜0.93)、3.27METs以上の群では18%(同0.82、0.72〜0.93)低かった。 こうした結果からHaddadj氏らは、「これらの結果は、ウォーキングを促進する政策や公衆衛生戦略が慢性腰痛の発生を減らすのに役立つ可能性があることを示唆している」と結論付けている。 研究グループによると、現状では、身体活動は腰痛に関しては二次的な重要性を持つ予防手段と考えられていると指摘する。しかし研究グループは、今回の研究結果は、歩くことが腰の健康の増進にとどまらない、より大きな変化を健康にもたらす可能性があることを示しているとの見方を示す。その上で、「ウォーキングは、誰でも取り入れやすく、実行しやすいことに加え、健康にとっては慢性腰痛のリスク低減以外にも多くの効果があることから、その役割がさらに推進される可能性がある」と述べている。 ただし、本研究結果は観察研究であり、ウォーキングと腰痛の直接的な因果関係を証明するものではないため、さらなる研究で結果を確認する必要がある。(HealthDay News 2025年6月17日) https://www.healthday.com/health-news/pain-management/this-common-activity-reduces-risk-of-low-back-pain-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
ウォーキングは慢性腰痛の予防に効果があるようだ。1日当たりの歩行時間が78分以上の人は78分未満の人に比べて慢性腰痛の発症リスクが低いことが新たな研究で示された。この研究によると、リスク低下に関連するのは歩行の量(時間)と強度であり、通常のウォーキングよりも強度を上げるパワーウォーキングも慢性腰痛の予防に効果があるものの、効果の大きさは長時間のウォーキングの方が大きかったという。ノルウェー科学技術大学公衆衛生・看護学部のRayane Haddadj氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月13日掲載された。 この研究でHaddadj氏らは、ノルウェーのトロンデラーグ健康調査(Trøndelag Health Study;HUNT)のデータを用いて、加速度計で測定した毎日の歩行の量および強度と慢性腰痛リスクとの関連を調査した。2017〜2019年をベースラインとし、ベースライン時に慢性腰痛のなかった20歳以上の成人1万1,194人(平均年齢55.3歳、女性58.6%)を2021〜2023年まで追跡した。これらの参加者の歩行量と歩行強度を、1週間にわたり太ももと背中に装着した2つの加速度計の測定データを基に、歩行量は歩行時間、歩行強度は1分当たりの代謝当量(METs)で表した。慢性腰痛は、過去12カ月以内に3カ月以上続く腰の痛みと定義し、追跡調査時に参加者にその有無を報告してもらった。 追跡調査時点(追跡平均期間4.2年)に、1,659人(14.8%)が慢性腰痛を報告していた。解析の結果、歩行量が多いほど、また、歩行強度が高いほど、慢性腰痛リスクは低下するという逆相関の関係が認められた。具体的には、1日の歩行時間が78未満の群と比べて、78〜100分以内の群では慢性腰痛リスクが13%(相対リスク0.87、95%信頼区間0.77〜0.98)、101~124分の群では23%(同0.77、0.68〜0.87)、125分以上の群では24%(同0.76、0.67〜0.87)低かった。同様に、歩行強度が1分当たり3METs未満の群と比べて、3.00〜3.11METsの群では慢性腰痛リスクが15%(同0.85、0.75〜0.96)、3.12~3.26METsの群では18%(同0.82、0.72〜0.93)、3.27METs以上の群では18%(同0.82、0.72〜0.93)低かった。 こうした結果からHaddadj氏らは、「これらの結果は、ウォーキングを促進する政策や公衆衛生戦略が慢性腰痛の発生を減らすのに役立つ可能性があることを示唆している」と結論付けている。 研究グループによると、現状では、身体活動は腰痛に関しては二次的な重要性を持つ予防手段と考えられていると指摘する。しかし研究グループは、今回の研究結果は、歩くことが腰の健康の増進にとどまらない、より大きな変化を健康にもたらす可能性があることを示しているとの見方を示す。その上で、「ウォーキングは、誰でも取り入れやすく、実行しやすいことに加え、健康にとっては慢性腰痛のリスク低減以外にも多くの効果があることから、その役割がさらに推進される可能性がある」と述べている。 ただし、本研究結果は観察研究であり、ウォーキングと腰痛の直接的な因果関係を証明するものではないため、さらなる研究で結果を確認する必要がある。(HealthDay News 2025年6月17日) https://www.healthday.com/health-news/pain-management/this-common-activity-reduces-risk-of-low-back-pain-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock