実験的なAIツールが、メラノーマ(悪性黒色腫)やその他の皮膚疾患の検出を迅速化するのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この「PanDerm」と呼ばれるツールを医師が使用した場合、皮膚がんの診断精度が11%向上したことが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)情報技術学部AIM for Health研究室のZongyuan Ge氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に6月6日掲載された。 皮膚疾患の診断と治療には、領域横断的な高度な視覚的能力と、複数の画像診断法(モダリティ)からの情報を統合する能力を要する。しかし、現在の深層学習モデルは、ダーモスコピー画像からの皮膚がんの診断など特定のタスクでは優れているものの、臨床現場の複雑でマルチモーダルな情報の処理は得意ではない。こうした弱点を克服するために国際的な研究者チームによって開発されたPanDermは、11の医療機関から集められた4種類の画像モダリティにまたがる200万枚以上の皮膚画像でトレーニングされた、皮膚科領域のAIモデルである。 Ge氏らは、PanDermの性能を、皮膚がんのスクリーニング、リスク層別化、一般的/まれな皮膚疾患の鑑別診断、皮膚病変の抽出(皮膚病変セグメンテーション)など28種類のタスクで評価した。その結果、このモデルは、全てのタスクで最先端レベルの性能を達成し、診断に必要なラベル付きデータがわずか5~10%であっても、既存のモデルと同等以上のパフォーマンスを発揮することが示された。 さらに、PanDermの臨床的有用性を検討するために3件の読影比較試験を実施し、医師の診断精度と比較した。その結果、PanDermは、経時的な画像解析による初期段階のメラノーマの検出では医師の診断精度を10.2%上回り、ダーモスコピー画像を用いた皮膚がんの診断では医師の診断精度を11%向上させた。さらに、臨床写真を用いた128種類の皮膚疾患の鑑別診断においても、皮膚科以外の医師の診断精度を16.5%向上させることが示された。 こうした結果を受けてGe氏は、「PanDermは臨床医と連携して動作するように設計されたツールであり、複雑な画像データを解釈し、より自信を持って情報に基づいた意思決定を行うのに役立つ」とモナシュ大学のニュースリリースで述べている。 論文の共著者であるクイーンズランド大学(オーストラリア)皮膚科研究センター所長のPeter Soyer氏は、「このAIモデルは、皮膚科医へのアクセスが限られている地域で特に重要な役割を果たす可能性がある」と述べている。ただし研究グループは、PanDermが承認され現場で使用されるまでには、まだ評価が必要だとしている。 研究グループは、リアルワールドの、特に多様なタイプの患者を治療するさまざまな医療環境において、PanDermのパフォーマンスを検証する予定だと話している。(HealthDay News 2025年6月18日) https://www.healthday.com/health-news/skin-health/ai-boosts-skin-cancer-diagnoses-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
実験的なAIツールが、メラノーマ(悪性黒色腫)やその他の皮膚疾患の検出を迅速化するのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この「PanDerm」と呼ばれるツールを医師が使用した場合、皮膚がんの診断精度が11%向上したことが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)情報技術学部AIM for Health研究室のZongyuan Ge氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に6月6日掲載された。 皮膚疾患の診断と治療には、領域横断的な高度な視覚的能力と、複数の画像診断法(モダリティ)からの情報を統合する能力を要する。しかし、現在の深層学習モデルは、ダーモスコピー画像からの皮膚がんの診断など特定のタスクでは優れているものの、臨床現場の複雑でマルチモーダルな情報の処理は得意ではない。こうした弱点を克服するために国際的な研究者チームによって開発されたPanDermは、11の医療機関から集められた4種類の画像モダリティにまたがる200万枚以上の皮膚画像でトレーニングされた、皮膚科領域のAIモデルである。 Ge氏らは、PanDermの性能を、皮膚がんのスクリーニング、リスク層別化、一般的/まれな皮膚疾患の鑑別診断、皮膚病変の抽出(皮膚病変セグメンテーション)など28種類のタスクで評価した。その結果、このモデルは、全てのタスクで最先端レベルの性能を達成し、診断に必要なラベル付きデータがわずか5~10%であっても、既存のモデルと同等以上のパフォーマンスを発揮することが示された。 さらに、PanDermの臨床的有用性を検討するために3件の読影比較試験を実施し、医師の診断精度と比較した。その結果、PanDermは、経時的な画像解析による初期段階のメラノーマの検出では医師の診断精度を10.2%上回り、ダーモスコピー画像を用いた皮膚がんの診断では医師の診断精度を11%向上させた。さらに、臨床写真を用いた128種類の皮膚疾患の鑑別診断においても、皮膚科以外の医師の診断精度を16.5%向上させることが示された。 こうした結果を受けてGe氏は、「PanDermは臨床医と連携して動作するように設計されたツールであり、複雑な画像データを解釈し、より自信を持って情報に基づいた意思決定を行うのに役立つ」とモナシュ大学のニュースリリースで述べている。 論文の共著者であるクイーンズランド大学(オーストラリア)皮膚科研究センター所長のPeter Soyer氏は、「このAIモデルは、皮膚科医へのアクセスが限られている地域で特に重要な役割を果たす可能性がある」と述べている。ただし研究グループは、PanDermが承認され現場で使用されるまでには、まだ評価が必要だとしている。 研究グループは、リアルワールドの、特に多様なタイプの患者を治療するさまざまな医療環境において、PanDermのパフォーマンスを検証する予定だと話している。(HealthDay News 2025年6月18日) https://www.healthday.com/health-news/skin-health/ai-boosts-skin-cancer-diagnoses-study-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock