ウェイトベストは、減量に伴う骨密度の低下を予防する手段として期待が寄せられている。これは、ウェイトベストを着用してウォーキングやジョギングを行うことで、体にかかる負荷を維持しながら骨組織に機械的ストレスを与えることができ、減量に伴う骨量の喪失を最小限に抑えられると考えられているからだ。しかし、新たな臨床試験により、この考え方は科学的に裏付けられないことが明らかになった。ウェイトベストを着用しても、減量に伴う骨密度の低下を有意に抑制する効果は確認されなかったのである。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月20日掲載された。 論文の筆頭著者である米ウェイクフォレスト大学医学部内科・老年学・老年医学分野のKristen Beavers氏は、「体重の減少を外部から補ったり、運動で機械的負荷を増やしたりすることが骨密度の維持につながることを期待していたが、われわれの研究結果は、これらの戦略だけでは不十分であることを示唆している」と述べている。 研究グループによると、過体重の高齢者に対しては、心臓や関節の健康を守るために減量が推奨されているが、減量は骨粗鬆症にもつながり得る。そこで研究グループは、肥満の高齢者150人(平均年齢66.4歳、女性74.7%)を対象にランダム化比較試験を実施し、体重の約10%の減少を目的とする減量介入に加えウェイトベストを着用することが骨密度に与える影響を検討した。対象者は、12カ月間にわたり部分的食事代替プログラムと栄養教育から成る減量介入のみを受ける群、減量介入に加えウェイトベストを1日8時間以上着用する群、減量介入に加えレジスタンス運動を行う群に50人ずつ割り付けられた。主要評価項目は股関節の骨密度の12カ月間の変化とし、骨密度は、CTによる海綿骨の単位体積当たりの骨密度(体積骨密度〔vBMD〕)とDXA(二重エネルギーX線吸収測定法)による単位面積当たりの骨密度(表面骨密度〔aBMD〕)の2つを評価した。 12カ月間の減量により、全ての群で体重が9.0~11.2%減少した。それとともに、全ての群で股関節のvBMDが1.2〜1.9%有意に低下していた。vBMDの低下量に、減量介入+ウェイトベスト群と減量介入群の間で有意な差は認められず、また減量介入+ウェイトベスト群と減量介入+レジスタンス運動群の比較でも非劣性であることが示された。さらに、aBMDについても、結果は同様であった。 こうした結果ではあったもののBeavers氏は、「だからと言って、高齢者がウェイトベストの使用をやめるべきだということにはならない」と強調する。ウェイトベストの重みは、体重減少、筋力増強、椅子からの立ち上がりといった日常的な能力の向上に役立つ可能性があるからだ。それと同時に同氏は、「医師らは、高齢者の骨の健康を守るために他の方法を考え出す必要があるだろう」と述べている。 Beavers氏は、「高齢者の骨折は、人生を変えるほどの重大事故になりかねない。この研究結果は、減量中に骨を守るために、従来の運動たけに頼るのではなく、新たなアプローチ、あるいは複数のアプローチを組み合わせる必要があることを改めて強調するものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年6月24日) https://www.healthday.com/health-news/senior-health/weighted-vests-dont-protect-bone-health-in-dieting-seniors-trial-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
ウェイトベストは、減量に伴う骨密度の低下を予防する手段として期待が寄せられている。これは、ウェイトベストを着用してウォーキングやジョギングを行うことで、体にかかる負荷を維持しながら骨組織に機械的ストレスを与えることができ、減量に伴う骨量の喪失を最小限に抑えられると考えられているからだ。しかし、新たな臨床試験により、この考え方は科学的に裏付けられないことが明らかになった。ウェイトベストを着用しても、減量に伴う骨密度の低下を有意に抑制する効果は確認されなかったのである。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月20日掲載された。 論文の筆頭著者である米ウェイクフォレスト大学医学部内科・老年学・老年医学分野のKristen Beavers氏は、「体重の減少を外部から補ったり、運動で機械的負荷を増やしたりすることが骨密度の維持につながることを期待していたが、われわれの研究結果は、これらの戦略だけでは不十分であることを示唆している」と述べている。 研究グループによると、過体重の高齢者に対しては、心臓や関節の健康を守るために減量が推奨されているが、減量は骨粗鬆症にもつながり得る。そこで研究グループは、肥満の高齢者150人(平均年齢66.4歳、女性74.7%)を対象にランダム化比較試験を実施し、体重の約10%の減少を目的とする減量介入に加えウェイトベストを着用することが骨密度に与える影響を検討した。対象者は、12カ月間にわたり部分的食事代替プログラムと栄養教育から成る減量介入のみを受ける群、減量介入に加えウェイトベストを1日8時間以上着用する群、減量介入に加えレジスタンス運動を行う群に50人ずつ割り付けられた。主要評価項目は股関節の骨密度の12カ月間の変化とし、骨密度は、CTによる海綿骨の単位体積当たりの骨密度(体積骨密度〔vBMD〕)とDXA(二重エネルギーX線吸収測定法)による単位面積当たりの骨密度(表面骨密度〔aBMD〕)の2つを評価した。 12カ月間の減量により、全ての群で体重が9.0~11.2%減少した。それとともに、全ての群で股関節のvBMDが1.2〜1.9%有意に低下していた。vBMDの低下量に、減量介入+ウェイトベスト群と減量介入群の間で有意な差は認められず、また減量介入+ウェイトベスト群と減量介入+レジスタンス運動群の比較でも非劣性であることが示された。さらに、aBMDについても、結果は同様であった。 こうした結果ではあったもののBeavers氏は、「だからと言って、高齢者がウェイトベストの使用をやめるべきだということにはならない」と強調する。ウェイトベストの重みは、体重減少、筋力増強、椅子からの立ち上がりといった日常的な能力の向上に役立つ可能性があるからだ。それと同時に同氏は、「医師らは、高齢者の骨の健康を守るために他の方法を考え出す必要があるだろう」と述べている。 Beavers氏は、「高齢者の骨折は、人生を変えるほどの重大事故になりかねない。この研究結果は、減量中に骨を守るために、従来の運動たけに頼るのではなく、新たなアプローチ、あるいは複数のアプローチを組み合わせる必要があることを改めて強調するものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年6月24日) https://www.healthday.com/health-news/senior-health/weighted-vests-dont-protect-bone-health-in-dieting-seniors-trial-says Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock