関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などの自己免疫疾患の罹患者は、一般集団に比べてうつ病、不安症(不安障害)、双極症(双極性障害)などの気分(感情)障害の発症リスクが約2倍高いことが、新たな研究で明らかになった。このようなリスク上昇は、男性よりも女性で顕著であることも示されたという。英エディンバラ大学臨床脳科学センターのArish Mudra Rakshasa-Loots氏らによるこの研究結果は、「BMJ Mental Health」に6月10日掲載された。 Rakshasa-Loots氏らはこの研究で、慢性炎症は抑うつ障害や不安症などの精神疾患の発症と関連していることを踏まえ、慢性炎症状態に置かれている自己免疫疾患患者では、精神的な健康問題を抱える割合が高いのではないかと考えた。この仮説を検証するために同氏らは、英国で新たに実施された大規模な健康調査(Our Future Health)に参加した18歳以上の成人156万3,155人のデータを解析した。この研究への参加にあたり、参加者は自身の身体的および精神的健康の履歴を報告していた。自己免疫疾患として、関節リウマチ、バセドウ病、IBD、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬の6つを対象としたところ、該当者は3万7,808人であった。 その結果、自己免疫疾患を有する人では、一般集団と比較して生涯に気分障害(うつ病、不安症、双極症)の診断歴を有する割合が有意に高いことが明らかになった(28.8%対17.9%、P<0.001)。気分障害の種類別に検討しても、結果は同様であった。また、自己免疫疾患を有する人では、現在抑うつ症状を有している(PHQ-9スコア≧10)割合が18.6%(一般集団10.5%)、現在不安症状を有している(GAD-7スコア≧8)割合が19.9%(同12.9%)であり、いずれも有意に高かった。 さらに、ロジスティック回帰モデルを用いた解析の結果、自己免疫疾患を有する人では一般集団と比べて気分障害を発症する可能性が有意に高く、オッズ比は1.86(95%信頼区間:1.82〜1.90)であった。この結果は、年齢、性別、気分障害の家族歴などの関連因子で調整後も維持された(オッズ比1.48、P<0.001)。 研究グループは、「これらの結果は、慢性炎症への曝露が気分障害のより大きなリスクと関連している可能性があるという仮説を裏付けている」と結論付けている。 さらに本研究では、性別ごとに気分障害の有病率を比較した結果、同じ身体疾患を有する場合でも、女性の方が男性よりも一貫して有病率が高いことも示された。具体的には、免疫疾患を有する人における生涯の気分障害の有病率は女性31.6%、男性20.7%、免疫疾患のない人では女性21.9%、男性12.7%であった。 研究グループは、「理論的には、性ホルモン、染色体因子、抗体の違いにより、これらの性差を部分的に説明できる可能性がある」と述べている。また研究グループは、うつ病の女性は血流中の炎症性化学物質のレベルが高い傾向にあることを指摘し、「これにより、女性では自己免疫疾患の有病率が高くなるとともに、免疫反応がメンタルヘルスに及ぼす影響も強まる可能性がある。こうした複合的な要因により、本研究で観察された女性での気分障害の有病率の高さが説明できる可能性がある」と述べている。 以上の結果を踏まえ研究グループは、「自己免疫疾患と診断された患者、特に女性患者に対する臨床ケアに定期的な精神疾患のスクリーニングを組み込むことで、気分障害の早期発見と、患者に合わせた精神保健介入の提供が可能になるかもしれない」と提言している。また、慢性的な痛み、疲労、睡眠障害、社会的孤立など、自己免疫疾患に関連する他の問題が気分障害のリスクに寄与しているかどうかを特定するために、さらなる研究を行う必要があると付け加えている。(HealthDay News 2025年6月25日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/autoimmune-diseases-increase-risk-of-mood-disorders Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock