新たに開発されたAIツールが、患者が罹患している認知症タイプの特定に役立つ可能性のあることが明らかになった。この「StateViewer」と呼ばれるAIツールにより、認知症を含む9種類の神経変性疾患症例の89%において疾患を特定できたという。米メイヨー・クリニック神経学人工知能プログラムのディレクターであるDavid Jones氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に6月27日掲載された。 研究グループによると、このツールは、患者が認知障害の一因となっている可能性のある病状を抱えている場合でも、医師が認知症を早期かつ正確に特定するのに役立つ可能性があるという。Jones氏は、「私のクリニックを訪れる全ての患者は、脳という複雑な器官によって形作られたそれぞれに異なる物語を抱えている。私を神経学へと導いたのはその複雑さであり、今もそれが、より明確な答えを求める私の原動力となっている」と話す。その上で同氏は、StateViewerは同氏の情熱の表れであり、「神経変性疾患のより早期の理解と適切な治療に加え、将来的にはこれらの疾患の経過を変えるための1歩につながる」と述べている。 Jones氏らが開発したStateViewerは、フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影(FDG-PET)画像を基に神経変性疾患の診断を支援する、AIを活用した臨床診断支援システムである。AIは、9種類の神経変性疾患のうちのいずれかの診断を受けたか、健常(異常なし)と判定されてから2.5年以内に撮影された3,671人(平均年齢68歳、女性49%)のFDG-PET画像で訓練・検証された。 StateViewerは患者のFDG-PET画像を読み込み、大規模データベースに登録されている認知症患者のPET画像と比較することで、特定の認知症タイプやその組み合わせに一致する脳のパターンを特定する。例えば、アルツハイマー病は、典型的には記憶と情報処理の領域に影響を及ぼす一方、レビー小体型認知症は、注意力や運動に関わる領域に影響を及ぼし、前頭側頭型認知症では言語や行動を司る領域に変化が見られるという。判定結果は、重要な脳の活動領域を色分けして可視化したブレインマップとして提示される。 StateViewerの性能を検証した結果、9種類の神経変性疾患を約89%の感度(0.89±0.03)で識別可能であり、ROC曲線下面積(AUC)は0.93±0.02と、優れた分類性能が示された。放射線科医がこのシステムを使ってFDG-PET画像を読影すると、現行の標準的な手順で読影した場合と比べて正しい診断を下す可能性が3.3倍高まった。 論文の筆頭著者でメイヨー・クリニックのデータ科学者であるLeland Barnard氏は、「このツールが医師にリアルタイムで正確な情報と支援を提供できることは、機械学習が臨床医学において果たし得る役割の大きさを明示している」と話している。 研究グループは、このツールの使用を拡大し、さまざまな臨床現場でその性能を検証することを計画している。(HealthDay News 2025年7月1日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/ai-can-help-determine-a-persons-specific-form-of-dementia Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock