孤独感は、うつ病や体調不良のリスクを劇的に高めるようだ。新たな研究で、常に孤独を感じていると答えた人では半数(約50%)がうつ病の診断を受けると予測されたのに対し、孤独を感じたことがない人では10%弱にとどまると推定された。また、常に孤独を感じている人では、精神的・身体的な不調を感じる日も多かったという。米ハワード大学医学部のOluwasegun Akinyemi氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に7月9日掲載された。研究グループは、「孤独感は単なる感情状態ではない。心身の健康に明らかな影響を及ぼす。孤独感への対処は、うつ病を軽減し、全体的なウェルビーイングを改善するために、公衆衛生上の重要な優先事項となる可能性がある」と述べている。 この研究でAkinyemi氏らは、2016年から2023年の間に米国で実施された行動リスク要因サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System;BRFSS)のデータを分析して、孤独感とうつ病の診断、精神的または身体的に不調な日との関連を検討した。孤独感は「どのくらいの頻度で孤独を感じますか?」という質問で測定され、「常に」「たいてい」「時々」「まれに」「全くない」の5つのレベルに分類された。社会人口学的特徴を調整し、BRFSSのサンプリングウェイトおよび州・年ごとの固定効果を考慮した上で、逆確率重み付け(IPW)を用いて孤独感が及ぼす平均的な影響を推定した。対象者は総計4万7,318人で、白人が73.3%、女性が62.1%、18〜64歳が72.1%を占めていた。 分析の結果、孤独を感じる頻度が高いほどうつ病発症のリスクも高まることが示された。具体的には、「全くない」群での予測確率は9.7%であったのに対し、「まれに」の群では16.3%、「時々」の群では30.6%、「たいてい」の群では47.7%、「常に」の群では50.2%であった。また、孤独感の頻度が高いほど、精神的・身体的に不調を感じる日数が増加する傾向が認められた。例えば、精神的な不調を感じる日数は、「常に」の群で月平均19.95日であるのに対し「全くない」群では9.36日、身体的な不調を感じる日数は、それぞれ15.83日と11.22日であった。 さらに、一部のグループは他のグループよりも孤独の影響をより強く受けることも判明した。例えば、孤独を感じる頻度を問わず、女性では男性よりも、また白人では黒人よりもうつ病になる可能性が高く、精神的に不調な日も多かった。 Akinyemi氏は、「若い成人、女性、失業者、教育歴があまりない人は、孤独感を訴える傾向が強かった。孤独感は、高齢者だけではなく、あらゆる年齢層や背景を持つ人々にも影響を及ぼす」と述べている。 Akinyemi氏らは、孤独感はストレスのかかった状況下で生じる防御システムである闘争・逃走反応を刺激するか、セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質の流れに影響を及ぼすことで、健康に影響を与えるのではないかと推測している。同氏らは、「これらの神経化学的変化は、社会とのつながりが失われているという心理的負担が重なって、うつ病の症状のリスクを増大させる可能性が高い」と記している。さらに同氏は、「孤独を認めることは、弱さや社会的失敗と捉えられがちであり、それが支援を求めることをためらわせてしまう。この沈黙が、健康への悪影響や長期的な害を引き起こす可能性がある」と述べている。 研究グループは、今後の研究では孤独感を軽減することで心身の健康が改善されるのかどうかを検討すべきだと話している。(HealthDay News 2025年7月10日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/loneliness-preys-on-mental-physical-health Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock