発作、神経痛、むずむず脚症候群の治療に使用される薬剤のガバペンチンが、認知症の発症リスク増加と関連している可能性があるとする研究結果が発表された。ガバペンチンを6回以上処方された場合、認知症リスクが29%、軽度認知障害(MCI)リスクが85%増加する可能性が示されたという。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のNafis Eghrari氏らによるこの研究の詳細は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に7月10日掲載された。 研究グループによると、ガバペンチンはオピオイドほど中毒性がないため、慢性疼痛の治療薬としての人気が上昇の一途をたどっている。しかしその一方で、ガバペンチンには神経細胞間のコミュニケーションを抑制する作用があることから、ガバペンチンの使用が認知機能の低下を招く可能性があることに対する懸念も高まりつつあるという。 今回の研究では、大規模医療データベースTriNetXの2004年から2024年までの匿名化した腰痛患者のデータを用いて、ガバペンチンの処方歴と認知症およびMCIリスクとの関連を検討した。年齢や性別などの社会人口学的属性、併存疾患、疼痛関連薬剤などで傾向スコアマッチングを行った結果、解析対象は2万6,416人となった。ガバペンチンは、6回以上の処方歴がある場合を「ガバペンチンの処方歴あり」と見なした。 解析の結果、ガバペンチン処方群では非処方群と比べて、認知症リスクが1.29倍(リスク比1.29、95%信頼区間1.18〜1.40)、MCIリスクが1.85倍(同1.85、1.63〜2.10)であることが示された。対象者を65歳以上の高齢者と18〜64歳の非高齢者に分けて解析すると、高齢者のガバペンチン処方群では非処方群と比べて、認知症リスクが1.28倍、MCIリスクが1.53倍であり、非高齢者でのリスクはそれぞれ2.10倍、2.50倍とより顕著だった。さらに、これらのリスクはガバペンチンの処方頻度の増加に伴い上昇し、処方頻度が12回以上の患者では3〜11回の患者に比べて、認知症リスクが1.4倍、MCIリスクが1.65倍であった。 ただし、本研究は観察研究であるため、ガバペンチンと脳機能低下との直接的な因果関係を証明することはできないと研究グループは指摘している。 研究グループは、「この研究結果は、ガバペンチンを処方された成人患者を綿密に監視し、認知機能低下の可能性を評価する必要があることを裏付けている」と述べている。また研究グループは、「今回の研究が、ガバペンチンと認知症発症との因果関係や、この関係の根底にあるメカニズムの解明を目指すさらなる研究につながることを期待している」と述べている。(HealthDay News 2025年7月11日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/popular-chronic-pain-med-linked-to-dementia-risk Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock