ホルモン異常が原因で高血圧が生じる一般的な疾患について、多くの患者が医師に見逃されている可能性があるとして、専門家らが警鐘を鳴らしている。米国内分泌学会(ENDO)の専門家のグループがこのほど発表した臨床ガイドラインによると、循環器専門医の診察を受ける高血圧患者の最大30%、プライマリケア医の診察を受ける高血圧患者の最大14%が、「原発性アルドステロン症」と呼ばれる疾患を抱えている可能性があるにもかかわらず、その多くがこの疾患を見つけるための血液検査を受ける機会を一度も提供されていないという。このガイドラインは、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)」に7月14日掲載された。 原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される疾患だ。アルドステロンは、血中のナトリウムとカリウムのバランスを調整する働きを担っている。アルドステロンの値が高過ぎると体内のカリウムが失われてナトリウムが保持されやすくなり、それによって血圧が上昇する。 ガイドラインによると、原発性アルドステロン症の検査の機会が全く提供されない高血圧患者が多くを占める一方、高血圧の診断から何年も経ってから初めて検査を受けたときには、すでにこの疾患による重い合併症を発症している患者もいるという。 本ガイドラインの筆頭著者で、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の内分泌科医であるGail Adler氏は、「原発性アルドステロン症患者は、本態性高血圧の患者と比べて心血管疾患のリスクが高くなる。低価格の血液検査を用いれば、より多くの原発性アルドステロン症の患者を見つけ出し、適切な治療につなげることができる」とニュースリリースの中で述べている。 ガイドラインの情報によると、過去の研究では、原発性アルドステロン症患者は脳卒中を発症するリスクが約2.6倍(オッズ比2.58)、心不全に至るリスクが約2倍(同2.05)、不整脈を発症するリスクが約3.5倍(同3.52)、冠動脈疾患を発症するリスクが約1.8倍(同1.77)上昇することが示されている。 今回新たに発表されたガイドラインでは、高血圧と診断された全ての患者がアルドステロン値をチェックするための検査を受けること、また、原発性アルドステロン症と診断された場合には、この疾患に特化した治療を受けることが推奨されている。 米ジョンズ・ホプキンス・メディスンによると、原発性アルドステロン症の治療にはスピロノラクトンやエプレレノンなどの処方薬が使用できる。これらの薬はいずれも血圧を下げ、カリウムの値を上げる効果がある。また、ガイドラインの著者らによると、アルドステロンを過剰に産生している副腎が片側のみの場合、その副腎を摘出する手術を医師が勧めることもある。このほか、ジョンズ・ホプキンス・メディスンによれば、患者には、バランスの取れた減塩食を心がけ、減量に努めるよう指導も行われるという。(HealthDay News 2025年7月16日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/doctors-overlooking-common-cause-of-high-blood-pressure-new-guidelines-say Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock