早過ぎる子どものスマホデビューは心の発達に有害

早過ぎる子どものスマホデビューは心の発達に有害
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子どもの心身の健康を大切に思うなら、子どもがティーンエイジャーに成長するまではスマートフォン(以下、スマホ)は与えないほうが良いかもしれない。新たな研究で、18~24歳の若者のうち13歳未満でスマホを与えられた人では、自殺念慮、攻撃性、現実からの乖離感、感情調節困難、自己肯定感の低下などのリスクが高いことが示された。米Sapien LabsのTara Thiagarajan氏らによる詳細は、「Journal of Human Development and Capabilities」に7月20日掲載された。

Thiagarajan氏は、「われわれのデータは、早期からのスマホの所持と、それに伴うソーシャルメディアの利用が、成人期早期の心の健康とウェルビーイングに大きく影響することを示している」とジャーナルの発行元であるTaylor & Francis社のニュースリリースの中で話している。その上で、「当初は研究結果が強力であることに驚いた。しかし、よく考えてみれば、発達段階にある若い心は、その脆弱性や人生経験の少なさからオンライン環境からの影響を受けやすいというのは当然のことかもしれない」と述べている。

Thiagarajan氏らは今回、現代社会がメンタルヘルスに与える影響を評価することを目的としたグローバル・マインド・プロジェクト(Global Mind Project)の一環として、世界の10万人以上の若年成人のデータを分析した。参加者は、社会的、感情的、認知的、身体的なウェルビーイングの状態を示す「心の健康指数(Mind Health Quotient ;MHQ)」を評価するための質問票に回答していた。本研究では、1997~2012年に生まれ、幼少期からスマホとソーシャルメディアのある環境で育った「Z世代」に着目して解析を行った。

その結果、13歳になる前からスマホを所持していた若年成人は、13歳以降にスマホを持つようになった人と比べてMHQ(Mental Health Quotient)のスコアが低く、自殺念慮に加えて、攻撃性や現実からの乖離感、幻覚などの深刻な症状が多く報告されていた。こうした傾向は、スマホを所持し始めた年齢が低いほど顕著であった。例えば、5、6歳でスマホを持つようになった女性の約半数(48%)が自殺念慮を報告していたのに対し、13歳時からスマホを持ち始めた女性ではその割合は28%にとどまっていた。さらに、低年齢時からスマホを持っていた女性は、セルフイメージや自己肯定感が低く、自信がなく、感情面のレジリエンス(立ち直る力)も弱い傾向が認められた。一方、低年齢時からスマホを持っていた男性では、精神的な安定性や自己肯定感、共感力が低い傾向が見られた。

これらの結果の原因を探ったところ、低年齢からのスマホの所持と早期成人期のメンタルヘルス状態の悪化との関連の約40%は早期のソーシャルメディア利用により説明できることが示された。また、ネットいじめ(10%)、睡眠の乱れ(12%)、不良な家族関係(13%)などもメンタルヘルス悪化の要因として挙げられた。

Thiagarajan氏は、「これらの結果とともに、世界各国で初めてスマホを手にする年齢が13歳未満となっている現状を踏まえ、われわれは政策立案者に飲酒や喫煙と同様の予防的アプローチを採用することを強く要求する。具体的には、13歳未満でのスマホ利用の制限、デジタルリテラシー教育の義務化、企業の説明責任の徹底を求める」と提言している。

なお、Thiagarajan氏によると、フランス、オランダ、イタリア、ニュージーランドなどでは、すでに学校でのスマホ使用を禁止または制限しているという。また米国でも、州によっては学校でのスマホの使用を制限または禁止する法律が可決されている。(HealthDay News 2025年7月22日)

https://www.healthday.com/health-news/child-health/early-smartphone-access-harms-developing-minds-study-warns

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