入院や救急外来(ED)受診は、介護施設入居者、特に重度の障害を抱えているか終末期にある人にとっては大きな負担となり費用もかさむ。しかし、介護施設入居者が病院へ搬送されることは少なくない。このほど新たな研究で、このような脆弱な状態にある介護施設入居者によるED受診の70〜80%、また入院の約3分の1は回避可能であった可能性のあることが示された。米フロリダ・アトランティック大学シュミット医科大学老年医学教授のJoseph Ouslander氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Directors Association(JAMDA)」7月7日号に掲載された。 Ouslander氏らは、終末期の介護施設入居者が入院に至った原因として多かったのは、肺炎、尿路感染症、敗血症であったが、介護施設での医療と管理の質がもっと良ければ、それらの入院は必要なかったはずだと主張している。同氏は、「これらの健康問題は、施設でのケアを改善するために実行可能な手段があることを明示している。既存のガイドライン、ケアパス、予防戦略を用いれば、これらの問題は適切に管理できる。適切なツールと人員を整えることでED受診や入院の多くは回避可能であり、入居者の苦痛と不必要な医療費の両方を減らすことができる」と述べている。 今回の研究は、264カ所の介護施設において12カ月間の質改善プログラムを実施することで潜在的に回避可能な入院(possibly avoidable hospitalization;PAH)やED受診を減らせるかを検討した研究データを二次解析したもの。対象は、重度の障害を持つ6,011人(重度障害群)と終末期状態にある5,810人(終末期群)の介護施設入居者であった。 解析の結果、重度障害群の34%はあらゆる原因による入院を1回以上経験しており、その3分の1はPAHの基準を満たすことが明らかになった。また、18%はEDを1回以上受診しており、そのうちの70%は潜在的に回避可能性だったと判断された。一方、終末期群の14%があらゆる原因による入院を1回以上経験しており、そのうちの31%はPAHの基準を満たしていた。また、8%はEDを1回以上受診しており、そのうちの80%は潜在的に回避可能だったと判断された。 PAHと関連した診断として多かったのは、肺炎やその他の感染症、息切れや呼吸不全、精神状態の変化であった。一方、潜在的に回避可能なED受診で多かった診断は、重度障害群では経管栄養チューブに関する問題、終末期群では転倒による外傷であった。 Ouslander氏らは、より明確な治療プロトコルとタイムリーな症状管理によって、こうした入院の多くは防ぐことができる可能性があると述べている。同氏らはまた、家族や入居者と医療に関する希望を伝えることも大きな違いを生む可能性があり、ケアに関する希望を文書化しておくことで危機的な状況下での意思決定を回避し、不必要な搬送を減らすのに役立つとしている。 Ouslander氏は、「PAHやED受診を減らすためには、介護施設スタッフの能力を強化し、熟練した医療責任者や臨床医の積極的な関与を確保しなければならない。これは、個人の努力だけで解決できるものではなく、介護施設、介護や医療の提供団体、そして政策立案者からの支援が欠かせない。実際的な国家レベルの人員配置基準、複雑なケアに対応できるより充実した施設のリソース、さらに最も脆弱な入居者に対する質の高い、患者中心のケアを支えるための報酬制度の構築など、大胆な改革が必要だ」と述べている。(HealthDay News 2025年7月28日) https://www.healthday.com/health-news/senior-health/terminally-ill-nursing-home-patients-face-needless-er-visits-hospital-stays Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock