将来的には、自宅で行う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の簡易検査のように、メラノーマ(悪性黒色腫)の検査ができるようになるかもしれない。米ミシガン大学の研究グループが、マイクロニードルが埋め込まれた「ExoPatch」と呼ばれるシリコンパッチにより、マウスのメラノーマと健康な皮膚を区別することができたとする研究結果を報告した。同大学の化学工学教授のSunitha Nagrath氏は、「成功すれば、このパッチが皮膚がん検出に革命を起こす可能性がある」と述べている。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Biosensors and Bioelectronics」10月1日号に掲載された。 ExoPatchに使われているマイクロニードルは長さわずか0.6mm、針先の幅は100nm(0.0001mm)未満と非常に細い。針は、アネキシンV(Annexin V)というタンパク質を含む特殊なゲルでコーティングされていて、それがエクソソームという物質を皮膚から吸着する。エクソソームは細胞から放出される小さな膜状の小胞で、タンパク質やDNA、RNAなどを含んでいる。エクソソームは細胞間コミュニケーションに重要な役割を担っており、がんをはじめとするさまざまな疾患の発症や進行に関与していると考えられている。がん細胞が放出するエクソソームは、周囲の組織や遠隔部位においてがんの転移や進行を促進する環境を形成することが報告されており、がんの早期発見や診断マーカーとしての応用が期待されている。 パッチを皮膚からはがした後に酸性の液体に浸すと、ゲルが溶けて針に付着していたエクソソームが溶液中に放出される。その後、この溶液に検査用の試験紙を浸すと、結果が表示されるという仕組みだ。もし検体にメラノーマ由来のエクソソームが含まれていれば、試験紙には2本線(陽性)、含まれていなければ1本線(陰性)が現れる。 研究では、マウスの皮膚組織サンプルを用いてこの試験の精度が検証された。サンプルの半分は健康なマウスから、もう半分はヒトのメラノーマ由来の腫瘍片を注入したマウスから採取されたものだった。Nagrath氏らがマウスの皮膚にパッチを15分間貼り付けてからはがし、それを走査電子顕微鏡で観察したところ、想定されていたサイズである30〜150nmのエクソソームがマイクロニードルにしっかりと付着していることが確認された。次に、このゲルを溶液に溶かして試験紙で検査をした。その結果、両者を明確に識別することに成功し、メラノーマ由来の皮膚サンプルでは、正常な皮膚と比べて試験紙の線が3.5倍濃く現れていることが確認された。 Nagrath氏は、「これは、皮下液から疾患特異的なエクソソームを捕捉するように設計された初のパッチであり、その潜在的な応用範囲は広範だ」と述べる。同氏はまた、「色白でほくろが多い人はメラノーマのリスクが高いため、通常は6カ月ごとに皮膚科で診察を受け、疑わしいほくろがあれば生検で悪性か良性かを調べてもらう必要がある。しかし、この検査があれば自宅ですぐに結果が分かり、陽性の結果のときのみ皮膚科を受診して追加の検査を受ければ良くなる」と話している。 今後は、ヒトを対象にした予備的研究を経て、このパッチに関する臨床試験が行われる予定である。研究グループは、このパッチの特許保護を申請済みであるという。(HealthDay News 2025年8月1日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/coming-soon-an-at-home-patch-to-spot-skin-cancers Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: University of Michigan